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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第91話 共鳴召喚士の可能性

魔界スキル商店の観測水晶には、今日も一人の青年と一匹の召喚獣が映し出されていた。


森の中。


カインとルナは、何度目か分からない訓練を続けている。


「もう一度いこう。」


カインが木剣を構える。


対するルナは静かに姿勢を低くした。


以前のカインなら、この状況で焦っていただろう。


自分が何とかしなければ。


自分が召喚士なのだから、強くなければならない。


そう考えていた。


しかし今は違う。


「ルナ。」


名前を呼ぶ。


それだけで、相手の考えが伝わってくる。


次の瞬間。


ルナの姿が消えた。


影の中へ潜り、敵役として配置された魔法像の背後へ移動する。


カインは迷わず走った。


互いに言葉を交わしていない。


それでも動きが重なる。


魔法像が反応する前に、二人の攻撃が同時に決まった。


「成功……!」


カインが息を吐く。


ルナが嬉しそうに近寄ってくる。


「クゥ。」


その姿を、観測水晶越しに見ていたアルトは静かに頷いた。


「共鳴率、安定していますね。」


隣にいたリリアが帳簿を見る。


「最初は92%だったのに、もう98%ですよ。」


「契約して間もないことを考えると、異常な数値です。」


アルトは記録を続ける。


【共鳴契約】


【研究段階:第一段階】


【契約者:カイン】


【召喚獣:ルナ】


【共鳴率:98%】


【特殊能力:共鳴感知】


しかし、アルトは一つ気付いていた。


この力の本質は、戦闘能力ではない。


共鳴契約が優れている理由。


それは、召喚士と召喚獣が互いを理解することで、本来なら発揮できなかった力を引き出せることだった。


「面白いですね。」


リリアが尋ねる。


「何がですか?」


「今まで召喚士は、魔物をどう従わせるか研究されてきました。」


「ですが、カインさんの場合は逆です。」


「どうすれば互いに成長できるか。」


アルトは頷いた。


「召喚という技術の方向性が変わるかもしれません。」



数日後。


カインは魔界スキル商店を訪れていた。


「アルトさん。」


「どうしましたか?」


「お礼を言いたくて。」


カインは深く頭を下げる。


「ありがとうございます。」


アルトは少し首を傾げた。


「私は契約を成立させただけです。」


「違います。」


カインは顔を上げる。


「僕はずっと、自分には才能がないと思っていました。」


「召喚士になりたいと思うこと自体が間違いなんじゃないかって。」


「でも、この店で違うと言ってもらえた。」


「僕が持っていたものにも価値があるって。」


アルトは黙って聞いていた。


「それを証明してくれたのは、ルナです。」


カインは隣を見る。


ルナは静かに座っている。


「だから、これからは僕が証明します。」


「才能がないと思っている人でも、可能性はあるって。」


その言葉に、アルトは少しだけ目を細めた。


「良い考えですね。」


「ただし。」


カインは首を傾げる。


「勘違いはしないでください。」


「え?」


「あなたが成功した理由は、私がスキルを渡したからだけではありません。」


「最後に努力したのは、あなた自身です。」


カインは頷く。


その言葉は、以前レオンにも伝えたものと同じだった。


スキルはきっかけ。


変わるために歩くのは本人。



カインが帰った後。


アルトは帳簿を整理していた。


新しいページを開く。


そこには過去の契約者たちの名前が並んでいる。


【分裂】


契約者:ポヨン


【努力】


契約者:レオン


【共鳴契約】


契約者:カイン


それぞれ違う。


種族も。


願いも。


得た力も。


しかし共通しているものがある。


彼らは皆、自分自身の価値を見つけた。


リリアが帳簿を覗く。


「ずいぶん増えましたね。」


「何がですか?」


「成功例です。」


アルトは少し考える。


「……そうですね。」


「以前は、スキルを渡した後の結果まで見ることはありませんでした。」


「ですが今は違います。」


観測水晶。


それによって、アルトは知ることができる。


自分が作ったスキルが、人の人生をどう変えるのか。


それは研究者として興味深い。


そして商人としても価値がある。


「もっとデータが必要ですね。」


アルトが呟く。


リリアが笑う。


「店長らしいですね。」



その夜。


魔界のどこか。


一人の魔族が古い報告書を読んでいた。


そこには、最近急激に名前を聞くようになった存在について書かれている。


【魔界スキル商店】


【確認された契約者】


【分裂を得たスライム】


【努力によって成長を続ける人間】


【未知の召喚契約を成立させた召喚士】


魔族は報告書を閉じた。


「偶然……ではないな。」


低い声。


「一つの店が、世界の流れを変え始めている。」


その視線の先には、黒い紋章が刻まれていた。


まだ誰も知らない。


魔界スキル商店を巡る、新たな騒動が始まろうとしていることを。

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