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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第31話 人間と努力⑦

半年前は落ちこぼれと呼ばれた少年が、今ではギルドで名を知られる冒険者になっていた。


最初は誰も期待していなかった。


新人冒険者。


才能なし。


失敗ばかりの落ちこぼれ。


それが周囲から見たレオンの評価だった。


しかし。


半年という時間は、少しずつその評価を変えていた。


低級魔物の討伐。


護衛任務。


探索依頼。


一つ一つの仕事を確実にこなし。


気付けば、ギルドでも名前を知られる存在になっていた。


とはいえ。


本人は以前と何も変わっていないと思っていた。


朝起きる。


剣を振る。


依頼を受ける。


反省する。


また練習する。


やっていることは昔と同じだった。


ただ一つ違うことがある。


昔は。


「いつか認められるため」


だった。


今は。


「昨日より強くなるため」


になっていた。



そんなある日。


レオンは故郷の村へ戻る依頼を受けた。


近隣の村への護衛。


偶然だった。


しかし。


その名前を見た瞬間。


少しだけ手が止まった。


故郷。


長い間、帰っていなかった場所。


正直。


戻るのは怖かった。


そこには。


昔の自分を知る人間がいる。


才能がないと言われ続けた場所。


努力しても意味がないと思わされた場所。


「……」


だが。


レオンは依頼を受けた。


逃げる理由はもうなかった。



村へ到着すると。


懐かしい景色が広がっていた。


変わっていない。


畑。


家。


小さな広場。


そして。


昔、何度も剣を振った場所。


「レオン?」


声をかけられる。


振り返る。


そこにいたのは。


昔、同じ村で暮らしていた青年だった。


「久しぶりだな」


「お前……冒険者になったって本当だったのか」


「ああ」


青年はレオンを見る。


昔とは違う目だった。


以前なら。


哀れみ。


同情。


そんな感情が混ざっていた。


しかし今は。


純粋な驚き。


「すごいな」


その言葉に。


レオンは少し戸惑った。


昔なら。


一番欲しかった言葉。


認められること。


褒められること。


でも。


今のレオンは。


それだけを求めていなかった。


「まだまだだよ」


自然とそう答えていた。



村の中心。


そこには昔の仲間たちが集まっていた。


その中には。


カイルもいた。


王都へ向かったはずの彼も、騎士団の任務で近くまで来ており、偶然村へ立ち寄っていた。


「久しぶり」


「お前も帰ってきたのか」


二人は笑う。


昔とは違う関係だった。


以前。


二人の間には大きな差があった。


才能を持つ者。


持たざる者。


そういう壁。


しかし。


今は違う。


互いに努力し。


互いに成長している。


「レオン」


カイルが言う。


「昔より強くなったな」


レオンは笑う。


「まだお前には勝てないけどな」


「そうか?」


カイルは少し笑う。


「俺はそうは思わないけどな」


その言葉に。


レオンは首を傾げる。


「どういう意味だ?」


「今のお前は、昔の俺にはなかったものを持ってる」


カイルは続ける。


「俺は才能で進んできた」


「でも、お前は違う」


「失敗しても、負けても、全部自分の力に変えてきた」


レオンは黙る。


昔なら。


そんな言葉を信じられなかった。


でも。


今なら分かる。



その夜。


レオンは一人で村の外へ出た。


昔。


毎日剣を振った場所。


木剣を握る。


振る。


一回。


二回。


十回。


百回。


昔と同じ動き。


しかし。


意味は全く違った。


昔は。


才能がない自分を変えたかった。


誰かに認めてほしかった。


でも。


今は。


剣を振ること自体が楽しかった。


「……ありがとう」


誰に言うでもなく呟く。


魔界の店主。


アルト。


あの店で買った力。


【努力】


もしあの日。


才能を求めて店へ行かなければ。


自分は今でも言い訳を探していたかもしれない。


才能がないから。


運が悪いから。


環境が悪いから。


でも。


今は違う。


自分の人生は。


自分で積み重ねられる。



その頃。


魔界スキル商店。


一枚の契約記録が静かに変化した。


【努力】


契約者:レオン


状態:成長中


評価:


成功。


アルトはその文字を見る。


そして。


小さく笑った。


「良い買い物でしたね」


商人として。


商品が役に立ったことは嬉しい。


しかし。


それ以上に。


一人の客が。


自分自身を取り戻したことが嬉しかった。



翌日。


レオンはまた冒険者として旅立つ。


まだ知らない。


この先。


自分が世界で知られる存在になることを。


そして。


いつか魔族たちからも。


警戒されるほどの存在になることを。


今はまだ。


ただの新人冒険者。


努力を続ける一人の人間だった。

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