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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第58話 新機能

カイルが中級召喚士へ昇格してから数日後。


魔界スキル商店では奇妙な光景が広がっていた。


「店長」


「何ですか?」


「これ、昨日までありました?」


リリアが指差した先。


店の奥。


帳簿の隣。


そこには見覚えのない水晶球が置かれていた。


直径三十センチほど。


透明な結晶で作られた美しい球体。


淡い光を放っている。


アルトは首を傾げた。


「ありませんでしたね」


「ですよね」


二人は水晶を見つめる。


数秒。


沈黙。


そして。


「帳簿ですかね」


「帳簿でしょうね」


犯人はほぼ確定だった。


この店で勝手に機能を増やす存在など一つしかない。


アルトが帳簿を開く。


すると待っていたかのように新しい文字が浮かび上がった。


【従業員加入を確認】


【店舗機能を拡張します】


【契約者観測機能 解放】


【観測水晶を設置しました】


「増えてますね」


「増えてます」


リリアは慣れ始めていた。


この店は時々こういうことをする。


説明不足のまま新機能を生やすのだ。


補佐妖精としては非常に気になる。


「契約者観測?」


アルトも興味を示した。


さらに説明を読む。


【契約者の成長を観測できます】


【契約者の許可は不要です】


【一部制限があります】


「最後が怖いですね」


「何かありそうですね」


二人が警戒していると、水晶が淡く光った。


次の瞬間。


映像が浮かび上がる。


「え?」


リリアが声を上げる。


そこに映っていたのは――。


「カイルさんですね」


「カイルさんですね」


中級召喚士へ昇格したばかりの青年だった。


訓練場らしき場所で剣を振っている。


正確には小鬼が剣を振り、角兎が走り、影獣が影へ潜っている。


そして。


「共有率二十四%です」


帳簿の情報が表示される。


アルトは感心した。


本当に成長している。


契約共有との相性は予想以上だった。


その時。


映像の中で角兎が転んだ。


盛大に。


顔から。


「……」


「……」


数秒の沈黙。


そして小鬼が笑った。


角兎が怒る。


追いかけ回す。


影獣は少し離れた場所で寝ている。


「平和ですね」


「平和ですね」


戦闘でも何でもなかった。


ただの日常だった。


リリアは思わず笑ってしまう。


「何だか可愛いですね」


「そうですね」


店内の空気が少し和む。


だがその時。


映像が切り替わった。


「おや?」


今度は別の人物だった。


銀髪の女性。


見覚えがある。


「セレナ様です」


魔王軍幹部セレナだった。


書類の山に埋もれている。


そして。


「まだ仕事してますね」


「夜中ですよね?」


窓の外は真っ暗だった。


セレナは疲れた顔をしている。


しかし以前とは違う。


表情に迷いがない。


山積みの書類を次々と片付けていく。


途中で何かを思いついたらしい。


新しい資料を書き始める。


また仕事が増えた。


それでも楽しそうだった。


リリアは苦笑する。


「本当に変わりましたね」


「変わりましたね」


可能性。


あのスキルを買った日から。


セレナは前へ進み始めた。


その様子がよく分かる。


さらに映像が切り替わる。


今度は。


巨大な狼だった。


「ガルムさんですね」


「ガルムさんですね」


ガルムは部下たちと訓練をしていた。


だが問題はそこではない。


「速い」


リリアが思わず呟く。


情報収集。


索敵。


分析。


以前より明らかに能力が向上している。


部下への指示も的確だ。


しかも。


「部下が増えてます」


「増えてますね」


どうやら勢力まで拡大しているらしい。


アルトは少し驚いた。


スキルは知識を与える。


だが活かすのは本人だ。


ガルムは予想以上に活用している。


そして最後に。


映像がまた変わる。


そこには上級召喚士ゼクトが映っていた。


「え?」


リリアが首を傾げる。


契約者ではない。


なぜ映るのか。


帳簿が答える。


【観測対象】


【契約者への接触者】


「なるほど」


リリアは感心する。


顧客管理機能の一種らしい。


ゼクトは何かを調べていた。


資料。


戦績。


昇格試験記録。


全てカイルに関するものだ。


「かなり気にしてますね」


「気にしてますね」


二人は同時に言った。


その時だった。


帳簿に新たな文字が浮かび上がる。


【契約者観測機能】


【初回利用特典終了】


【次回より有料】


店内が静まり返る。


リリアがゆっくり振り返る。


アルトも帳簿を見る。


嫌な予感しかしない。


そして。


【観測一回】


【金貨百枚】


「お金取るんですか!?」


リリアのツッコミが店内へ響き渡った。


帳簿は当然のように沈黙している。


だが。


アルトには何となく分かった。


この店は。


本当に商売が好きなのだろう。


少なくとも。


店主よりは。

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