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『幾星霜のソムニア -私とAIの異世界転生!-』  作者: 星廻 月華
【勇者編:アイゼンヴルグ章】
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コード288「狙撃手と海人種の向かう先」

第288話

前回、ハイブヘイヴン編が終わり

 輝鳥歴224年 冬12ムーン 某所にて


「はぁ……はぁ……!走って~。八つ裂きにされるよ~」


 森の中を走り抜けながら、もう一人の仲間を案じながらも、まあ、この人なら多分大丈夫だろうという気持ちがどこかにはあった。地上は若干不利だけど、苦手と言われるとそうでもない。


「……分かってるよ。そっちこそ、息切れしてるよ。大丈夫? 手、貸そうか?」


 もう一人の少女は軽やかに走りながら、四足歩行魔獣を背に逃げ、そして、巨木を狙撃する。薬莢(やっきょう)が回転しながら空を舞っている。

 大きな音と共に、大きな木の枝が魔獣の頭上へその質量が落下し、脳震盪を起こしていた。


 ふぅ……と深呼吸をし、狙いを定める。そこにスコープはない。だが、彼女は百発百中の狙撃手だ。

 それは一発だった。魔獣の心臓を捉え、敵は沈黙する。


「お疲れ様~。流石はリーナだね~」


 フードから露わになるのは、桃色の髪に、桃色の瞳を持つ狙撃手の少女リーナ。


「あなたが引き付けてくれたから楽に倒せた。ありがとう。ウミュー」


 リーナ・カミンタフと共に行動をしているのは、かつてアトラベルトで会った女性警察官。ウミューシー・ブルービー。海人種であるが、地上でも問題なく活動が可能であり、海人種だと言われなければ、人間種かどうか見分けがつかない。


 彼女の首筋にエラのような器官がある為、海の中でも魚と同じように活動が可能らしい。ただ、髪の毛で隠れているからか、人間種とほとんど見分けがつかないと言う事だ。その他にも特徴としては、服の中にヒレや尻尾のような器官があるらしいが、隠しているとの事。また、髪の毛にも触手のようなものがあるが上手く擬態させている。


 ウミューシー曰く、

「海人種は差別をよく受けて来たから無意識に隠してしまうものなんだよね」

 なのだと言う。リーナはまったく気にしていなかった。


「ま、別にいいよ。私は別に気にしてないし。今は一緒に行動してるし、私、気になったらちゃんと言うから。それに、見た目だけで何か言うつもりなんて無いし、言ってくる奴なんか無視すればいいんだよ」


「うん……すごく助かる。ありがとう」


 というわけで今は2人で行動しているようだ。ウミューシーはアトラベルトに戻っても良かったのだが、空感ノ大魔女が現れた事と、アトラベルトの息苦しさから解放されたかったこともあり、今はなんとなくの旅を続けて同行している。


「私は帰ったら始末書を書かされるんだろうけどね~。でも、今は貴方達の事情の方が気になる。帰るのは全部終わってからでもいいからね」

(それに今は、先輩を探さなくちゃだし。警察を続けられるかどうかも分かんないから……)


 そんなわけで、彼女達が今居る地点は、ロードベルトから西北に位置している都市も街も無い場所である。


 リーナ&ウミューシーの2人は冒険者登録をし、クエストをこなしながらカナリーの情報収集をしているところだった。


「そう言えば、マナさんから手紙が届いてた。内容は、『岩盤地帯にある重要な駅舎に、紫青龍(しせいりゅう)なるドラゴンが出現し、冒険者組合としては駅舎を奪還したいとの事。それの討伐隊が近々結成されるそうなので、リーナ様とウミューシー様は現場に向かってください。理由は……』……理由は、そのドラゴンがもしかしたら、メイスィ・サーヴィリア様かもしれないとの事。ま、それなら行かないとね~。あの子、確か……手紙の内容的に龍人種だったよね。なんで占拠してるのか知らないけど、討伐される前に保護しないとだよね」



「うん、あの事件で龍人種になったらしい。手紙でお願いしてきてるって事はマナさんは来れないみたいだし、多分、グラシーも来れないだろうから、私達で止めるしかないかもね。止められるか分かんないけど。ウミュー、やれる?」


 ちなみに、リーナはグラシーとも合流済みであったが、今現在は別地域にて、マナからのお願いを聞いているところである。

 その為、今ここにはいないこととなっている。


「もちろん大丈夫~。リーナを頼りにしてるからね~」


「調子の良い人だこと。ウミューの事も頼りにしてるからね」


 リーナとウミューシー、最初は全く息が合わずに連携も取れていなかった。だが、数ヶ月も一緒に居れば、話も変わってくる。

 リーナはウミューシーの事を、『ウミュー』と短縮して呼ぶようになり、ウミューシーもリーナに敬語ではなく、タメ口を交えて話せるようになっていた。


 そんな2人、中央大陸から西北西に位置する街グレイロック・バレーに赴いていた。紫青龍(しせいりゅう)が居座っているのは、ステーション・アイゼンヴルグ。

 大きな鉱山が近くにあり、ここを占拠されていると、鉱山採掘が止まってしまうとの事だった。街は目の前だ。


 グレイロック・バレー

 かつて、ここは岩場だったらしいが、過去に何かがあって、えぐられ出来た巨大な峡谷である。

 峡谷名がそのまま街の名前になっており、峡谷の底にある街である。


 グレイロック・バレーに入るには3つの手段がある。

 その1、魔列車を使っての入国。こちらは、魔術大教会ギルドが管理しており、監視の目がある。

 その2、徒歩での入国。こちらは門番に自身の身分証明出来るもの、例えば、冒険者登録証を見せれば、通行料無しで問題なく入国が可能となっている。

 その3、勝手に入る。だが、これは不可能に近い。何故なら、入る手段が門もしくは魔列車に限られている為、上から険しい岩場を飛び移って入ろうとするのは自殺行為に近いからだ。ただ、不可能に近いと言うだけで、可能ではある。


 2人は大魔女に見つかりたくないという気持ちから、魔列車を使わない徒歩ルートを選んだ。その為、旧街道を使い、門を通る形でのグレイロック・バレーに入国する事となる。大魔女の監視を切れるかどうかは二人とも不安は残るが。


 上を見上げれば、魔列車が音を立てながら、岩を削り取った線路を進んでいるのが見える。


「……贅沢だよねぇ。あっちなら、まったりしてる間に着いてるんだろうな~」


「そんな贅沢な事、言わないの。歩いて行こうって決めたでしょ? ほら、入り口が見えて来た。行くよ」

 ちなみに、魔弾の悪魔こと、ザミエルとリーナの獣魔、魔黒石獣(ヌーマイト)は今はリーナの中で潜み休みながら彼女を支えている。


 リーナは高架を走る列車の光から目を逸らすように、断崖を強引に穿った巨大なトンネルへと歩を進めた。


 トンネルを抜け、重厚な扉を抜ければ、灰色の岩と湯煙が支配する街、グレイロック・バレーだ。

新章グレイロック・バレー編始まります。

勇者一行視点から変わり、リーナ&ウミューシー視点。


グレイロック・バレー。

今回の舞台。ロードベルトから西北西地点にある地点の小国となっています。

軽く説明すると、ロードベルトから西北西に位置してある峡谷の下にある国であり、歴史深い国です。


第288話、読んでいただきありがとうございます。

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