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貴族しか魔法を使えない世界で、農奴の俺だけ土魔法が使えたので畑を耕していたら魔法学園へ強制入学させられることになった  作者: 雪だるま
第一章

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30 神官への感謝

 春の終わり頃。


 村の畑は以前よりかなり整っていた。


 石が減り。

 水路が通り。

 土も柔らかい。


 農奴たちですら実感している。


「最近、麦の育ち違うな……」

「レイの土いじりのせいだろ」

「もうあいつ半分畑の精霊だろ……」


 そんなことを言われ始めていた。


「のだっ♡」


 当のレイは超ご機嫌だった。


 現在八歳。


 泥だらけ。


 そして今日も畑を掘り返している。


「休ませるのだぁ♡」


 どごごごごごっ!!


 畑の一部をひっくり返す。


 すると近くで見ていた農奴が首を傾げた。


「そこ撒かねぇのか?」


「のだっ♡」


 レイは得意げに頷いた。


「休ませるのだぁ♡」


「休ませる?」


「うむ♡」


 レイはかなり真面目だった。


「ずっと使うと土が疲れるらしいのだぁ♡」


「…………」


 農奴たちが微妙な顔になる。


 そんな発想、この辺では珍しい。


 基本的に農奴は、

“使えるなら使う”

 である。


 土地を休ませる余裕などない。


「のだっ♡」


 しかしレイは最近、これを気に入っていた。


 理由は単純。


 教えてもらったからである。


「…………」


 数日前。


 村へ来ていた神官が、雑談のついでに教えたのだ。


『土地も疲れる』

『場所を変えろ』

『休ませろ』


 その神官は、神殿農園の管理経験があったらしい。


「のだぁ〜〜」


 レイはその話に妙に感動した。


 なにせ。


 土魔法持ちとして非常に興味深かった。


「土も疲れるのだぁ……」


 かなり真剣に考え込んでいた。


 そして。


「吾輩、今まで土を酷使してたのだぁ……」


 急に申し訳なくなった。


 完全に畑脳だった。


「のだっ♡」


 だから今日は、お礼をしに来たのである。


 しかも。


 かなり嬉しそうに。


「のだぁ〜♡」


 レイは両手で何かを抱えていた。


 長い布袋。


 しかも妙にもぞもぞ動く。


「…………」


 神官が嫌な予感を覚える。


「レイ」


「のだ?」


「それは何だ」


「お礼なのだっ♡」


 神官が固まる。


 レイは超笑顔だった。


「吾輩、狩ってきたのだぁ♡」


「狩った?」


「うむ♡」


 レイはかなり得意げだった。


「ターバンコブラなのだっ♡」


「…………」


 神官、沈黙。


 周囲の農奴たちも凍る。


 ターバンコブラ。


 この辺でも有名な危険生物だった。


 妙に素早い。

 毒が強い。

 しかも気性が荒い。


 農奴の子供が近づく生き物ではない。


「…………」


 神官がゆっくり聞いた。


「どうやって?」


「のだっ♡」


 レイは笑顔で説明した。


「土魔法で追い込んでぇ♡」


 どごごごごっ、と土壁を作り。


「土に沈めてぇ♡」


 逃げ道を塞ぎ。


「狩ったのだぁ♡」


「…………」


 完全に狩人だった。


 しかもかなり効率的。


 農奴たちがざわつく。


「怖ぇ……」

「蛇が可哀想になってきた……」


「のだっ♡」


 レイ本人は超ご機嫌だった。


「ありがとうございますのだぁ♡」


 そう言って。


 布袋を神官へ押し付けた。


「待て」


 神官が慌てる。


「生きているのか?」


「半分くらいなのだっ♡」


「半分?」


「元気なのだぁ♡」


 全然説明になってない。


 すると。


 しゃあああああっ!!


 布袋の中から威嚇音。


「…………」


 神官が本気で後ずさった。


 周囲の農奴たちも逃げる。


「出すな!!」

「こっち来るな!!」


「のだぁ?」


 レイはきょとんとしていた。


「美味しいのだぁ?」


「怖いんだよ!!」


 神官が珍しく大声を出した。


「毒蛇だぞ!!」


「のだっ♡」


 レイは得意げに頷く。


「だからお礼なのだぁ♡」


「いらん!!」


 即答だった。


 しかし。


 農奴たちはちょっとだけ羨ましそうだった。


「…………」


 ターバンコブラは危険だが、高級食材扱いされる地域もある。


 毒抜きは大変だが、肉は美味い。


 しかも皮も使える。


「のだぁ?」


 レイは首を傾げた。


「喜ぶと思ったのだぁ」


「気持ちは分かった!」


 神官は本気で疲れた顔をしていた。


「だが普通、子供がお礼に毒蛇を持ってくるな!!」


「のだぁ?」


 レイは本当に不思議そうだった。


「いっぱい頑張って狩ったのだぁ♡」


 そこだけは本当だった。


 実際かなり頑張ったのである。


 土を掘り。

 逃げ道を塞ぎ。

 ゴーレムまで投入した。


「…………」


 神官は頭を抱えた。


 この子供。


 どんどん強くなっている。


 なのに。


 行動原理が徹底的に農奴。


「のだっ♡」


 レイはさらに得意げに続けた。


「今度もっと大きいの狩るのだぁ♡」


「やめろ」


「なんでなのだぁ!?」


 周囲の農奴たちが笑い始める。


 怖い。

 変。

 でも妙に憎めない。


「…………」


 結局。


 神官は半泣きで蛇を受け取った。


 農奴たちは後でそれを捌いて食べた。


 そしてレイは。


「のだっ♡」


 かなり満足そうだった。


「良いことしたのだぁ♡」


 本人だけは、本気で善行だと思っていたのである。

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