表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/30

第19話 ダークエルフと継承③

紅牙族の侵入が確認されてから三日。


黒森全体が緊張に包まれていた。


見張りの数は増え、狩りに出る者も必ず複数人で行動するようになった。


戦士たちは武器の手入れを繰り返し、長老たちは避難計画を確認している。


十年前の悲劇を知る者ほど表情は硬かった。


そして、その中心にいるのがレイナだった。


「北の監視地点から報告です」


若い戦士が駆け込んでくる。


「紅牙族の集団を確認!」


集会所の空気が張り詰める。


「数は?」


「二十ほど!」


ざわめきが広がった。


小規模な偵察部隊ではない。


明らかに戦闘を想定した人数だった。


戦士長が地図へ視線を落とす。


「目的地は分かるか?」


「おそらく旧集落跡です」


その言葉にレイナの心臓が強く脈打った。


旧集落。


かつて自分たちの村があった場所。


そして焼き払われた場所。


「……そう」


短く呟く。


胸の奥から黒い感情が顔を出す。


憎しみ。


怒り。


復讐心。


消えたわけではなかった。


ただ押し込めていただけだ。


「レイナ」


戦士長が声を掛ける。


「行けるか?」


レイナは頷いた。


「もちろん」


今度は逃げない。


向き合う時が来たのだ。


翌朝。


レイナは数名の戦士と共に森を進んでいた。


木々の間を静かに移動する。


風向き。


足跡。


匂い。


全てを確認しながら進む。


その時だった。


後方から小さな物音が聞こえる。


振り返る。


「……何してるの?」


そこにはユートたちがいた。


以前弓を教えていた少年少女たちだ。


全員が気まずそうな顔をしている。


「ついてきちゃった」


「帰りなさい」


即答だった。


「でも!」


「帰りなさい」


二度目はさらに強かった。


少年たちは肩を落とす。


だが。


その中でユートだけは真っ直ぐレイナを見ていた。


「俺たち、足手まといかもしれない」


レイナは黙る。


「でも、何もできないまま守られるだけは嫌だ」


その言葉に、十年前の自分が重なった。


何もできなかった自分。


守られるだけだった自分。


失った後で後悔した自分。


レイナは小さく息を吐く。


そして。


「絶対に前へ出るな」


少年たちの顔が明るくなった。


「はい!」


結局、同行を許した。


甘い判断かもしれない。


だが、なぜか必要な気がした。


数時間後。


一行は旧集落跡へ到着した。


そこは今も焼け跡のままだった。


黒く焦げた木々。


崩れた建物。


十年経っても傷跡は消えていない。


レイナは静かに周囲を見回す。


そして。


見つけた。


紅牙族だ。


大柄な戦士たちが周囲を警戒している。


その中心には、一際大きな男がいた。


赤い牙の装飾。


傷だらけの顔。


レイナはその姿を忘れたことがない。


「ガルド……」


十年前。


村を襲った部隊の隊長。


家族を失うきっかけを作った男。


胸の奥で何かが燃え上がる。


呼吸が荒くなる。


手が震える。


もし今ここに【復讐】があったら。


迷わず飛び出していただろう。


その時だった。


背後から小さな声が聞こえる。


「レイナ姉ちゃん」


ユートだった。


不安そうな顔をしている。


その瞳を見た瞬間。


レイナの頭は冷えた。


違う。


今は一人じゃない。


背負っているものがある。


守るべき未来がある。


レイナは静かに弓を構えた。


そして仲間たちへ指示を出す。


「戦士班は左から回り込む」


「索敵班は退路を確認」


「ユートたちは後方支援」


戦士たちが驚いた顔をする。


以前のレイナなら、自分が先頭に立って突っ込んでいたはずだ。


だが今は違う。


全体を見ている。


仲間を見ている。


「行くわよ」


短い号令。


次の瞬間。


森が動いた。


矢が飛ぶ。


戦士が駆ける。


紅牙族が叫ぶ。


戦いが始まった。


十年前から続く因縁。


その決着の幕が、静かに上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ