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『ようこそ魔界スキル商店へ』  作者: もかどら


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第14話 ダークエルフと復讐①

魔界南部。


黒森と呼ばれる広大な森林地帯。


そこでは一人のダークエルフが獲物を追っていた。


矢を放つ。


風を裂く音。


次の瞬間、魔獣の眉間へ正確に突き刺さった。


魔獣は一声も上げず倒れる。


見事な腕前だった。


だが。


「まだ足りない」


ダークエルフ――レイナは冷たく呟いた。



黒森には多くの部族が存在する。


その中でもレイナの一族は、かつて有力な部族だった。


優秀な狩人。


優秀な戦士。


森の守護者。


誰もがそう呼んでいた。


だが十年前。


全てが変わった。



襲撃だった。


隣接する戦闘部族。


《紅牙族》。


些細な争いから始まった戦いは激化し、やがて部族同士の戦争へ発展した。


結果。


レイナの一族は敗北した。


村は焼かれた。


戦士は殺された。


多くの仲間が散った。


父も。


母も。


兄も。


帰ってこなかった。



「レイナ」


背後から声が掛かる。


同じ部族の青年だった。


「また狩りか」


「ええ」


「休めよ」


レイナは答えない。


青年は苦笑する。


「最近ずっとだろ」


「強くなりたいの」


短い返答。


だが本音ではなかった。


強くなりたいのではない。



復讐したい。


それだけだった。


十年間。


ずっと。



夜。


レイナは一人で墓地を訪れていた。


並ぶ墓標。


その一つへ手を添える。


父の墓だった。


「もう少し待って」


小さく呟く。


「必ず終わらせるから」


風が吹く。


木々が揺れる。


返事はない。


当然だ。


死者は答えない。



その時だった。


背後から話し声が聞こえた。


墓参りに来ていた別のダークエルフたちだ。


「知ってる?」


「魔界スキル商店のこと?」


「願いを叶えるスキルを売る店らしい」


レイナの耳が反応する。


最近よく聞く噂だった。


ゴブリン。


サキュバス。


オーガ。


リッチ。


様々な話が広がっている。


最初は信じなかった。


だが。


リッチの話だけは聞き覚えがあった。


ノワール。


有名な研究者だ。


その彼が店を利用したという噂が広まっていた。



願いを叶える。


その言葉が頭から離れない。


復讐を果たせる力。


敵を討つ力。


それが手に入るなら。



三日後。


レイナは荒野を歩いていた。


迷いはない。


欲しいものは決まっている。


復讐の力。


それだけだ。



やがて見えてくる。


小さな店。


木造の建物。


不思議な商店。


『魔界スキル商店』


レイナは扉を見つめる。


少しだけ拳に力が入った。


十年間。


追い続けた願い。


それが叶うかもしれない。



カラン。


扉を開く。


鈴の音。


店内には黒髪の青年がいた。


「いらっしゃいませ」


穏やかな声。


レイナは席へ座る。


そして迷わず言った。


「復讐したい」


アルトは何も言わない。


驚きもしない。


ただ静かに聞いている。



「敵を殺したい」


レイナは続ける。


「部族を滅ぼした連中を」


「奪われたものを返してもらう」


「十年間そのために生きてきた」


言葉が止まらない。


怒り。


憎しみ。


後悔。


全部吐き出す。



長い沈黙の後。


アルトが紙を取り出した。


ペンが走る。


淡い光。


文字が刻まれていく。


やがて一枚のカードが完成した。


レイナはそれを見る。


そして目を見開いた。


そこに書かれていたのは――


【復讐】


だった。



店内の空気が重くなる。


レイナはカードを見つめる。


その名の通りのスキル。


求めていた力。


欲しかった力。


だが。


なぜだろう。


カードから目を離せなかった。


まるで覗き込まれているような感覚があった。



アルトが静かに口を開く。


「価格をお伝えします」


レイナは頷く。


どんな代価でも払うつもりだった。


金貨でも。


宝石でも。


武器でも。


何でも。



しかし。


次の言葉でレイナの表情が凍り付く。


「金貨二十枚」


そこまでは予想通りだった。


問題はその後。


「そして――」


アルトは真っ直ぐレイナを見る。


「復讐が終わった後の人生」


店内が静まり返る。


レイナは意味が分からなかった。


いや。


理解したくなかった。


アルトは続ける。


「このスキルの代価です」


その言葉だけが。


静かに店内へ響いていた。

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