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貴族しか魔法を使えない世界で、農奴の俺だけ土魔法が使えたので畑を耕していたら魔法学園へ強制入学させられることになった  作者: 雪だるま
第一章

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25 初めてのお金 

 初雪が降る少し前。


 村には冷たい風が吹いていた。


 農奴たちは皆、冬支度で忙しい。


 薪を積む。

 干し魚を吊るす。

 麦をしまう。


 冬を越えられるかどうかは、この時期で決まる。


「のだぁ〜」


 一方レイは。


 小屋の前で木を削っていた。


 最近は簡単な道具作りも覚え始めている。


 理由は単純。


 壊れるからである。


 農奴の道具は雑に使うとすぐ駄目になる。


「のだぁ……」


 真剣な顔で木片を削る。


 すると。


「レイ」


「のだ?」


 マリアが呼んだ。


 妙に真面目な顔だった。


「ちょっと来な」


「なんなのだぁ?」


 レイは首を傾げながら近づく。


 すると。


 マリアが、小さな布包みを差し出した。


「これ」


「のだ?」


 レイは受け取る。


 軽い。


 布を開く。


「…………」


 中には。


 小さな銅貨が数枚入っていた。


「…………」


 レイが固まる。


 数秒。


「のだぁあああああああああ!!!!」


 絶叫。


 ロイがびくっと飛び上がる。


「にいちゃん!?」


「のだぁああああ!!」


 レイは震えていた。


 両手で銅貨を持ちながら。


「これがお金のだぁあああああ!!」


 完全に感動している。


 マリアが少し吹き出しそうになる。


「そんなに驚くことかい」


「当然なのだぁ!!」


 レイは本気だった。


 農奴の子供は、基本的に現金を見る機会が少ない。


 税。

 借金。

 地主。


 金は全部大人が扱う。


 子供が自由に持つことなど滅多にない。


「のだぁ……」


 レイは銅貨をじっと見つめた。


 ぴかぴかではない。


 古い。

 少し汚れている。


 だが。


 妙に感動する。


「お金なのだぁ……」


 声が震えていた。


 完全に初ボーナスをもらった労働者みたいな顔である。


「最近いっぱい働いてただろ?」


 マリアは優しく言った。


「だから少しだけ」


「のだぁ……」


 レイはさらに感動した。


「吾輩、給料もらったのだぁ……」


「給料っていうか、お小遣いだけどね」


「のだぁぁぁ!!」


 レイは超嬉しそうだった。


 その場でぐるぐる回る。


「お金なのだぁ♡」


 ロイも覗き込んだ。


「おかね?」


「すごいのだぁ!!」


 レイは本気で興奮していた。


「これで色んなもの買えるのだぁ!!」


 すると。


 レイは急に真顔になった。


「…………」


 そして。


「よし!!」


 勢いよく立ち上がる。


「服に変えるのだぁ!!」


 マリアが一瞬固まった。


「服?」


「のだっ♡」


 レイはかなり真剣だった。


「吾輩、最近ちょっと大きくなったのだぁ♡」


 それは事実だった。


 七歳になり、以前よりかなり背が伸びている。


 そのせいで服が微妙に短い。


 しかも穴も増えてきた。


「だから新しい服買うのだぁ♡」


 かなり夢に満ちた顔である。


 しかし。


 マリアはなんとも言えない顔になった。


「…………」


 その額では足りない。


 普通に。


 農奴の服ですら。


「レイ」


「のだ?」


「そのお金じゃ服は買えないよ」


「…………」


 静寂。


「…………え?」


「布も高いんだ」


「…………」


 レイが固まる。


「…………」


 数秒後。


「のだぁああああああああ!!!!」


 大ショック。


「そんなぁあああああ!!」


 ロイがびっくりしている。


「に、にいちゃん?」


「お金なのにぃいいい!!」


 レイは本気でショックを受けていた。


「お金って何でも買えるんじゃないのだぁ!?」


「何でもは無理だよ」


「詐欺なのだぁ!!」


 完全に理不尽だった。


 マリアは笑いを堪える。


「服は高いんだよ」


「のだぁぁ……」


 レイはしょんぼりした。


 銅貨を見つめる。


 さっきまで輝いて見えたのに。


 急に小さく感じる。


「…………」


 しかし。


 数秒後。


 レイはまた復活した。


「のだっ♡」


「?」


「じゃあ食べ物買うのだぁ♡」


 単純だった。


「干し肉なのだぁ♡」


「全部使う気かい!?」


「お金なのだぁ♡」


 レイは妙に嬉しそうだった。


 自分で稼いだ感覚があるのである。


 最近かなり働いていた。


 畑。

 薪。

 魚。


 だからこの銅貨は、レイの中でかなり価値が大きかった。


「のだぁ〜♡」


 レイは銅貨を握りしめた。


 それから急に真顔になる。


「吾輩、将来いっぱいお金持ちになるのだぁ」


「へぇ?」


「服いっぱい買うのだぁ♡」


「何着欲しいんだい」


「三着」


「夢が小さいねぇ……」


 しかし農奴の子供としては十分大きい夢だった。


 三着もあればかなり裕福である。


「のだっ♡」


 レイは銅貨を大事そうに握りしめた。


 そして。


 その日の夜。


 秘密の木片へ、新しい詩を書いた。


『本日のレイ、ついにお金を獲得』


『超偉い』


『服は買えなかった』


『世の中厳しい』


 最後だけ妙に現実的だった。

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