表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族しか魔法を使えない世界で、農奴の俺だけ土魔法が使えたので畑を耕していたら魔法学園へ強制入学させられることになった  作者: 雪だるま
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/42

38 終戦

 春。


 空気はまだ冷たいが、雪はほとんど消えていた。


 畑には泥が戻り、農奴たちはまた忙しくなり始めている。


 そして。


 その日。


 昼頃。


 村へ馬が走ってきた。


「…………」


 皆、手を止めた。


 農奴たちは敏感だ。


 急いで来る馬。

 役人。

 神殿関係。


 大体ろくな話じゃない。


「また徴兵か……?」

「税か?」

「まさか飢饉か……」


 空気が重くなる。


 すると。


 馬から降りた伝令が、大声で叫んだ。


「戦が終わったぞ!!」


 静寂。


「…………」


 誰もすぐには反応できなかった。


「停戦が成立した!!」


 伝令がさらに叫ぶ。


「王都から正式通達だ!!」


「…………」


 また静寂。


 そして。


「……終わった?」


 誰かが呟く。


「本当に?」


「徴兵は?」

「帰還は?」


 村人たちがざわつく。


 伝令は頷いた。


「順次帰還が始まる!!」


「…………」


 その瞬間。


 村の空気が変わった。


「うおおおお!!」

「終わったぞ!!」

「生きてりゃ帰ってくる!!」


 農奴たちが叫ぶ。


 泣き始める女もいる。


 座り込む老人もいる。


「…………」


 マリアは動けなかった。


 手から桶が落ちる。


 がこん。


「…………」


 本当に?


 本当に終わった?


 頭が追いつかない。


「ママぁあああああ!!!!」


 次の瞬間。


 レイが突っ込んできた。


「戦争終わったのだぁあああああ!!!!」


 どーん!!


 勢い余ってマリアへ抱きつく。


「レイ!?」


「のだぁあああ!!」


 完全に大興奮だった。


 目がきらきらしている。


「終わったのだぁ!!」


「まだ帰ってくるとは……」


「帰ってくるのだぁ!!」


 レイはもう確信していた。


 八歳児らしい勢いで。


「パパ帰ってくるのだぁ!!」


「…………」


 マリアの目に涙が浮かぶ。


 まだ分からない。


 本当に生きているかなんて。


 でも。


 希望を持ってしまう。


「のだぁあああああ!!!!」


 その頃。


 村の子供たちはもう暴走していた。


「終わったぞ!!」

「戦争終わった!!」

「父ちゃん帰ってくる!!」


「のだぁあああ!!」


 レイも混ざる。


 完全に語彙が死んでいた。


「のだぁ!!のだぁ!!」


「レイ喋れてないぞ!!」


「のだぁああ!!」


 嬉しすぎて駄目だった。


 子供たちは広場を走り回る。


 泥だらけで。

 叫びながら。


 誰も止めない。


 今日はもうそういう日だった。


「パパ帰ってくるのだぁ!!」


 レイは本当に嬉しそうだった。


 ずっと待っていた。


 ずっと。


「のだぁ!!」


 レイは勢いよく地面を叩いた。


 どごごごごごっ!!


 土が盛り上がる。


「うわっ!?」


 子供たちがびっくりする。


「お祝いなのだぁ!!」


 すると。


 大量の小型ゴーレムが出現した。


 しかも。


 全員、花を持っている。


「…………」


 一瞬静寂。


「なんだこれ!?」


「お祝いなのだぁ♡」


 レイは超ご機嫌だった。


 ゴーレムたちがよろよろ歩く。


 そして。


 どさっ。


 何体か転んだ。


「ぎゃははは!!」


 子供たちが爆笑する。


 レイも笑う。


「のだぁ♡」


 今日は何もかも楽しかった。


 風も。

 泥も。

 空も。


 全部。


「パパ帰ってくるのだぁ……」


 レイは空を見上げた。


 顔が少し赤い。


 泣きそうなのを我慢している。


「…………」


 サモサがその横へ来た。


「良かったね」


「のだっ♡」


 レイは何度も頷く。


「うむ♡」


 それから。


 少し真面目な顔になる。


「吾輩、いっぱい見せるのだぁ」


「何を?」


「畑なのだぁ♡」


「やっぱりそこなんだ」


「水路もなのだぁ♡」


 完全に農奴だった。


「ゴーレムも見せるのだぁ♡」


「怒られそう」


「なんでなのだぁ!?」


 本気で不思議そう。


 すると。


 ロイが全力で走ってきた。


「にいちゃん!!」


「のだぁ!!」


「パパ帰ってくるかな!?」


「帰ってくるのだぁ♡」


 レイは即答した。


 根拠はない。


 でも。


 今日はそう言いたかった。


「のだぁああああ!!」


 レイはまた叫びながら走り出した。


 子供たちも追いかける。


 笑い声が響く。


 大人たちも少し笑っている。


 何年ぶりだろう。


 村全体が、こんな空気になったのは。


「のだぁぁぁぁ!!」


 レイは今日一日、ずっと叫んでいた。


 そして夜。


 秘密の木片へ、震える字でこう書いた。


『本日のレイ、人生最高の日』


『パパ帰ってくるかもしれない』


『超嬉しい』


『のだぁ』


 最後だけ。


 文字ですら語彙が消えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ