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イザベラ様に睨まれています

「シルフィード」


 翌日、ヴァーミリオン先輩は、何故か俺とイザベラ様の教室にやってきた。


「悪いが、今日は予定があって少し遅れそうだ」


 放課後の予定を伝えるために来てくれたらしい。彼なりの気遣いだったんだろうが、俺は彼の服を掴んで自分の方に引き寄せた。

 小声で話せるよう、身長が高いアンタがしゃがめ!


「なんでいきなり教室に来たんですか。イザベラ様もいるんですよ? わざわざ言いに来なくても大丈夫なんですけど」

「お前が私を待っていたらと思ってな」

「別に、来ないならそれはそれで……」


 だって、もともと俺は一人だったんだから。


「この間、私を待って眠っていたのはどこの誰だったか?」

「あ……あれは、貴方が作った問題を解いて疲れて寝ていただけで! 待っていたわけじゃありませんっ!」


 指摘されると困ってしまう。


「そうか?」


 怒りながら否定する俺を見て、彼は何故か楽しそうにくすりと笑った。



 無事テストを終えた俺は、帰ってきた成績表と解答用紙を彼に渡した。


 成績は、これまで最下位だったのになんと上の下! 

 実技においては、五指に入る第四位。反応スピード・破壊時間は俺が一位だったらしいが、一属性による破壊のため、五属性を使い分けた人間のほうが高く評価されたらしい。


「頑張ったな」


 俺を褒めるヴァーミリオン先輩の表情が、何故かマリーさんを褒めるイザベラ様とだぶる。

 変な感じだ。

 俺はまだ、『兄上』と会ったことがないけれど、兄とはこういうものなんだろうか。

 振り返って立ち止まり、一生懸命追いかけるこちらを待っていたような、そんな目で見つめられると、少しだけ照れくさい。


「この調子なら、次の試験ではもっと上を目指せるだろう。……テストも終わったことだし、自習は少し間を挟むとしよう。生徒会の仕事で、私も少し忙しくなる予定だからな」

「……わかりました」


 最近はいつも放課後必ず会っていたから、突然会えなくなると少し寂しく感じ――なんてない!

 寂しいなんて、一ミリも思ってないんだからな!!


「じゃあ、私は先に帰る」

「あ。僕も帰ります」


 彼を追って俺が立ち上がったら、彼は俺を見て不思議そうな顔をした。


「別々に出るんじゃなかったのか? 妹に、私と共にいるのを見られるのは嫌なんだろう?」


 そういえばそうだった。


「そうです……けど」


 自分が言ったことの筈なのに、妙に心が落ち着かない。


「じゃあ、また」

「……さようなら」


 仕方ない。認めよう。

 今の俺は、ちょっとだけ残念だと思ってしまった。


 ヴァーミリオン先輩が図書館を出て、暫くしてから俺も図書館を出た。

 だが俺は、すぐによく知った声が聞こえて足を止めた。


「お兄様を変えたのは貴方だったの?」

「イザベラ様?」


 どうして、貴方がここに?


「……ずるい」


 イザベラとは仲良くなったつもりだったのに、今の彼女は俺を睨んでいた。


「お兄様は……お兄様は、私にはあんなふうには微笑んでくださらないのに。どうしてお兄様は、貴方に……!」


 イザベラ様はそう言うと、呆然とする俺を置いてその場を去ってしまった。


「まずい」


 一人残された俺は頭を押さえた。


「話がこじれた」


 イザベラ様、メンタル不安定再び。


 

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