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貴族しか魔法を使えない世界で、農奴の俺だけ土魔法が使えたので畑を耕していたら魔法学園へ強制入学させられることになった  作者: 雪だるま
第一章

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18 激怒するレイ

 夏の終わり。


 村の空気は湿っていた。


 畑には青臭い匂いが漂い、虫の声がうるさいほど響いている。


 そして。


「のだぁああああああ!!!!」


 村中にレイの怒声が響いた。


 農奴たちがぎょっとする。


「また始まったぞ」

「今度は何やったんだあいつ……」


 原因は、すぐ分かった。


 畑の真ん中で、レイがぶち切れていたのである。


 しかも泥だらけ。


 さらに頭には、なぜか葉っぱが刺さっていた。


「クソ害獣カレーじごく鳥めぇえええ!!」


 どごごごごごっ!!


 地面が盛り上がる。


 近くにいた農奴たちが慌てて離れる。


「また土が荒れるぞ!」

「誰か止めろ!」


 しかし誰も近づかない。


 最近のレイはかなり魔法が上達していた。


 以前みたいな暴走は減ったが、その代わり規模がでかい。


「のだぁあああ!!」


 レイは完全に激怒していた。


「夕食にしてやるのだぁああ!!」


 視線の先。


 畑の柵の上に、妙な鳥が止まっていた。


 全身が赤茶色。

 嘴が妙に長い。

 しかもやたら図太い。


 村では“カレーじごく鳥”と呼ばれている害鳥である。


 理由は臭い。


 こいつらは異様に刺激臭が強い。


 しかも畑を荒らし、服へ糞を落とし、食料を盗む。


 農奴たちからかなり嫌われていた。


「クソ鳥なのだぁああ!!」


 レイの服には、べったり鳥の糞がついていた。


 しかもよりによって今日の綺麗な服。


 と言っても“穴が少ない方の服”である。


 レイ的にはかなり重要だった。


「よくも吾輩の服にぃいいい!!」


 どごぉん!!


 土柱が突き上がる。


 しかし鳥はひょいっと飛ぶ。


「のだぁ!?」


 外した。


 すると。


 カァーッ!!


 鳥が挑発するように鳴いた。


「…………」


 レイの顔が真っ赤になる。


「人間の恐怖を思い知らせてやるのだぁあああ!!」


 完全に子供の喧嘩だった。


 農奴たちが遠くで頭を抱える。


「また始まった……」

「レイ怒ると長いんだよな……」


 一方。


 子供たちは妙に盛り上がっていた。


「頑張れレイ!」

「捕まえろー!」

「食っちまえ!!」


「のだっ♡」


 レイはさらにやる気を出した。


「任せるのだぁ♡」


 どごごごごごっ!!


 地面が波打つ。


 そして。


 土ゴーレムが現れた。


「うおおお!!」


 子供たちが歓声を上げる。


 最近ではすっかり見慣れてきていた。


 農奴の適応力は高い。


「捕獲部隊なのだぁああ!!」


 レイは超真剣だった。


 ゴーレムたちが鳥へ向かう。


 しかし。


 ばさばさっ。


 鳥は普通に飛ぶ。


「のだぁ!?」


 ゴーレム、届かない。


「飛ぶのズルいのだぁ!!」


 当然である。


 すると鳥は、今度は別の柵へ止まった。


 そして。


 ぼとっ。


「…………」


 また糞を落とした。


 しかも。


 今度はレイの頭だった。


 静寂。


「…………」


 レイが固まる。


 子供たちも固まる。


 農奴たちも固まる。


「…………」


 レイはゆっくり顔を上げた。


 頭から妙に臭う液体が垂れている。


「…………」


 数秒後。


「のだぁああああああああああ!!!!」


 大爆発。


 どごぉおおおおおん!!


 畑の端が吹き飛んだ。


「うわああ!!」

「レイが本気になった!!」


 農奴たちが逃げる。


 レイは半泣きだった。


「許さないのだぁあああ!!」


 完全に本気で怒っている。


「吾輩が何したって言うのだぁああ!!」


 鳥へ土塊を投げまくる。


 しかし当たらない。


 鳥、普通に速い。


「のだぁああ!!」


 さらにレイはゴーレムを増やした。


「包囲なのだぁ!!」


 どごごごごごっ!!


 小型ゴーレムたちがわらわら出現。


 かなり怖い光景である。


 しかしやってることは害鳥駆除だった。


「…………」


 農奴たちは遠くで微妙な顔をしていた。


 魔法。

 ゴーレム。

 土操作。


 本来なら貴族の戦争レベルの力である。


 なのに。


 用途が“鳥への復讐”。


「…………」


 すると。


 カレーじごく鳥がまた鳴いた。


 カァーッ!!


 完全に煽っている。


「のだぁあああ!!」


 レイは本気で泣きそうだった。


「絶対食うのだぁああ!!」


 すると。


 後ろからサモサの声がした。


「レイ」


「のだぁ!?」


「……頭」


「のだ?」


「鳥の糞ついたまま」


「のだぁあああああ!!」


 再び絶叫。


 子供たちが大爆笑した。


「ぎゃはははは!!」

「くっせぇ!!」


「笑うななのだぁああ!!」


 レイは川へ猛ダッシュした。


 完全に半泣き。


 後ろではゴーレムたちがまだ鳥を追いかけている。


 しかし。


 そのうち一体が転んで崩れた。


「のだぁ……」


 川で頭を洗いながら、レイはしょんぼりしていた。


「吾輩、今日ずっと酷い目に遭ってるのだぁ……」


 サモサは少し笑いを堪えながら座った。


「……でも、あの鳥、本当に嫌い」


「のだっ♡」


 レイは即座に復活した。


「そうなのだっ♡」


 単純である。


「一緒に食うのだぁ♡」


「それは嫌」


「なんでなのだぁ!?」


 夕陽の中。


 レイはまだぷんすか怒っていた。


 しかしその姿は、もう村の誰にも“恐ろしい魔法使い”には見えなかった。


 ただの。


 泥だらけで鳥に負けている悪ガキだった。

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