コード290「ウミューのそれは意地悪だよ!」
第290話
前回、リーナ達がソリナと出会って
それぞれの視線が交差する。リーナはナカを見つめ、ナカはリーナを見つめ返しながら首をかしげる。他のソリナメンバーはそんな二人を見比べるように視線を移していた。
(いや……見た目似てるけど、違う。あの人はこんなに小さくなかった……妹?いやでも、お姉さんとカナリーさんの二人だけって聞いてるし……隠し子?有り得ない……ご両親は確か魔術大戦の時に……じゃあ、えっと、どういう事?赤の他人?)
リーナの中で思考が巡り、似た他人かもしれないという事実が残った。そう思うと、突然扉を開け、大声を出してしまった自分がとてつもなく恥ずかしくなってきた。冷や汗が流れる。
「あ……えっと、知り合いに似ていて、凄く……それで動揺してしまって、ごめんなさい!」
リーナは恥ずかしくなったのか、頬を赤らめたまま自分たちの部屋に駆け込んだ。ウミューシーはどうすれば良いのか分からず会釈だけしてその場を後にする。
「……なんだったんでしょうか?」
「さぁ? でも、カナリーさんの知り合いなのかな? あとで聞いてみる? 今、散歩しに行ってると思うから、帰って来てからにはなるけど」
「あとで聞いてみましょうか。それよりも、宮本さん! タオルの件、まだ終わってませんよ!」
部屋に駆け込んだリーナは息を整えていた。あとから、ウミューシーが追いかけて来た。
「リーナ、さっきの子、確かに似てたね。でも、らしくないよ。いつもクールなあなたがあんな顔するなんて~」
リーナは両頬に自分の手を当てて、頬が熱いのを隠していた。
「やっ、ちがっ……これは、その……本当にそうかもって思っちゃったから……動揺したっていうか……ていうか、ウミューのそれは意地悪だよ!」
そう言うリーナはまるで恋する乙女のような表情であった。恥ずかしそうなリーナがとてもかわいい。
二人は温泉に入る前に、クエストの概要に目を通し、装備の点検を行うことにした。手先やら、何やら汚れる前に済ませておきたかったからだ。
「ふふっ、ごめんごめん。仲直りの印にクエストの概要、一緒に読もう~」
「まったく……調子良いんだから」
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『第三次 ステーション・アイゼンヴルグ奪還作戦 概要』
【基本情報】
作戦決行日:輝鳥歴224年 12ムーン15ピリオド~
集合場所:グレイロック・バレー メインステーション
推奨規模:20名以上
参加資格:シルバーランク以上の冒険者、または調査員
【作戦目的】
最優先目標:ステーション・アイゼンヴルグ(以下、駅舎)の奪還、および「紫青龍」の討伐または排除。
補足:本作戦の本質は駅舎の奪還であり、周辺の魔物掃討は副次目標とする。
【作戦概要】
移動、攻撃手段:旧モデルを改造した「改造魔列車」を運用する。作戦時は駅舎の視認範囲を旋回し、車内からの遠隔攻撃、または「紫青龍」への直接アプローチを試みるものとする。
作戦行動の一任:アプローチおよび戦闘方法は各参加者の裁量に一任する。なお、改造魔列車は作戦中に大破・損失しても支障ないものとする。
残党処理について:参加者の安全確保および疲弊防止の観点から、周囲の魔物残党は掃討対象外とする。後日、別途クエスト発行予定。ただし、余力のある者が自主的に掃討を行うことは制限しないが、すべて自己責任とする。
【帰還規定】
目的達成(駅舎の安全確保)が確認され次第、各参加者は速やかに帰還することを強く推奨する。
【発行元】
作戦立案:冒険者組合 / 世界輝鳥自遊調査局・ソリナ(二機関共同立案)
発行日:輝鳥歴224年 12ムーン3ピリオド
管轄:冒険者組合 グレイロック・バレー支部
―――
二人はこのクエスト内容を見て、割と大がかりであると改めて思う。30名以上もの冒険者が明後日に集まる事になる。
「ねぇ、リーナ。さっき扉を開けた時にちらっと見えたあの白のコート。あれ、ソリナって組織のやつだよ。エンブレムが確かそう。新聞に載ってたでしょう。それがちらっと薄っすら見えた」
ソリナ。世界輝鳥自遊調査局。世界中のどんな場所にも赴くことが出来、調査、介入が許されている機関であると記憶している。
「つまり、今回のクエストも調査……いや、解決の為に来てるって事? あんな子供達が……あ、勇者なんだっけ。私達が大噴海で飛ばされてから来たっていう。なるほどね……」
星鳥学園女子中等部の名の通り、彼女達は14歳かもしくは15歳になる。リーナは現在16歳。星鳥学園の子達はリーナと近いながらも年下であり、まだあどけなさを残している。逆にリーナは16歳とは思えないほどの貫禄を放っていた。さっきの慌てぶり以外の場では。
「クエストに参加するのはなんとなくわかるけど、数が多くなると面倒だよね。だって、紫青龍がもし、本当にメイスィだった場合……、彼女らや他の冒険者達を説得させないといけないんだから。あぁ……こういう時、マナさんが居てくれたらな……今、別のところで手が離せないって……何してるんだろう」
リーナは銃の手入れをしながら部屋の備え付けの机の上に弾丸など、装備の点検を行っていた。
「さぁ?あの人……何考えてるか表情で読めないっていうか、あの人っていうか、あの子って言うか……不思議だよねぇ~。私の方が年上なのに、たまにマナさんって呼びそうになるんだよね~」
ウミューシーもまた、彼女のガントレットを点検している。大噴海が起こる前、ケーシィに貸したアーマー・マンティス。酷く壊れてしまったが、片方のみまだ使用可能であり、現在のウミューシーのメイン防具である。機能を全開にはできないが、防具としてなら上手く使えるだろう。
リーナの体の中から小さな黒い塊が飛び出てきて、ボーイッシュな小さな体に変化する。ザミエルだ。
「ところでさ、二人ともちゃんと人数の把握は出来てるのかよ。クエストは明後日なんだろ?初めて会うような奴らとちゃんと連携取れるんだろうな?」
ごもっともな意見だ。同じ冒険者であっても、戦い方がまるで違う。猪突猛進に進むような奴も居れば、戦術を駆使し盤面を整えて戦う奴もいる。
「それについては大丈夫だよ。シルバーランク以上の冒険者なら、みんな合わせられる。ブロンズ帯じゃないんだから。ソロでクエストに挑めるのならみんなそうしてるし、ちゃんと調査あって、クエストが大規模に発行されてる。今回は30人以上も居るし、ちゃんと集まるって言っても、武具の点検やら何やらあるだろうから、多分当日に顔合わせがあると思う。それに……」
今回のクエストでは魔列車に乗りながらの戦いになる。降りる事も想定されるかもしれないが、恐らく、走ったままになるだろうと予測される。その理由として、全世界に普及されたある武器の存在が大きい。
「装填式中距離小銃・マスケッツァー……ね。私の以前持ってた銃を皆持ってる。みんなこれで魔列車の中から魔物に向けて撃ち込むんだと思うよ。武器に拘りがある人も居るかもだけど、今のブームはあの銃だろうし」
世界会議で決まった魔物対策の一つに、銃器量産がある。これのおかげで魔術が使えないものや弓矢が苦手な者でも割と安全圏内から魔物、魔獣に攻撃する事が可能となっている。人に向けて撃つなんて論外ではあるが、その為のセーフティとして、空気弾モードなんて機能があるらしい。曰く、空気を圧縮した弾丸であり、殴られるような痛みとの事。
「あぁ~、あれね。ちな、私も持ってる~。小型のやつだけど。なんか長いやつ使いにくくてさぁ。ま、私どっちかって言うと、近距離型だし~?」
そう言うと、ウミューシーは拳銃型を構える。なかなか様になっている。流石は元警察官と言ったところ。まあこの世界にそう言った概念が無いのだが。
「そうか。ま、俺の魔弾には劣るだろうがな。それでも心配なんだよ。大人数なら尚更、誤射も完全に無いとも言い切れねぇんだし。当日は俺も目、光らせてるから、頼ってくれよ」
「ありがとう、ザミエル。頼りにしてる。でも、私には短期予報もあるから、ある程度なら平気だよ。それじゃ、ウミュー、明日は魔列車を見に行こうよ。私らを守ってくれるのか、それとも、私らの死体を運ぶ棺桶になるのかさ」
「そんな縁起でもない事言わないでよね~。棺桶って趣味最悪~。まったくさぁ、リーナってたまにそういうところあるよね~」
リーナはかつての過去を思い出してしまう。諜報機関ルナリアに居た頃。汚い手を使ったりだとか。まあ誰かを殺した事なんてないから、その点、完全に手を汚したかと言われれば違うのだが、それでも、ウミューシーにこの事実を言えずにいた。言えなかった。当たり前だ。彼女は海術警察復帰を目指している。
元々ルナリアに居ただとか、犯罪組織に手を貸していたなんて言ったら、なんて言われるか。それよりも、ウミューになんて思われるか、それが不安だった。怖い。だから、言えないんだ。
「……ごめんね。流石に言い方悪かったかも。とりあえず当日は頑張ろ。まずは明日、念のために魔列車を見に行こうよ。んーっ、これだけ終わったら、ご飯食べた後……お風呂入りたいかも」
装備の点検を無事に終わり、ザミエルやヌーマイトにも声をかける。
「今日もお疲れ様。当日もよろしくね」
「よーしっ、それじゃあ、ご飯食べに行ったら温泉に行こ! リーナ!」
ステーション・アイゼンヴルグ奪還作戦の概要が出てきましたね。
今回の作戦、かなりの大がかりな作戦だということが分かります。それほど、ステーション・アイゼンヴルグが重要な場所だという事が良く分かりますね。
装填式中距離小銃・マスケッツァー
アルマゲスタ世界会議で決まったアネモドール産の小銃となります。
リーナが初期に持っていたマスケット銃と形状がほとんど同じになりますね。
ただ、リロードに時間がかかってしまうという欠点はありますが、弓矢に比べて攻撃力に優れています。
第290話、読んでいただきありがとうございます。




