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兄妹喧嘩に巻き込まれました(半分は俺のせいかもしれない)

「すいません。今度、家にまた伺ってもいいですか?」


 翌日、俺は朝学校に着くと、すぐにヴァーミリオン先輩の教室に足を運んで尋ねた。


「何かあったのか?」

「僕と先輩の関係について、イザベラ様に説明しなくてはいけなくなりました。どうやら、僕と先輩が仲良くしているのがお気に召さなかったらしくて」

「どうしてそうなった?」

「貴方が教室に来たときに、たぶん僕に向かって笑いかけていたのをみたんだと思います」


 そう。多分それでバレてしまった。


「笑っていた? 私が?」

「無自覚だったんですか?」


 思いもよらない言葉が返ってきて、俺は頭痛がした。


「とりあえず、今はいいです。もっと拗れる前に、ちゃんと説明しましょう」



「何故貴方がここにいるの?」

「イザベラ様。落ち着いてください」


 俺がイザベラ様に弁明を行うために屋敷を訪れた日、屋敷にはマリーさんも足を運んでいた。


 うーん流石マリーさん。イザベラ様のメンタル安定剤。

 彼女が緩衝材になってくれたおかげで空気が完全に凍ることは避けられた。


「お兄様。この子は、私の大切な友人です」

「はじめまして。マリー・ステラと申します」

「……ノクス・ヴァーミリオンだ」


 表には出さずとも溺愛している妹の恋人を前に、彼は完全に固まっていた。


「ちょっと! マリーさんに対して態度があからさますぎるでしょう。もっとフランクにいかないと」


「まさか、私がいるとわかっているのに連れてくると思わないだろう?」


 お兄様に一〇〇〇のダメージ!

 HP残り僅かのような表情を見て、俺は内心舌打ちした。


「お兄様。一体何を話されているのですか? 彼とはどういう関係で?」


 イザベラ様の追撃は続く。仕方ないので俺が答えた。


「僕たちは普通……そう、普通の友達なんです!」

「『友達』……?」


 イザベラ様の表情が険しくなる。


「お兄様の親しいご友人に、これまで年下はいなかった筈では?」


 イザベラ様同様、彼は遠くから憧れられるタイプだ。

 寡黙さが売りなのだ。本当の彼は口下手なだけの、超がつくほどの不器用人間かつ重度のシスコンなのだが。

 

「お兄様。彼とは何が理由で知り合いに?」

「そ、それは――」


 妹とその同性の恋人の関係に反対しようとしていた末、俺と出会ったなんて彼に言えるわけがない。


「図書館でシルフィードが一人で勉強をしていたから、私が教えると言ったんだ」

「勉強……?」

「貴方、お兄様からご指導いただいていたの?」

「はい……」

 俺は視線を逸らしつつ答えた。


「お兄様、どうして彼をご指導するおつもりに?」


 誘導尋問が始まりました!

 それはそうだ。妹に無関心だった兄がいきなり妹の友人と仲良くなるなんて、普通に考えてどう考えても怪しい。

 しかも俺が百合男子であることは、イザベラ様にはバレている。


「図書館で偶然会って、見たことがないほどひどい点数だったから見過ごせなかったんだ」

「なるほど。成績の悪さでお兄様の気を引くなんて、私にはとても出来ないことです」


 イザベラ様の言葉が刺々しくて怖い。

 ヴァーミリオン先輩。もういいから、貴方はその口を閉じてください。事実だけども! 

 焦ってるのかしらないが、さっきから余計なことしか言っていない。



 イザベラ様からの俺達に対する尋問は続いた。

 そして彼は、マリーさんに対して接し方が分からないのか、無視するような素振りをした。

 これでは、ひどいしゅうとの嫁イビリである。


「あのですね、マリーさんに対して態度があからさますぎます。避けすぎです。勘違いされますよ? 大体、なんで困ったらすぐ僕のところに来るんですか? せっかく久々に面と向かって話せているんでしょう? イザベラ様のことが好きなら、そうアピールしないと伝わりませんよ」


「そんなことをしたら、私がこれまであの子を見てきたことが伝わってしまうかもしれない。今まで話してこなかったから、私が知るはずのないことを口走る自信しかないんだ」

「なにメソメソ言ってるんですか面倒くさい! もう、全部バレてしまえばいいのに」


 妹をストーカーしてしまうくらい大好きなのは事実なんだから!

 いっそ、キモがられて玉砕してしまえ。


「お二人とも、よかったらお菓子はいかがですか?」


 共犯者でありながら仲違い一歩直前の俺たちを前に、マリーさんは今日も優しかった。


「おいしそう。……おいしい!」


 マリーさんからお菓子を貰い、俺はつい、いつもの癖で彼にお菓子を手渡した。


「これ、貴方が好きな味ですよ」

「そう。貴方はお兄様の好みまで把握しているのね?」


 し ま っ た。

 俺たちのやり取りを見ていたイザベラ様に指摘され、俺はぐいっと彼の服を引っ張った。

 いいから! しゃがめしゃがめ!!


「一旦作戦会議をしましょう。貴方の部屋に僕を連れて行ってください」

「わかった」


 俺の命令に、彼は素直に頷いた。


「イザベラ。私は一度自室に戻る。彼も連れて行く」

「お兄様のお部屋に貴方が?」


 イザベラ様は表情を曇らせて俺を見た。


「私も行きます」


 なんで? ねえなんでそうなるんですか?




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