↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/100

第57話 召喚士と契約共有⑤

昇格試験当日。


召喚士協会の訓練場には多くの受験者が集まっていた。


下級から中級への昇格試験。


受験資格は過去一年間の実績と推薦。


決して難関ではない。


しかし簡単でもない。


毎年三割近くが不合格になる。


カイルは受付を終え、静かに待機していた。


角兎、小鬼、影獣。


三体の契約魔獣も落ち着いている。


一か月前なら緊張していただろう。


だが今は違う。


不思議な自信があった。


慢心ではない。


積み重ねてきた訓練への信頼だった。


「久しぶりだな」


声がした。


振り返る。


そこには見覚えのある召喚士たちがいた。


昔、何度も模擬戦で負けた相手たちだ。


「カイルか」


「最近調子が良いらしいな」


「運が良かっただけじゃないのか?」


少し棘のある言葉。


以前なら黙っていただろう。


しかし今のカイルは笑うだけだった。


「そうかもしれないな」


余裕のある返答だった。


相手たちは少し面食らう。


以前のカイルはもっと自信がなかった。


だが今は違う。


その変化が気に入らなかった。


そんな空気が流れる。


その時だった。


「なるほど」


別の声が聞こえた。


全員の視線が向く。


黒いローブ。


細い目。


上級召喚士ゼクト。


若手の有力者として知られる人物だった。


周囲の空気が少し変わる。


上級召喚士は数が少ない。


この会場でも格上の存在だった。


「最近話題のカイル君か」


ゼクトは穏やかに笑う。


だがその目は笑っていない。


観察している。


値踏みしている。


そんな視線だった。


「何か用ですか?」


カイルが尋ねる。


「いや」


ゼクトは肩をすくめた。


「少し興味があってね」


それだけ言って離れていく。


だが。


カイルは何となく嫌な予感を覚えた。


訓練場の隅で。


ゼクトは一人考えていた。


最近の戦績は全て確認している。


一か月前まで平凡。


今は急成長。


契約魔獣は変わっていない。


新しい召喚獣もいない。


それなのに強くなった。


普通ではない。


「何かある」


ゼクトは確信していた。


だが証拠はない。


だから見る。


試験で。


直接。


そして試験が始まった。


内容は実戦形式。


訓練用魔獣との戦闘だった。


受験者が次々と呼ばれる。


勝つ者。


負ける者。


苦戦する者。


様々だった。


やがて。


「次、カイル」


名前が呼ばれる。


カイルは前へ出た。


対戦相手は中級魔獣。


鋼牙狼。


素早さと攻撃力を兼ね備えた強敵だった。


以前なら苦戦していた。


だが今は違う。


「行くぞ」


契約魔獣たちが動く。


角兎が先行する。


鋼牙狼が飛びかかる。


その瞬間。


角兎は紙一重で回避した。


会場がざわつく。


速い。


異常なほど速い。


さらに小鬼が突撃する。


鋼牙狼の攻撃を読み切り、剣で弾く。


下級魔獣とは思えない技術だった。


そして。


影獣が消える。


鋼牙狼が警戒する。


だが遅い。


背後から現れた影獣が足元を崩した。


体勢が乱れる。


そこへ。


角兎。


小鬼。


影獣。


三方向から同時攻撃。


連携としては完璧だった。


数分後。


鋼牙狼は戦闘不能となった。


静寂。


そして歓声。


誰もが驚いていた。


下級魔獣三体で中級魔獣を圧倒したのだ。


あり得ない光景だった。


「合格!」


試験官の声が響く。


カイルは小さく息を吐いた。


成功だった。


だが。


会場の誰よりも驚いていたのはゼクトだった。


「おかしい」


小さく呟く。


強くなった理由が分からない。


しかし戦闘は見た。


連携。


共有されたような動き。


まるで三体が一つの生き物のようだった。


そして。


ゼクトは一つの可能性に辿り着く。


「新しいスキル……?」


召喚士はスキルで化ける。


それは常識だ。


だが。


あの変化は異常だった。


もし未知のスキルなら。


価値は計り知れない。


ゼクトの興味はさらに深くなる。


その頃。


魔界スキル商店。


リリアは帳簿を確認していた。


「店長」


「何ですか?」


「昇格しました」


アルトが覗き込む。


【契約者:カイル】


【昇格成功】


【中級召喚士】


【契約共有】


共有率 21%


順調だった。


だが。


その下に表示された情報を見て、アルトは少しだけ眉を上げる。


【観測者】


上級召喚士 ゼクト


興味度 78%


追跡確率 64%


リリアもそれを見て苦笑する。


「かなり気にされていますね」


「そうですね」


成功者には注目が集まる。


当然のことだった。


ただ。


帳簿はさらに一行追加する。


【推奨】


放置


アルトは吹き出した。


「放置らしいです」


「雑ですね」


リリアも笑う。


どうやら帳簿の判断では、まだ問題になる相手ではないらしい。


しかし。


その判断が正しいのか。


間違っているのか。


それはまだ誰にも分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。