表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/100

第53話 召喚士と契約共有①

店内へ入ってきた魔族は、扉を閉めると周囲を慎重に見回した。


深く被ったフード。


やや痩せた体格。


年齢は若い。


おそらく二十代前半だろう。


警戒心が強いのはすぐに分かった。


アルトはいつも通り穏やかな笑顔を浮かべる。


「いらっしゃいませ」


その言葉に、魔族は少しだけ肩の力を抜いた。


だが警戒は消えていない。


逃げ道。


窓。


店内の構造。


そんなものを確認している。


リリアは興味深そうに観察していた。


補佐妖精の分析能力は非常に高い。


視線の動きだけでも相手の性格がある程度見えてくる。


「初めてのお客様ですね」


アルトが席を勧める。


魔族は少し迷った後、椅子へ腰掛けた。


「……本当にスキルを売っているんですか?」


第一声はそれだった。


最近では珍しい反応である。


ガルムやセレナは既に噂を聞いて来店していた。


だが目の前の青年は違う。


まだ半信半疑なのだ。


「売っています」


アルトは答える。


「信じられないなら帰っても構いません」


その言葉に青年は驚いた。


普通の商人なら引き止める。


だがアルトは違った。


押し売りをしない。


それが逆に信用できた。


「名前を聞いても?」


「カイルです」


少し迷った後、青年は名乗った。


リリアは帳簿へ視線を向ける。


そこには既に情報が浮かび始めている。


【カイル】


【職業:召喚士】


【契約魔獣:3】


【適性検索中】


リリアの目が輝いた。


初めて見る情報ばかりだった。


「召喚士なんですね」


思わず口にする。


カイルが驚く。


「なぜ分かった?」


「あっ」


リリアが固まる。


アルトは額を押さえた。


採用初日である。


まだ教育が終わっていない。


「リリアさん」


「はい」


「帳簿情報を先に言わない」


「申し訳ありません」


「今後気を付けます」


反省は早かった。


カイルは逆に興味を持ったらしい。


「本当に分かるのか?」


「ある程度は」


アルトが答える。


「お客様に合うスキルを探すためです」


カイルは腕を組む。


そしてしばらく考え込んだ。


やがて小さく頷く。


「なら相談したい」


その表情には切実さがあった。


アルトは自然と真剣な顔になる。


「何に悩んでいますか?」


カイルはすぐには答えなかった。


視線を落とし、言葉を選ぶ。


そして静かに口を開く。


「俺には三体の契約魔獣がいる」


召喚士にとって魔獣は家族のような存在だ。


共に戦い。


共に成長する。


一生を共にする者も多い。


「でも弱いんだ」


苦笑が漏れる。


そこには長年の諦めが滲んでいた。


「契約した頃は期待してた」


「珍しい才能があるかもしれない」


「進化するかもしれない」


「強くなるかもしれない」


だが現実は違った。


一体は角兎。


一体は小鬼。


一体は小型の影獣。


どれも下級魔獣。


決して弱すぎるわけではない。


だが強者にもなれない。


中途半端な立場だった。


「仲間はどんどん強くなる」


「上位召喚獣を契約する」


「強力な魔獣を従える」


「俺だけ取り残される」


リリアは黙って聞いていた。


その気持ちは少し分かる。


周囲が成長していく中で、自分だけが停滞しているように感じる。


セレナが抱えていた悩みにも少し似ていた。


「それでも手放せないんです」


カイルは笑った。


「弱いけど、あいつらは頑張ってる」


「ずっと一緒だったからな」


その言葉に嘘はなかった。


アルトは静かに頷く。


そして帳簿を開く。


ページが光る。


文字が浮かび上がる。


【適性スキル】


【契約共有】


アルトの目が細くなる。


珍しい。


かなり珍しいスキルだった。


横から覗いたリリアも息を呑む。


初めて見る名前だった。


「決まりましたか?」


カイルが尋ねる。


アルトはゆっくり頷く。


そして結晶を取り出した。


淡い銀色に輝く結晶。


「お客様に最も適したスキルです」


カイルが息を飲む。


「名前は?」


アルトは静かに答えた。


「契約共有」


その瞬間。


帳簿の下に新しい文字が現れる。


【進化適性:極高】


【契約魔獣との相性:最高】


リリアは目を見開いた。


おそらく。


この召喚士は。


彼自身ではなく。


共に生きる魔獣たちによって大きく変わる。


そんな予感がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ