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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第7話 オーガと守護①

魔界北部。


岩山に囲まれた集落で、一人のオーガが地面に転がっていた。


「また負けたのか」


呆れた声が降ってくる。


見上げると、同族たちがこちらを見下ろしていた。


「本当に弱いな」


「オーガの恥だ」


「その体だけは立派なんだがな」


笑い声が広がる。


倒れているオーガ――グロンは何も言い返せなかった。


事実だからだ。


オーガは強さを尊ぶ種族。


大きな体。


圧倒的な腕力。


頑丈な肉体。


戦うために生まれたと言われる魔族。


だがグロンは違った。


力はある。


体格も良い。


それなのに戦いが苦手だった。


相手を傷つけるのが怖い。


誰かが怪我をするのを見るのが苦手だった。


その性格はオーガの集落では理解されない。


「また負けたらしいぞ」


「弱虫グロンだ」


子供たちにまで言われる始末だった。


グロンはゆっくり立ち上がる。


服についた土を払う。


そして何も言わずに集落を離れた。



集落の外れ。


小さな畑が広がっている。


そこに一人の老いたオーガがいた。


「またやられたのか」


老人は笑う。


グロンも苦笑した。


「見てたの?」


「悲鳴が聞こえた」


「悲鳴じゃないよ」


「似たようなもんだ」


老人は豪快に笑った。


グロンもつられて笑う。


この祖父だけは昔から変わらなかった。


強くなれとも言わない。


弱虫とも言わない。


ただ一緒にいてくれる。


「じいちゃん」


「なんだ」


「俺って変なのかな」


老人は鍬を置いた。


しばらく考える。


そして言った。


「優しいだけだろ」


「でもオーガだよ」


「だから何だ」


即答だった。


「強い奴が偉いなら、わしはお前の方が好きだ」


グロンは言葉を失った。


老人は続ける。


「力なんぞ使い方次第だ」


「殴るために使う奴もいれば、守るために使う奴もいる」


風が吹く。


畑の葉が揺れる。


グロンは少しだけ胸が軽くなった。



その日の夜。


事件は起きた。


魔獣の群れが現れたのだ。


黒い狼のような魔物。


シャドウウルフ。


十匹以上。


集落の柵を飛び越え、人々を襲う。


「魔獣だ!」


「武器を持て!」


混乱が広がる。


戦士たちが飛び出す。


グロンも駆け出した。


そして凍り付く。


祖父がいた。


畑の近くだ。


逃げ遅れている。


「じいちゃん!」


叫ぶ。


シャドウウルフが飛びかかった。


間に合わない。


そう思った。


だが。


ドンッ!


別のオーガが体当たりした。


魔獣が吹き飛ぶ。


助かった。


しかし。


代わりにそのオーガが噛みつかれた。


悲鳴が響く。


血が飛び散る。


グロンの足が止まる。


怖かった。


体が動かない。


戦えない。


その間にも仲間たちは傷付いていく。


やがて魔獣たちは去った。


だが集落には重い空気が残った。



翌日。


怪我人が続出していた。


幸い死者はいない。


だが何人も重傷だ。


祖父も肩を怪我していた。


「すまん」


グロンは頭を下げた。


「何がだ」


「俺が動けなかったから」


老人は黙る。


そして言った。


「お前は戦えなかった」


グロンは拳を握る。


痛いほど分かっている。


だが。


次の言葉は予想外だった。


「だが、お前は最初にわしを助けようとした」


グロンが顔を上げる。


「皆が武器を取りに行く中、お前だけはわしの方へ走った」


老人は笑った。


「お前は戦いたいんじゃない」


「守りたいんだろ」


その言葉が胸に刺さる。


守りたい。


確かにそうだった。


強くなりたいわけではない。


勝ちたいわけでもない。


守りたいのだ。


家族を。


仲間を。


大切な人を。



数日後。


グロンは旅に出ていた。


向かう先は一つ。


最近噂になっている店。


願いに合ったスキルを売る不思議な商店。


荒野を歩きながら思う。


自分は何を求めているのか。


答えは決まっていた。


敵を倒す力じゃない。


誰かを傷付ける力でもない。


欲しいのは。


守る力だ。


やがて遠くに小さな建物が見えた。


木造の店。


見慣れない看板。


『魔界スキル商店』


グロンは立ち止まる。


そしてゆっくりと扉へ手を伸ばした。


カラン。


鈴の音が鳴る。


「いらっしゃいませ」


店の奥から現れた青年を見て。


グロンは知らなかった。


この出会いが、自分の人生だけでなく。


後に魔界そのものを変えることになるとは。

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