百合カプ成立のためヒロインに噓告します。
「来てくれたんですね」
「あの……お話がある、とは何でしょう?」
一週間後、マリーさんの観察に時間を費やした俺は、ついに彼女を手紙で呼び出すことにした。
場所は、人の少ない図書館の裏だ。
手紙を手にしたマリーさんは、俺を戸惑いの表情で見つめていた。
「マリー・ステラさん。僕は、貴方が好きです」
十二本のマリーゴールドの花束を差し出す。告白と言えば花。花といえば告白である(偏見)。
「ごめんなさい。私――」
「知っています。貴方が、僕を好きではないということは」
俺は美少年フェイスを活かし、寂しさと諦めの入り混じった表情をして彼女から視線を逸らした。
「貴方には本当に好きな人は別にいる――そう、ですよね?」
今にも泣いてしまいそうな表情で俺は体を震わせる。
失恋は分かっていて、それでも溢れる思いを伝えることにした純粋な美少年――今の俺は、彼女にはそう見えているに違いない。
「……え?」
マリーさんは、明らかに動揺していた。
それはそうだろう。告白してきた相手に、『本命知ってます』なんて言われたら、俺だったら普通に怖い。だがここは、イケメン無罪で押し通させて貰う!
「見ていたからわかります。貴方が誰よりも、敬愛しているのは誰なのか」
感動を演出――一瞬たりとも『この人私のストーカー?』と思わせてはならない。
「それは――公爵令嬢、イザベラ・ヴァーミリオン様ですね?」
「な、何をおっしゃってるんですか? わ、私がイザベラ様をお慕いしているなんて! そ……そんな、恐れ多いっ!」
混乱したマリーさんは、顔を真っ赤にして慌てていた。
「隠しても無駄です!」
今は畳み掛けるべき時だ!
俺は一週間かけて調べ上げた、マリーさんの行動とイザベラ様の行動分析を羅列した。
「僕は知っています。貴方が、彼女の真似をして紅茶に砂糖を三つ入れるようになったことも。彼女のハンカチに憧れて、同じ刺繍をさしたことも。彼女とすれ違うために移動教室の時に遠回りをしていることも」
「えっ!? あっ! な、なんでそれを!? やめてください。それ以上言わないで……っ!!!」
恥じらうマリーさんは今日も可愛かった。
好きな人のことを思ってした行動を、他人に指摘されるとそうなるよね。
いやこれ、やっぱり普通にストーカーで訴えられたら負ける気がするな?
「僕は――全部全部、知っているんです。あの日貴方に救われ、いつだって、貴方だけを見てきたから」
その全てが、俺の百合カプ成立作戦の為だとは、彼女は思いもしていないだろう!
「マリーさん」
俺は彼女に気付かれないよう、真剣な目をして彼女に『告白(嘘)』した。
「あの日で会ってから、僕はずっと、貴方が好きです。だから僕は、貴方には幸せになって欲しい」
「え……?」
「性別なんて関係ありません。僕は貴方の恋を叶えるために、貴方の力になりたいのです」
お父さんお母さん、ごめんなさい。
俺はこれから、百合キューピッド作戦を始動します!




