「この恋は運命。僕は神託を受けた、二人の愛のキューピッドなのです!」
近くの(高級)宿で水に濡れた二人がお風呂に入っている間、俺はイザベラ様の命令で別室で待機して用意されたマカロンを食べていた。
甘い食べ物は癒しだ。それに可愛い。
可愛いものは、何であろうと正義なのである。故に、美少女百合は大正義だ。
「それにしても、お風呂か……」
女の子同士のお風呂。俺にはよく分からない世界だが、やっぱり水を掛け合ってキャッキャしたりするんだろうか。それとも、お風呂のなかで肩が触れ合ったりして、どきどきとかするんだろうか?
「逃げずに大人しく待っていたのね」
高級菓子に一人舌鼓をうっていると、お風呂と身支度を終えたマリーさんとイザベラ様が部屋に入ってきた。
「はい。用意していただいたお菓子を食べながら待っていました」
二人とも、お風呂上がりのおかげが頬がほんのりと赤くなっている。
まるで近くにいるだけで、お互いが胸の高鳴りで体温が上がっているようにも見えて、俺は勝手に幸せな気持ちになった。
えーっと、因みになんですが、お二人は先程まで一緒にお風呂に入っていらしたということでよろしいんでしょうか?
「それで? 結局今回のことは、全部貴方が原因というわけね?」
「申し訳ございませんでした」
俺は素直に土下座した。
「ああでも、僕がマリーさんを好きだというのは嘘なのでご安心ください」
「えっ?」
ぱっと顔を上げてイザベラ様に微笑むと、マリーさんが目を丸くした。
「マリーさんは人として好きなだけで、恋愛感情ではないんです」
「じゃあ……貴方は、一体何のために協力を申し出たというの?」
イザベラ様は明らかに俺を怪しんでいた。
だから俺はゆっくりと目を瞑り、心臓に手を当てて話をした。
「夢を。――夢を、見たんです」
「……夢?」
「はい。そうです。僕は夢を見ました。お二人が幸せそうに手を取り合って、笑い合っている夢を。恋人として、共に人生を歩む姿を」
「夢……」
イザベラ様は、その言葉を繰り返した。
「その夢を見て、僕はきっと、お二人は運命で結ばれているのだと思ったんです。それは僕にとっても素敵な未来で、そして僕は目を覚ました時、その光景を、僕も本当にこの目で見たいと願いました」
イザベラ様は、黙って俺の話を聞いてくれた。
「僕が長い間眠っていたのは、きっとその夢を見るために必要なことだったのだと思います。僕はこの夢を、『神託』だと思いました。長い眠りの時を経て、僕は二人を出会わせるために、再びこの地に戻ったのだと」
「それじゃあ貴方は……貴方が私たちと出会う前に、私とマリーが恋仲になる夢を見たというの?」
「はい! そのとおりです!」
嘘は言っていない。
だって夢にまで見て、公式も認めたんだ。イザマリの可能性を!
「……そう」
イザベラ様は俺の答えに、安堵したかのように見えた。
「本当、妙な男ね」
実は、俺がこう話したのには、もう一つ理由があった。
二人の関係は、この世界ではまだ特殊だととられる可能性がある。でもそれが、俺が見た『神託』だと言えば――二人の心は、少しは救われるかもしれない。
安心してくれ二人とも。これからは俺が命を賭けて、二人の関係を守ると誓う。
だからもっと俺に、両思い美少女百合を眺めさせてください!
「でも話していて、面白い方だとは思いませんか?」
イザベラ様に優しく頬を撫でられて、マリーさんは気持ちよさそうに目を瞑った。まるで、白いもふもふのうさぎのような可愛さだ。
俺のせいで関係がこじれそうになったのに、マリーさんは俺に優しかった。
これだから俺はマリーさんが大好きなのだ。若干イザベラ様が好きすぎて闇落ちの兆候が見られたけれど、それも深い愛故である。
「貴方がそうやって笑うなら、そばにおくのも悪くないわね」
イザベラ様の声は甘い。まるで、砂糖菓子そのものみたいだ。マリーさん限定の。
「レイ・シルフィード。貴方のことを許してあげるわ。貴方がいたからこそ、今があるというのは事実なのだし。……明日、マリーを屋敷に招くことにしたの。時間があれば、貴方も遊びに来てもよろしくてよ」
「いいんですか? あの、因みにお庭に薔薇園はありますか? 赤い薔薇はありますか」
「あるけれど……それがなんだっていうの?」
「ありがとうございます!!!」
妄想百合薔薇エピが回収できる可能性を見出した俺は、心から喜んだ。
ややドジっ子のマリーさんなら、きっと俺の夢を叶えてくれる。いや、大穴狙いでイザベラ様でもいい。どっちにしても最高です。
ああ。この世界におわす百合の神よ。感謝いたします。
俺は今、存在をゆるされました! ゆるされました!!!




