第十八話 ダメージジーンズ
「リヤ、やり過ぎだよ」
呆れた口調でキーツが言った。
「何が?」
「折らなくても」
「右手は撃ち抜いた。左の指は折った。これでアイツは引き金を引けない。代わりに命は助かる。最高かよ」
私は淡々と語った。
キーツはもう、その件には触れなくなった。
「今、何時だ?」
「十一時五十分です」
スマホを取り出して確認した。
「ギリだな」
私は少し急いで先の扉を開いた。
その先に、手錠で繋がれたオッサンが憔悴しきった様子で座っていた。
あれで間違いないだろう。
あの様子でニセモノなら、アカデミー賞だ。
「よっ、助けに来たぜ。代議士先生」
代議士は安堵の表情を浮かべて、目を細めた。
(どのみち死ぬんだけど)
結果が同じでも、こちら側としてはその場所が重要だった。
「リヤ、手錠どうしよう。撃ったら切れるかな」
「お前の寿命がな」
この至近距離は跳弾必至だ。
私はヘアピンを耳の後ろの髪から外すと、手錠の鍵穴に差し込んだ。
「出来るんですか?」
「警察のなら難しい」
「何か違うんですか?」
「ダブルロッ......おっ、外れた」
手錠が外れた代議士の手首は赤く擦れて、膿んでいる箇所もあった。
心なしか発熱もあるように感じた。
締め過ぎないダブルロックなら、こうはならなかったな。
(マズイな......マズイのか?)
「キーツ、ちょっと頼む」
私はキーツに代議士を預けると"本社"に電話を入れた。
「ああ、私。目標は確保したけど......ありゃ死ぬな」
「いや、多分だけど敗血症を起こしはじめてる」
「それでさ、これで死んだら私らのことは......あ、セーフ?うんうん、連れ帰ればセーフね、分かった」
私は通話を終えると二人に向き直って言った。
「肩を貸してやれ、帰るぞ」
そう言った瞬間——
破裂音と同時に私は倒れた。
「せっかくだから、帰る前におもてなしを受けてくれ」
背後から聞こえた声に振り向くと、銃を構えた男が数名立っていた。
「リヤ!!」
私の大腿部を見てキーツが叫んだ。
デニムは赤黒く濡れ、前後に穴が空いていた。
「弾は抜けてる、騒ぐな」
そう言って身体を起こすと、私を撃った男に向かって言った。
「丁度、ダメージジーンズが欲しかったんだ」




