第十七話 質草
扉を蹴破ると打ち合わせ通り、左右に分かれた。
キーツは指示通りT4Eを乱射している。
人質もお構い無しに撃つ様子に、傭兵達は代議士を守りながら応戦していた。
「これじゃぁどっちが悪役か分からんな」
私はそう言ったあと「どっちもか」と笑いながら引き金を引いた。
迂闊に近付いてきた左翼メンバーが、左目を無くすと同時に後頭部から色々と撒き散らした。
「あっ」
マズイ、キーツの弾が傭兵の一人に命中した。
ゴム弾がバレた。
死ぬほど痛いが、大抵死なないゴム弾。
「キーツ、イングラム!」
キーツに襲いかかろうとした二人の動きが一瞬止まった。
キーツがモタモタと持ち替えようとしているうちに、二人を射殺しながら言った。
「嘘だ、撃つな」
冗談じゃない、キーツに撃たせたら代議士が死ぬ。
「リヤ、酷いよ」
「悪りぃな。お詫びに代議士を救うヒーロー役は譲ってやるよ」
そう言ってもう一発撃った。
パンと乾いた音が響くと同時。
ゴム弾に悶絶する傭兵が、痛みから解放された。
(ひとり足りないな)
そう思った直後だった。
「リヤぁ」
情けない声が背後で聞こえた。
振り向くと銃を突きつけられて膝まづくキーツがいた。
「ああ、五人目いた」
ボヤきに近い言葉が漏れた。
「武器を置いて手を上げろ」
コイツは左翼メンバーか傭兵か?
傭兵なら私の頭か胸には、既に穴が空いているだろう。
それにしてもスーツまで着て人質に化けるなんて、手の込んだ真似をする。
「早くしろ。コイツを殺すぞ」
「殺してる間にお前が死ぬぞ」
私の言葉に一瞬怯んだ様子を見せた。
「代議士はどこだ」
「黙れ、コイツを殺すぞ」
銃口でキーツの頭を小突いた。
「質草に価値が無ければ値は付かないぜ。代議士なら、取り返す価値がある質草なんだがな」
そう言いながらごく自然に右腕を少し上げて、腰の高さでグロックを構えると引き金を引いた。
パラベラム弾は乾いた音を残して男の右手を撃ち抜いた。
キーツが這うように男から離れた。
それを見て私は男に駆け寄ると、銃口を突き付けて言った。
「質屋としては良い取引がしたいんだが、どうする?」
男は右手を庇っていた左手で奥の壁を指差した。
「壁じゃん」
「三回押すと開く」
「忍者屋敷かよ。キーツ!」
私の号令にキーツは走ると、壁を三回押した。
壁は上にスライドしてシャッターのように開くと、奥に通路が伸びていた。
「OK、良い取引だった」
そう言うと私は男の左手を取って、握手——ではなく、指を三本折った。
「利子だ、じゃぁな」
絶叫する男耳には、私の挨拶は届いていないようだった。




