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俺が恋の橋渡ししたいのは、イザベラ様だけなんです!

 王子様のお招きを受け、俺はお迎えつきで王宮に足を運ぶことになった。


「それで、どうしてお前がついてきているのかな? ノクス」

「殿下に失礼があってはいけませんので」


 王子様から招待されたことを告げると、ノクス先輩は同行すると言って譲らなかった。


「なんだい? それは。彼の保護者でもあるまいし。まあいい。行こう」



「わあ……っ!」


 王子様が俺たちを案内したのは、王宮内の植物園だった。


 植物園には世界各国の植物が植わっていた。寒冷地にのみ咲くという花から、南国のフルーツまで。ノクス先輩の本で、知識としてしか知らなかったものが全てここにはある。


「どうかな。気に入った? 君の兄は、ここが好きだったんだけれど」


 視界いっぱいに緑が広がる。心なしか、空気が美味しい気がする。


「はい。僕も大好きです!」


 俺は、思わず元気よく頷いた。


「おい」

「いひゃい」


 すると、何故か俺と王子様の後ろを歩いていたノクス先輩に頬を抓られた。


「なにするんですかっ!」

「顔をそう緩めるな。殿下の御前だ」

「それを言うなら、殿下の前で頬をつねらないでくださいっ!」


 俺は声を荒げてノクス先輩の手を払った。王子様は、そんな俺たち二人を見てくすくす笑った。


「二人は仲がいいんだね」

「殿下。これは手のかかる弟のようなものです」

「僕には口下手でシスコンな兄はいません」


 あと、人のこと「これ」って呼ぶな! 

 俺の兄は人たらしらしいので多分口が上手いんだ! 俺の兄は口下手じゃないから、たぶん貴方みたいに先に手は出さない!


「ここは僕の庭のような場所でね。お気に入りの場所なんだ」

「いろんな植物があるんですね」

「そう。いろんな国から取り寄せているんだ。ここにいるだけで、旅でもしているみたいだろう?」


 王子様はそう言うと、俺に微笑んでくれた。

 『一〇〇本の薔薇を君に』のエドワード・クラウンは、本来マリーさんをイザベラ様や俺から守る正義のヒーローである。

 金髪に青の瞳。まさに、正統派の王子様という風貌は、普通の少女なら誰もが恋に落ちるに違いない。

 中を歩いていた俺たちは、植物ばかりの空間に、不似合いな鳥籠を見つけて王子様に尋ねた。

 ステンドグラスのような美しいテーブルの上には、金色に輝く大きな籠が置かれていた。


「鳥を飼ってらっしゃるんですか?」

「いや、今は居ないよ」


 王子様は、なぜか苦笑いした。


「昔、母上からいただいた小鳥を飼っていたんだけれど、逃げてしまったんだ」


 王子様はそう言うと、そっと籠を優しく撫でた。

 もしかしたら、大事な鳥だったんだろうか?

 それを尋ねるより先に、王子様は俺に話を切り出した。

 

「僕の話はこれくらいにしよう。今日、君をここに呼んだ理由は、ちゃんとわかっているよね? マリー・ステラという女性について、君の意見を聞きたい」


 俺は、ゴクリ唾を飲み込んだ。


「ま、まりーさんは……」


 イザベラ様の最愛の女性である。だが、それを伝えることはできない。


「マリーさんは、誰にでも分け隔てなく接する方です。僕は、ノクス先輩に勉強を教わる前は、勉強のことで悩んでいました。影で顔だけだと罵られ、悩んでいた時に、マリーさんはその噂を知ってもなお、僕に変わらずに接してくれました」


 俺は、精一杯アピールした。

 マリーさんが優しくても、貴方が特別じゃないんですからね! ……と。

 だが無駄な足掻きだったのか、王子様としては俺の情報に頷いていた。


「分け隔てなく他者に接することのできる、王妃にぴったりな女性ということだね」


 違う!

 俺が真意が伝わず悶えていると、ノクス先輩が小声で俺に言った。


「お前は何言ってるんだ」

「だって……! 僕が! 僕が『好き』な相手のことを悪く言えるわけないじゃないですか!」


 これでもだいぶ抑えている。本当なら大好きなマリーさんについて布教したいくらいだ。

 俺はノクス先輩にバトンをパスした。

 頼んだノクス先輩。シスコン兄として、マリーさんの評判を落とすのを頑張ってくれ!


「彼女は、一般クラスの生徒です。魔力の高さを評価されていたのに加え、最近は……私の妹と、とても仲良くしています。妹が、今最も――いえ、唯一信を置いている女性と言ってもよいでしょう」


「なるほど。つまり、公爵令嬢に認められるくらい、彼女は素敵な女性ということだね」

「はい?」


 ノクス先輩はにっこり王子様に微笑まれ、鳩に豆鉄砲でも食らったような顔をした。

 はい墓穴! 今、この人墓穴を掘りました!


「ますます興味がわいたよ。今度、二人であってみたいな」


 ごめんなさい。イザベラ様、マリーさん。

 俺もこの人も、二人のことが大切すぎて何の役に立ちません!

 ポンコツ×2!!!!!




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