コード299「紫青を貫くは青白い浄化の雨」
第299話
前回、リーナ達がルイナと合流して
「半分は正解だが、半分は違うね。まあこんな状況だ。さっさと伝えるとするよ。ナカのスキルをリーナの弾丸に付与させ、浄化の弾幕で潰す。これが最適だろうとボクは考えた」
ルイナはジェスチャーを交えて話す。
ソリナメンバーはそれを聞きながら、作戦の概要を整理しようとしていた。
「それは分かったけど、何度も言うようで悪いが、上手く行く保証はあるのか?」
天音ユウリは疑り深くなっている。
ルイナはカナリーのフリをして、ソリナに入っていた。信用しろと言う方が難しいの分かる。分かっている。
「……でも、今は信じたいです。ユウリさんが信じなくても良い。いえ、疑っててくれるおかげで私が心置きなく信じられるから。私はルイナさんを信じます。……ぐっ……うっ……」
ナカがルイナに近付こうとした時、膝が折れた。まだ、大砂漠での時の魔力が馴染んでいない。
「おっと、大丈夫かい、アイトリ・ナカ。今の私の幻術なら多少なら、紛らわせられるだろう。落ち着いて、息を吸って、吐いて。大丈夫だ。身を任せて信じてくれたお礼だ」
温かくて、優しい。少しだけ気が紛れて、落ち着ける。
「……すぅ~、はぁ……ありがとうございます、ルイナさん。少しだけ落ち着きました」
黒見藍がナカの手を掴み、背中をさすり、ヒールをかけていた。
「すみません……私達が無茶をさせてしまったから……」
「それは違います! 今回だって、私が勝手についてきただけですから。無茶だなんて言わないでください。皆さんの役に立てるのが嬉しいんですから。そんな事言わないでください。でも、ありがとうございます。しんどくなったら、少し休みますね」
(あぁ……ナカさんはこういう人だった。他人の事を考えて、自分のことを後回しにする癖がある。心配になるほどだ。どう言っても……負けず嫌いなんだなぁ……それに、素直に受け止めて、誰も悪くないような言い回しをしてくれる。本当に優しい人だ)
「……ナカさんには本当に敵いませんね。見た目からは想像が出来ないほど、大人ですね」
ナカはそれを聞いて、ふっと笑い、俯き、地平線を見つめた。
「……買い被りすぎです。でも……そうですね、これはただの真似っ子なんですよ。私にとっての、親代わりのあの人の」
――大切な人の真似をしているだけ。私を大切に想ってくれた人の。相手のことを思い、自分のことを少し疎かにしちゃって、それでいて温かい人の。
ナカは手を胸に置き、何かを思い出しているようだった。それを知る人物は誰も居ないが、黒星の鍵杖は何かを感じ取っている様子だった。
「とにかく、ナカちゃんと一緒にあの龍を倒せばいいんだよね? それなら少し待ってね。こっちも準備が必要だから! えぇと……ハネジマさん? ここ、お願いしても良い?」
「はい! 大丈夫です! こっちは私に任せて!」
リーナはザミエルと脳内会議を行う。
(ザミエル、他人の術を付与って出来る? 今までやった事あったっけ? 武装強化はした事あったけど、弾丸に付与だなんてした事無いよね……出来るか不安なんだけど、どう?)
(……正直に言うと、分からないが、恐らく出来ると思う。その術式を俺が読み解いて俺達用に書き直せば問題ないだろうから。ただ、あまりにも見たことのない術式だったなら、難しいかもな。まあやってみる価値はある。それにもし無理だったなら、ドでかいやつぶっ放せば風穴開けられるだろうからな)
リーナの脳内会議が終わり、ナカと打ち合わせをする。
「浄化系の術、多分だけど、行けると思うよ。ただ、時間がかかるだろうから、みんなは援護して貰わなくちゃダメだと思う」
「術……、あの、術と言うか、スキルなんですけど……」
ナカの浄化系は、<スキル・デトックス>。つまり術ではなく、スキルだ。そこの勘違いをリーナはしていた。
「”マスター。その事についてなら、私がサポート致します。<スキル・デトックス>をこの世界の魔術体系に書き直します。そうすれば、恐らく行けるでしょう。今すぐ始めます”」
黒星の鍵杖は新たなオリジナル魔術を創ると言い出すと、内部で何かが回転する音が響く。まるで、PCが熱を持ち、ファンが回っているかのような。
そうしていると、紫青龍が攻撃を開始してくる。
「<スキル・プロテクトベール>! 皆さんは私がお守りしますわ!」
笠井澪が咄嗟に防御に成功し、それを補助するようにルイナも魔力膜を張る。
「奴に攻撃の隙を与えるな!!はぁっ!!」
天音ユウリによる勇者魔力を纏った斬撃が紫青龍を襲う。
「なるほど、私達で露払いをすれば良いのだな。月見里先生、強化を。行ってくる」
宮本夢月が刀を抜きながら、静かに歩き始める。コートの下にはセーラー服がちらりと覗き、紫青龍へ向けて、ジャンプした。
「夜天二風流 <スキル・青爪狼>……!!」
「<スキル・強化の書>! ストリングス!」
宮本夢月の斬撃が紫青龍を襲う。そのまま紫青龍の体を蹴り、列車へ着地する。鱗が剥がれる。
「<スキル・アローボム>!」
矢が刺さった場所が爆発する。それなりのダメージにはなったらしい。
その頃、ホバーボードに乗っていたコールとウミューシーが魔物達を蹴散らしてこちらに飛び乗ってきた。
「お手伝いありがとうございました。ウミューシーさん。こっちは終わりました。そちら、手伝います!」
「グォォォォォォォ!!!」
その時、紫青龍が咆哮すると、青カビが大量に噴射される。列車に関しては、全員で防御をしていたから守れたものの、紫青龍はまだ元気だった。
「ザミエル、ヌーマイト、私達も準備するよ。もう一度……! ブラック・カイマン-ネスト-!」
ここは岩石地帯である為、ヌーマイトが先ほどよりもさらに多くの岩石を纏い、機関銃が出来上がった。
先ほどの咆哮により、魔物達がまた沸いてきた。
「こいつらは俺達に任せろ! マスケッツァー部隊、撃てぇぇ!!」
ドワーフ達のマスケッツァー部隊が魔物らを蹴散らしていく。ウーズやローン達も必死に魔物へ攻撃を行っていた。少し前の酔っぱらった状態とは大違いだった。それを見たルイナがニヤリと笑う。彼女が死体を幻術で作り出していた。彼女がやった事は結果的に良い方向へ進むことが出来た。
「コルダ・カデンツァステージシフトアップ。ノーチェ! お願いします!」
("了解。認証開始。アーマー、コルダ・カデンツァ、ステージ2。出力制限を解除します)
コールが自身の武装制限を解除する。
「モード・オルガノン!!フルサウンズ!!」
高出力電磁波が発生し、魔物達が簡単に一掃される。コールのアーマーから蒸気が出て冷却される。
紫青龍が列車へ直接攻撃を行ってくる。毒々しい見た目の尻尾が列車へ振り下ろされようとしていた。
「やばっ……! 間に合わな……」
ウミューシーが全身でその尻尾の軌道を逸らす。
「私に毒は効かない!! みんなが一致団結して、頑張ってるんだよ!! 邪魔をするなーーっっ!!」
「シーアーマーtypeマンティス起動っ!! 魔力注入!! 水鎧圧魔術<スペル・水蝦砕>!!!」
紫青龍の鱗に隙間が出来るほどの風圧の拳が炸裂する。だが、ウミューシーの腕の骨が折れる。
「うぅっ……!! リーナ!! 今だよ! 追撃を!!!」
アイトリ・ナカが目を開き、黒星の鍵杖も準備が出来た。
「リーナさん!! その銃に黒星の鍵杖を接続します!! 術式変換はこちらに任せてください! リーナさん達はぶっ放すだけです!」
機関銃が回転を始め、青白い光がチャージを始める。
だが、紫青龍が口を開け、ブレスを放つ。
「黒見!! 私らでアレを止める!! <スキル・ブレイブスラッシャー>!」
「はい!! <スキル・トラジェクトリィ>!!」
黒見藍と天音ユウリの二人の斬撃攻撃により、紫青龍のブレスが相殺される。
「ふぅ~~……これで終わり!!! 連射浄化魔弾魔術<スペル・魔弾蒼雨>!!」
機関銃の前に円形のゲートが出現し、そこを一発の弾丸が通過すると、無数の雨のような弾幕が横殴りに紫青龍へと向かい、後ろの岩山の一部が削り取られるほどだった。それは、数十秒続いた。
「……やったか?土煙で何も見えねぇが……」
土煙が晴れると、そこに紫青龍の亡骸が横たわっていた。冒険者達の歓喜の声が響き渡る。
「やっとあの凶悪な龍を倒せたな! 帰ったら、宴会でもやろうぜ! 冒険者組合からの報奨金は割とあるんだろうなぁ!」
("マスター!! 大きな生体反応を確認!!! 今すぐ……")
月夜の静寂が壊れたのは一瞬だった。岩山が切断され、そこに現れたのは、薄青色のキノコ傘を被ったまるで見た目が魔女のような魔物がそこに立っている。手には、ごつごつとしたキノコのような硬そうな剣が握られている。
("膨大な魔力反応を検知! 解析の結果、あの個体が紫青龍の本体のようです。まだ完全な目覚めではない模様。今討伐する事を推奨します!!")
ルイナの脳内、ナハトがいち早くその事実に気が付き、ルイナは誰よりも速く動く。
「魔光之幻魔術<スペル……!」
一刀両断。
一閃だけで岩山が吹き飛ぶ。その姿はまるで、魔剣ノ魔女のようだった。
紫青龍レイド戦、無事に終わりましたね。ただ、その後に現れた謎のキノコの魔物。
圧倒的な力を見せるその姿はベアトリクスのようであった。
一体どうなってしまうのか。果たして、その魔物には勝てるのだろうか。
第299話、読んでいただきありがとうございます。
次回、300話となります。いつもご愛読いただきありがとうございます!
ここまで続けられるのもひとえに読者の皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!




