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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第81話 シャドウフォックスと進化誘導①

闇色の光が森一帯を包み込む。


突然の異変に、ロックベアは本能的な危険を察知したのか、一歩後ろへ下がった。


巨体の魔獣が怯むほどの魔力。


レオンも目の前の光景を信じられず、言葉を失っていた。


「進化……?」


まだ契約して一か月ほどの幼体である。


普通なら進化などあり得ない。


まして特殊進化など、教科書にもほとんど記載されないほど珍しい現象だった。


光はさらに強く輝き、シャドウフォックスの小さな身体がゆっくりと大きくなっていく。


丸みを帯びていた体つきは引き締まり、艶のある漆黒の毛並みには淡い紫色の光が流れ始めた。


耳はさらに長くなり、尻尾は一本から二本へと分かれていく。


そして黄金色だった瞳は、夜空を思わせる深い紫色へ変わっていた。


光が消える。


そこに立っていたのは、以前とは別種のような美しい魔獣だった。


「キュオォ……。」


落ち着いた鳴き声が森へ響く。


その声には幼さが残りながらも、不思議な威厳が宿っていた。


ロックベアは低く唸る。


それでも相手はまだ自分より小さい。


力で押し潰せると判断したのだろう。


咆哮と共に再び突進した。


「危ない!」


レオンが叫ぶ。


しかしシャドウフォックスは動かなかった。


いや、動かなかったように見えた。


次の瞬間には、その姿が消えていたのである。


「えっ!?」


ロックベアの爪は空を切る。


一瞬遅れて、その背後にシャドウフォックスが現れた。


「残像……?」


レオンは目を見開く。


あまりにも速い。


目で追えない速度だった。


シャドウフォックスは静かに前脚を振るう。


漆黒の爪が一閃。


ロックベアの背中へ三本の傷が刻まれた。


「ガアアアアッ!」


怒り狂ったロックベアが振り返る。


しかし、そこにシャドウフォックスはいない。


右。


左。


背後。


まるで影そのものが動き回っているかのようだった。


何度攻撃しても当たらない。


そのたびに鋭い一撃だけを受け、ロックベアの傷が少しずつ増えていく。


「これが……進化。」


エミナは呆然と呟いた。


シャドウフォックスは強くなった。


だが何より驚いたのは、その戦い方だった。


決して無理をしない。


真正面からぶつからない。


相手の隙だけを突く。


まるで長年戦い続けてきた熟練の魔獣のような戦闘だった。


その頃、魔界スキル商店では帳簿が高速で情報を書き換えていた。


【特殊進化 確認】


【進化先確定】


【種族名】


【シャドウナイン】


「シャドウナイン?」


リリアが首を傾げる。


「尻尾は二本しかありませんよ?」


アルトは小さく笑った。


「まだ成長途中だからです。」


帳簿を指差す。


そこには詳細な説明が表示されていた。


【成長型特殊種】


【成長と共に尻尾が増加】


【最大九本】


【九本到達時、最終進化条件解放】


「なるほど……。」


リリアは感心したように頷く。


つまり今は第一段階。


まだまだ成長する魔獣だったのである。


その時、観測水晶の映像が再び動く。


ロックベアは傷だらけになりながらも最後の力を振り絞り、大きく口を開いた。


大量の魔力が集まる。


「ブレスです!」


リリアが思わず叫ぶ。


Bランク魔獣の全力魔法。


新人冒険者なら一撃で命を落としてもおかしくない。


だがシャドウナインは逃げなかった。


静かにエミナの前へ立つ。


その二本の尻尾が淡く輝き、地面へ長い影が伸びていく。


その影がまるで生き物のように蠢き、巨大な壁となってエミナたちを包み込んだ。


次の瞬間、ロックベアのブレスが炸裂する。


轟音と共に土煙が舞い上がる。


森が揺れ、木々が大きくしなる。


レオンは思わず腕で顔を覆った。


「終わった……。」


そう思った。


しかし土煙が晴れると、そこには無傷のエミナとシャドウナインの姿があった。


影の壁が、全ての攻撃を受け止めていたのである。


帳簿へ新たな文字が浮かぶ。


【固有スキル獲得】


【影壁】


アルトは静かに目を細めた。


「進化だけではありませんか。」


「進化と同時に固有スキルまで……。」


これは予想を超えていた。


エミナの才能。


進化誘導適性。


そして魔物との深い信頼関係。


その三つが重なったことで、常識では考えられない進化が起きている。


観測水晶の向こうでは、シャドウナインがゆっくりとロックベアを見据えていた。


勝負は、いよいよ決着の時を迎えようとしていた。

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