表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/100

第89話 共鳴召喚士と観測水晶

魔界スキル商店の奥。


普段はアルトとリリアしか入らない研究室で、一つの魔道具が淡い光を放っていた。


巨大な水晶。


人の背丈ほどある透明な結晶の内部には、無数の魔法陣が浮かび上がっている。


これが観測水晶。


アルトが魔界スキル商店で使用している、特殊な研究設備だった。


「久しぶりですね。」


アルトは水晶へ手を触れる。


すると、内部に文字が浮かび上がった。


【観測対象】


【契約者:カイン】


【スキル:契約安定】


【契約状態:正常】


【観測開始可能】


リリアが隣から覗き込む。


「また使うんですか?」


「はい。」


アルトは頷いた。


「共鳴契約は未知の領域です。」


「今後、新しいスキルを開発するためにも、成長過程を確認する必要があります。」


観測水晶は便利な道具ではない。


使用するたびに大量の金貨が必要になる。


水晶そのものの維持費。


魔法陣の調整費。


観測対象を追跡するための魔道具費用。


全てが高額だった。


だからこそ、アルトは必要な時だけ使用している。


「今回の観測費用は……。」


帳簿が自動的に開く。


【観測水晶使用料】


【金貨30枚】


アルトは迷わず支払う。


金貨30枚。


決して安くはない。


しかし、アルトにとってこれは浪費ではなかった。


研究への投資である。


「店長って、本当にお金を使う時は迷わないですよね。」


リリアが苦笑する。


「必要なものですから。」


アルトは答えた。


「金貨は貯めるためにあるのではありません。」


「新しい価値を生み出すために使うものです。」


観測水晶が輝きを増す。


そして映し出されたのは、森の中にいるカインとルナだった。


契約から数日。


二人はすでに訓練を始めていた。


「行くよ、ルナ!」


カインが走る。


正面には巨大な岩。


普通なら召喚獣へ攻撃を命じる場面だ。


しかし。


「右!」


カインが叫ぶ前に、ルナは動いていた。


影へ潜り、岩の横へ回り込む。


その動きに迷いはない。


まるでカインの考えを読んでいるようだった。


リリアが驚く。


「もうこんな連携ができるんですか?」


アルトは水晶を見つめる。


「共鳴契約の効果でしょう。」


「魔力だけではありません。」


「感覚の一部まで共有している。」


帳簿へ新しい情報が追加される。


【共鳴率】


【92%】


【上昇中】


【特殊能力発現条件】


【解析中】


アルトは目を細める。


やはり。


共鳴契約は単なる契約方法ではない。


召喚士と召喚獣、その両方を変化させる可能性がある。


その時。


水晶の映像が一瞬だけ乱れた。


「……?」


リリアが首を傾げる。


「故障ですか?」


「いえ。」


アルトは水晶を見る。


故障ではない。


観測対象側から、予想以上の魔力反応が発生したのだ。


映像が戻る。


そこには、ルナの姿があった。


しかし先ほどとは違う。


体の周囲に淡い光がまとっている。


【解析更新】


【召喚獣:ルナ】


【特殊能力候補】


【共鳴感知】


アルトは静かに息を吐いた。


「やはり……。」


「契約によって能力が生まれています。」


リリアが驚く。


「まだ契約して数日ですよ?」


「普通ならあり得ません。」


「だからこそ価値があります。」


アルトは帳簿へ記録する。


【研究項目追加】


【共鳴契約による能力変化】


この情報は、いずれ新しいスキルになる可能性がある。


つまり今回の観測は、金貨30枚以上の価値を生むかもしれない。


魔界スキル商店の仕組みは単純な売買ではない。


客がスキルを購入する。


アルトはその成長を研究する。


研究結果から、新しいスキルを開発する。


そしてまた、新しい客へ提供する。


その循環こそが、この店を成長させていた。


その時。


観測水晶の端に、新しい表示が浮かび上がる。


【未確認情報】


【ルナ】


【種族情報】


【一部解放】


アルトは目を細めた。


未知の召喚獣。


未知の契約。


そして未知のスキル。


まだ始まったばかりだ。


「これは……面白くなりそうですね。」


アルトが呟く。


研究者としての好奇心が、静かに燃え上がる。


その頃。


森では、カインがルナへ笑いかけていた。


「一緒に強くなろう。」


ルナは嬉しそうに鳴く。


二人の成長は始まったばかりだった。


そしてその全てを、魔界スキル商店の観測水晶は静かに記録していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ