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貴族しか魔法を使えない世界で、農奴の俺だけ土魔法が使えたので畑を耕していたら魔法学園へ強制入学させられることになった  作者: 雪だるま
第一章

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24 山賊被害の減少

 冬が近づくにつれて、村人たちは少しずつ気づき始めていた。


 ここ二年。


 妙に山賊被害が減っている。


「…………」


 以前は酷かった。


 冬前になると特に。


 食料を狙われる。

 薪を盗まれる。

 帰りの遅い農奴が殴られる。


 山道にはならず者が多かった。


 農奴は弱い。


 武器もない。

 金もない。

 だから狙いやすい。


「去年は荷車取られたからなぁ……」

「その前は羊盗まれた」

「うちの親戚なんて殴られてたぞ」


 そんな話は珍しくない。


 しかし。


 最近は違った。


「……あれ、そういや今年一回も来てねぇな」


「…………」


 村人たちは微妙な顔になる。


 理由を皆なんとなく理解しているからだ。


「のだぁあああああ!!!」


 遠くから怒鳴り声が聞こえた。


 見れば。


 レイが山道の近くで土ゴーレムを追い回していた。


「もっと速く走れなのだぁ!!」


 どごごごごごっ!!


 土が揺れる。


 ゴーレムが木をなぎ倒す。


 かなり危険な光景だった。


「…………」


 村人たちは無言になった。


 そりゃ山賊も減る。


 最近のレイは七歳になり、魔法の規模もかなり上がっている。


 特に土魔法は地形との相性が良すぎた。


 道を塞ぐ。

 土を盛り上げる。

 落とし穴を作る。


 しかも本人は、

“害獣対策”

 のつもりで山をうろうろしている。


「…………」


 以前、山賊の一団が夜中に村へ近づいたことがあった。


 しかし。


 翌朝。


 山道が全部盛り上がっていた。


 しかも。


 なぜかゴーレムの足跡まである。


「…………」


 山賊たちは逃げた。


 当然である。


 田舎の農村へ来たら、土の怪物が徘徊している。


 意味が分からない。


「のだっ♡」


 レイ本人は全く気づいていない。


「最近山静かなのだぁ♡」


 害獣が減ったくらいの認識だった。


 しかし農奴たちは普通に助かっていた。


 特に女たち。


 冬前の薪集めは危険だ。


 山賊。

 浮浪兵。

 酔っ払い。


 色々いる。


 だが最近は妙に安全だった。


「……レイが山歩き回ってるからじゃねぇか?」


「ありえるな……」


「山賊からしたら化け物だろ」


「…………」


 しかし。


 全員が感謝しているわけでもなかった。


「ふん……」


 井戸の近くで、中年男が舌打ちした。


「調子乗りやがって」


 名前はチャイ。


 村でも特にレイを嫌っている男だった。


 理由は単純。


 嫉妬である。


 レイが現れてから、村の空気は変わった。


 畑は良くなった。

 山賊は減った。

 食料も増えた。


 だから村人たちは少しずつレイへ頼るようになっている。


 それが気に入らない。


「ただの農奴のガキだろうが……」


 チャイは苛立っていた。


 しかも最近、地主家ですらレイを雑には扱わない。


 農奴の子供のくせに。


 そこも気に入らない。


「…………」


 一方で。


 助けられた側は普通に感謝していた。


「レイのおかげで畑かなり楽になった」

「今年は冬越せそうだ」

「薪も増えたしな」


 特に年寄りたちは実感が強い。


 腰を痛めている農奴にとって、石拾い軽減はかなり大きい。


「…………」


 しかし誰もレイへ直接、

“ありがとう”

 とはあまり言わない。


 農奴たちは不器用だ。


 あと少し怖い。


 なにせ怒ると地面が爆発する。


「のだぁあああ!!」


 その頃レイは。


 山でぷんすか怒っていた。


「害獣どもめぇええ!!」


 どうやら畑を荒らされたらしい。


 どごぉん!!


 土が爆ぜる。


「…………」


 遠くで見ていた農奴たちは、ちょっと安心していた。


 あれだけ騒いでいるうちは大丈夫だろう、と。


 妙に生活感があるからである。


「のだぁ!!」


 レイは本気で怒っていた。


「吾輩の麦を食べるななのだぁ!!」


 完全に農業脳だった。


 しかし。


 その姿を見ながら、年老いた農奴がぽつりと言った。


「……変な話だよな」


「何がだ?」


「魔法持ちなんて、本来俺らとは別世界の連中だ」


「…………」


「なのにあいつ、毎日泥だらけで麦の心配してる」


 周囲の農奴たちが少し黙る。


 それは確かにそうだった。


 普通の貴族魔法使いなら。


 畑など見ない。

 農奴と遊ばない。

 魚捕りで喜ばない。


 だがレイは違う。


「…………」


 すると。


 遠くからまた叫び声が響いた。


「のだぁあああ!!」


 レイが転んでいた。


 どうやら自分で作った土の壁へぶつかったらしい。


「いてぇのだぁ!!」


 完全にただの悪ガキだった。


「…………」


 農奴たちは思わず吹き出した。


 怖い。

 変。

 面倒。


 でも。


 最近の村が少しマシになっているのも事実だった。

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