コード92「準備はOK!」
第92話
前回、エリナが勝利してから
スタジアムの廊下にて。
試合が順調に進んでいる中、緊張で震えている人物がいた。
「ちょっと!リルフ!シャキッとしなさい!リルフも決勝ブロック、目指すんでしょう?」
リルフは緊張しすぎて、ケーシィの言葉に反応できなかった。
みんなすごいなぁ…
はぁぁぁ~~…僕、本選に来れたのも奇跡なのに
頑張れる気がしない…
そんなリルフに、みんながブレスレットをリルフに見せる。
「大丈夫!リルフ君なら、勝てるよ!応援してるよ!」
カナリーは励ます。
「リルフさんの魔術を見たことありますが、なかなかに強力です。自信を持つですよ。」
リベラは過去に共闘したことがある為、リルフの強さを知っている。
「ほら!しゃんとしなさい!リルフ!大丈夫ですわ。負けても、また次頑張ればいいんですのよ。その…負けたら、わたくしが昔みたいに撫で撫でしてあげますから…。」
ケーシィにとってリルフは幼なじみ。
励まし方が他と少し違って見える。
「な、撫で撫ではいいよ!昔にしてもらってたこと今してもらうのは流石に恥ずかしいよ!もう!」
リルフは自然と緊張が解けたことに気が付いた。
ケーシィに、みんなに感謝しないと。
「今ので緊張が無くなった。ありがとうケーシィ、みんな。行ってきます。」
リルフは廊下を歩き、スタジアム第4ブロックフィールドへ向かった。
フェニがケーシィへツンツンと突き、リルフについて聞いていた。
「リルフ君の事、好きなの?」
みんながあえて聞かなかった事をさらっとフェニが聞いてしまった。
「ん?好きですわよ?わたくしにとって大切な幼なじみですわ。もちろん、皆さんの事も大好きですわよ!」
ケーシィが勘違いしてくれていて良かったと皆が安堵する。
ケーシィは微笑みながらリルフの背中を見つめる。
わたくしの友は、そんなにやわではありませんわ。
「自然樹育魔術<スペル・植樹成長>!」
リルフは無事に1回戦を突破し、皆に手を振っている。
そんな様子をケーシィは誇らしそうに胸を張り、
「ふん!リルフなら当然ですわ!」
みんなでリルフの勝利を喜ぶ。
しかし、警備員がやってくる。
「こらこら、選手じゃない人達は戻ってね~。ここは関係者以外立ち入り禁止だから。」
マナは一礼をし、この場を後にする。
観客席に戻ってきた。席にはモニカやラトナスが居た。
2人で魔道具についての話題で盛り上がっていた。
「来ていらっしゃったのですね。」
モニカは学園の仕事を終わらせ、
ラトナスは魔道具店の注文を納品し、
応援に駆けつけてくれた。
「やっぱり、アンフィテアリーナは大きいね~。私がまだ人間だった頃はこんなに大きくなかったのに。増築されていったんだねぇ~。」
モニカは懐かしそうに話す。
ラトナスはどこか誇らしげに語り始めた。
「ふっふっふ。あたいん所の先輩ら皆が改修工事したんだよ~。すごいでしょ~!へへっ!」
魔工房ヘファストラは建物の工事なども請け負っているらしい。
主に、制作関係全てに関わっているのだろう。
マナは試合を観戦する。
8つのエリアに分かれており、それぞれで並行し試合が行われている。
(あれは…確かスペルマラソン1位の…ココロ様。どうしてかあの方が気になります。)
第1ブロック。リーナの居るブロックである。
アナウンス席に居る、レイラが席を立ち、驚いている。
「まさか…いえ…でも。あの立ち振る舞い…。」
隣に居るラフィーは何を言っているのかさっぱり分からない様子で聞いていた。
第1ブロック
ココロvsアラン
「きゃ~!アラン様ぁ~!こっち見て~!」
観客席の女性陣がアランと呼ばれる男性に向けて声援を送っている。
金髪、碧眼、そして何より顔が良い。イケメンである。
一応、実力者であり、剣と魔術を上手く駆使して戦う
魔術剣士である。
「さて、ココロ君と言ったかな。僕といざ尋常に勝負してもらうよ。準備は良いかな?」
アランは髪をかき上げながら、自信ありげにココロに向かって問いかける。
ココロは無言でアランの方を見ずに、第8ブロックの方を見ている。
顔はフルフェイスの仮面に覆われ、フードを被っており、
男なのか女なのか分からない。
仮面の奥では、目を細めていた。
それは笑っているのか、それとも。
アランが剣を構える。
「いつも女性達は僕にメロメロだったけど、無視されることなんて今までにあまりないよ。でも、そんな君を振り向かせてみたい…。さあ、やろう…ガッ!」
ブザーが鳴ったと同時に、アランが後ろに倒れ、鼻血を出し、気を失った。
「おぉっと~!?第1ブロック~!ココロ選手vsアラン選手で大きな動きがありました!毎年のように本選へ出ていたアラン選手!女性人気もあった彼!とにかく顔が良いあのアラン選手が一瞬でやられてしまったぁっ~!これはどういうことか!レイラ先輩、見えましたか?あれ?レイラ先輩?」
レイラは固まって、ココロという人物を見る。
(あれは…あの光は…いえ、でもそうとしか考えられない…。)
「あ、失礼しました。私には見えました。えぇ、メガネを変えましたので。」
メガネをくいっと持ち上げながらレイラは言う。
だが、答えは言わなかった。
「レイラ先輩は分かっていそうですけど、我々には何が起こったのか見えませんでした!なんという早業でしょう!これはココロ選手、優勝候補か~!?」
ココロはずっと第8ブロックを見ていた。
そんなココロをマナは見つめる。
(あれは…あの力は…。一瞬過ぎましたが、あれは…)
マナはココロを見つめる。
ココロは第8ブロックを見つめる。
第8ブロック、トーナメント
カナリーの入場。
スタジアムの一部で歓声が上がる。
「あ!あの子!俺と同い年なんだぜ!この間、助けてもらったんだ!」
「あ!カナリー・アステライト様ですわ!聞いてくださる?つい先日、困っているところに助けていただいたんですの。」
「ふっふっふ。あの娘はうちの生徒です。この前、講義の手伝いをしてくれてね、本当にいい娘なんです。」
「あの子のファンクラブがあるらしいよ。本人には知らせてないんだってさ。」
「あ~確か入試の時の。うちも知ってるよ。秘かに応援してんだ。」
カナリーはいつものケープ姿で歩く。
控室でココロの顔が上がり、スクリーン見つめ手を伸ばす。
「やっと…。」
レイラがまた席を立ちあがり驚く。今度は声も出ない様子だった。
「レイラ先輩またですか~!?どうしちゃったんですか?全くもう。」
「よーし!準備はOK!頑張るよ~!」
カナリーは準備万端で、入場する。
第8ブロック、カナリー・アステライト。
第1試合、開始。
ココロ
謎の人物。そして、レイラが驚いていた理由とは。
少しずつ明かされていきます。
夏の大祭編も盛り上がってきましたね。
第92話、読んでいただきありがとうございます。