内緒の個人授業(実技)を始めよう
「授業を始めよう」
この世界で、魔法は杖ではなく装身具と呪文により発動される。
装身具は加工された魔法石が嵌められており、指輪や腕輪、ネックレス、イヤリングやピアスを着けている人間もいる。
そして『レイ・シルフィード』の装身具は、左耳の片耳ピアスだ。
俺は少し長めの髪を耳にかけ、いつもは隠れている耳の飾りに触れた。
硬度8.5++アレキサンドライト。
これは、『レイ・シルフィード』が生まれた時に、彼の誕生を祝して両親から贈られたものだという。
この場所の結界石のレア度がSSSなら、俺の石はS+といったところ。でもこれこそ、今のシルフィードの家で最も価値あるものだ。
環境によって色を変えるこの石は、俺の瞳とどこか似ている。
「では、まずは初歩から」
彼はそう言うと、広い訓練場の一角に俺を連れて行った。
「五つの的があるだろう。これを、全て打ち抜けるようになりなさい」
「これ、何か特別な意味があるんですか?」
「的は全て異なる属性が付与されている。弱点となる魔法で攻撃することで、破壊が容易になる。お前の学年の実技試験は、この時期は毎年課題はこれだ」
「はい?」
「実技試験の内容は、告知はされないが毎年変わらない。……知らなかったのか?」
「……」
なんてことでしょう。友達が少ない弊害がここに!
イザベラ様も教えてくれたらよかったのに――とも思ったが、彼女の性格からして、知らない人間がいる情報をもとに試験対策をする人ではないのかもしれない。
「風!」
俺は、自分が最も得意な魔法を的に向かって放った。
「ふむ。シルフィードの人間なだけあって、風魔法は得意なようだな」
おそらく風が弱点の属性だったのだろう。的の一つが、俺の魔法によって破壊された。
「まあ、そうですね」
「だが、油断してはいけないぞ?」
「はい?」
それってどういう意味? と思っていたら。
「なんで的が、こっちを攻撃してくるんですかっ!」
「実技訓練なんだ。実戦で使えてこそ実技だろう?」
何故か的が動き出し、俺を追いかけて攻撃してきた。
「そんな無茶な……っ!」
こんなのアリかよ!?
「ウィン……!」
風魔法で退けようとしたけれど、的から放たれた炎の魔法は、俺の風魔法よりずっと強かった。
――駄目だ。このままじゃ、炎に押し負ける。
「……っ!」
その時だった。
「凍れ」
低い声が響いた瞬間、俺に襲いか測ろうとしていた炎は、一瞬で凍りついた。
「大丈夫か? レイ・シルフィード」




