イザベラ様に睨まれています
「シルフィード」
翌日、ヴァーミリオン先輩は、何故か俺とイザベラ様の教室にやってきた。
「悪いが、今日は予定があって少し遅れそうだ」
放課後の予定を伝えるために来てくれたらしい。彼なりの気遣いだったんだろうが、俺は彼の服を掴んで自分の方に引き寄せた。
小声で話せるよう、身長が高いアンタがしゃがめ!
「なんでいきなり教室に来たんですか。イザベラ様もいるんですよ? わざわざ言いに来なくても大丈夫なんですけど」
「お前が私を待っていたらと思ってな」
「別に、来ないならそれはそれで……」
だって、もともと俺は一人だったんだから。
「この間、私を待って眠っていたのはどこの誰だったか?」
「あ……あれは、貴方が作った問題を解いて疲れて寝ていただけで! 待っていたわけじゃありませんっ!」
指摘されると困ってしまう。
「そうか?」
怒りながら否定する俺を見て、彼は何故か楽しそうにくすりと笑った。
■
無事テストを終えた俺は、帰ってきた成績表と解答用紙を彼に渡した。
成績は、これまで最下位だったのになんと上の下!
実技においては、五指に入る第四位。反応スピード・破壊時間は俺が一位だったらしいが、一属性による破壊のため、五属性を使い分けた人間のほうが高く評価されたらしい。
「頑張ったな」
俺を褒めるヴァーミリオン先輩の表情が、何故かマリーさんを褒めるイザベラ様とだぶる。
変な感じだ。
俺はまだ、『兄上』と会ったことがないけれど、兄とはこういうものなんだろうか。
振り返って立ち止まり、一生懸命追いかけるこちらを待っていたような、そんな目で見つめられると、少しだけ照れくさい。
「この調子なら、次の試験ではもっと上を目指せるだろう。……テストも終わったことだし、自習は少し間を挟むとしよう。生徒会の仕事で、私も少し忙しくなる予定だからな」
「……わかりました」
最近はいつも放課後必ず会っていたから、突然会えなくなると少し寂しく感じ――なんてない!
寂しいなんて、一ミリも思ってないんだからな!!
「じゃあ、私は先に帰る」
「あ。僕も帰ります」
彼を追って俺が立ち上がったら、彼は俺を見て不思議そうな顔をした。
「別々に出るんじゃなかったのか? 妹に、私と共にいるのを見られるのは嫌なんだろう?」
そういえばそうだった。
「そうです……けど」
自分が言ったことの筈なのに、妙に心が落ち着かない。
「じゃあ、また」
「……さようなら」
仕方ない。認めよう。
今の俺は、ちょっとだけ残念だと思ってしまった。
ヴァーミリオン先輩が図書館を出て、暫くしてから俺も図書館を出た。
だが俺は、すぐによく知った声が聞こえて足を止めた。
「お兄様を変えたのは貴方だったの?」
「イザベラ様?」
どうして、貴方がここに?
「……ずるい」
イザベラとは仲良くなったつもりだったのに、今の彼女は俺を睨んでいた。
「お兄様は……お兄様は、私にはあんなふうには微笑んでくださらないのに。どうしてお兄様は、貴方に……!」
イザベラ様はそう言うと、呆然とする俺を置いてその場を去ってしまった。
「まずい」
一人残された俺は頭を押さえた。
「話がこじれた」
イザベラ様、メンタル不安定再び。




