表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/94

第36話 上級魔族と進化④

鉱山の魔獣討伐から数週間が過ぎた。


ヴァルドの日常は変わらない。


朝は訓練。


昼は領地の仕事。


夜は魔法研究。


以前と同じ生活だった。


だが。


本人だけが知っていた。


自分の中で何かが変わり続けていることを。


進化は終わらない。


むしろ。


時間が経つほど変化は大きくなっていた。



最初に変わったのは戦闘だった。


以前のヴァルドは才能で戦っていた。


圧倒的な魔力。


高い身体能力。


優れた魔法技術。


それらを駆使して相手を制圧する。


正面から押し潰す戦い方。


それでも十分強かった。


だが今は違う。


相手を観察する。


魔力の流れを見る。


癖を読む。


戦闘中に学ぶ。


そして。


戦いながら最適な方法へ変化していく。


最初は苦戦していた相手でも。


時間が経つほど有利になる。


まるで。


戦闘そのものが成長の糧になっているようだった。



訓練場。


数人の上級魔族が集まっていた。


彼らは一族の中でも実力者として知られている。


その中央に立つのはヴァルドだった。


「本当にやるのか?」


一人の魔族が尋ねる。


「三人同時に相手をするつもりか?」


周囲からもざわめきが起きる。


三対一。


しかも相手は全員上級魔族。


普通なら無謀だった。


しかし。


ヴァルドは落ち着いていた。


「問題ない」


短い返答。


それが余計に周囲を刺激した。



開始の合図。


三人が同時に動く。


炎の魔法。


風の刃。


身体強化による高速接近。


完璧な連携だった。


一人では避けられない。


そう思われた。


だが。


ヴァルドは動いた。


最小限の動きで炎を回避する。


風の刃を紙一重で避ける。


接近してきた相手の攻撃を受け流す。


観客席がざわめく。


速い。


いや。


違う。


無駄がないのだ。



戦闘が続く。


普通なら徐々に追い詰められる状況。


しかし。


時間が経つほどヴァルドの動きが洗練されていく。


相手の癖を把握する。


攻撃の起点を読む。


魔力の流れを見抜く。


そして。


隙を見つける。


一人。


また一人。


上級魔族が戦闘不能になる。


最後の一人が膝をついた時。


訓練場は静まり返っていた。



「嘘だろ……」


誰かが呟いた。


三人とも弱くない。


むしろ強い。


それなのに。


ヴァルドは勝った。


しかも。


圧倒的な力で押し潰したわけではない。


以前より魔力が増えているようにも見えない。


それなのに。


明らかに強くなっている。


理由が分からない。


だからこそ不気味だった。



試合後。


一族の長老たちも集まっていた。


彼らはヴァルドを観察する。


「魔力量は変わっていない」


「身体能力も大差ない」


「では何が変わった?」


誰も答えられない。


ヴァルド自身も説明できなかった。


ただ。


一つだけ分かる。


以前なら見えなかったものが見える。


以前なら理解できなかったことが理解できる。


そして。


その速度が異常だった。



その夜。


ヴァルドは書庫にいた。


古い魔導書を読む。


過去の英雄の記録を調べる。


以前なら数日かけて理解していた内容が、驚くほど頭に入ってくる。


知識と経験が繋がる。


点と点が線になる。


「これも進化か……」


ヴァルドは呟く。


戦闘だけではない。


思考も変化している。


理解力。


応用力。


発想力。


全てが少しずつ成長していた。



しかし。


その変化を喜べない者もいた。


一族の中にはヴァルドを快く思わない者がいる。


特に。


次期当主の座を狙う者たちだ。


会議室。


数人の上級魔族が顔を揃えていた。


「最近のヴァルドは異常だ」


「急に強くなりすぎている」


「何か隠しているのではないか?」


不満の声が上がる。


才能があるのは以前からだ。


だが。


ここ最近の成長速度は説明できない。


だから疑う。


それが当然だった。



その中の一人が静かに口を開く。


「調べてみた」


全員の視線が集まる。


「どうだった?」


男は答える。


「最近、ヴァルドはある噂を追っていたらしい」


「噂?」


「力を売る店だ」


その瞬間。


空気が変わった。


誰も笑わない。


なぜなら。


最近になって同じ噂を耳にする機会が増えていたからだ。


ゴブリン。


サキュバス。


名も知らぬ魔族たち。


奇妙な変化を遂げた者がいる。


そして今。


ヴァルドまで変わった。


偶然とは思えなかった。



「探せ」


年長の魔族が言う。


「もし本当にそんな店があるなら」


目を細める。


「我々も無視はできん」



その頃。


魔界スキル商店。


契約記録が再び光を放っていた。


【進化】


契約者:ヴァルド


状態:第二段階発現


アルトは記録を見つめる。


進化は順調だった。


だが。


契約記録の隅には新しい文字が浮かんでいた。


【注目度上昇】


【追跡者発生】


アルトは小さく首を傾げる。


「珍しいですね」


今までの客では現れなかった変化。


それは。


ヴァルド自身だけでなく。


彼を取り巻く世界も変わり始めた証だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ