コード287「天に昇りゆく泡」
第287話
前回、ハイブヘイヴンの過去話が終わり
輝鳥歴224年
レオノーラはハイブヘイヴンの病室から外を見ていた。
シスターが悪魔に体を乗っ取られるなんて前代未聞。大失態だ。
私は……街をみんなを……妹を傷付けた。許されない事をした。
もちろん、断罪を求めたのだが女王様は私を許した。
話に聞くと、今回の出来事は五天柱、一柱様が解決してくださったと聞く。
病室にミアリーゼや同僚、友人が沢山見舞いに来てくれていた。
「お姉様、お身体の方は大丈夫でしょうか?こちら、果物を頂きました。」
ミアリーゼがリンゴの皮を慣れた手つきで剥いてくれる。
不甲斐ない。こんな事で五天柱の三柱だと言えるのだろうか。
ミアリーゼの他にもソリナメンバーが見舞いに来てくれており、
事件の事をレオノーラから聞きたいようだが、今は安静を優先してくれているのか、
無理に聞き出そうとはしていなかった。
天守評議会の連中は毎日毎晩のようにやって来ており、
それに困っていると、病院の看護師達が
「まだ療養中ですので!面会時間はもう過ぎてます!」
等と言ってくれて、評議会連中が揃って帰っていく。
まあ、レオノーラもそこの所属でもあるから
なんとも言えない気分になるのだと言う。
何も夜中に来なくてもと思うのだが。
今はミアリーゼ達がお見舞いに来てくれている。
「ありがとう、ミア。それから……本当にごめん。ごめんなさい。」
レオノーラは何度も何度も口を開くたびに謝っており、
ミアリーゼはというと、
「私が弱いせいです…そんなに謝らないでください」
と、このように繰り返しなのである。
「2人とも!そこら辺にしてくださいよ!見てる方も見てらんないです。何度も謝るの禁止!です!ごめんの代わりにありがとうって言っておけばいいんですよ!まったく」
桃谷がそんな2人を取り持ってくれる。
「……分かった。ごめ……あ。ありがとう。」
そこへ、ユージンが息を切らしてやってきた。
「レオノーラ!大丈夫だったのか!?目が覚めてたんだな。」
ソリナメンバーはひっそりその場を離れた。
「俺…すっげぇ心配してたんだよ。レオノーラがすごい状態だって言われてさ」
「でも、戻ってきてくれて良かったよ。俺…いや、何でもない。」
「…心配してくれてありがとう。また、荷竜車に乗せてよね。」
「あぁ…もちろん。ファーイもきっと喜ぶ」
窓の外を鳥が羽ばたいていた。
結局、ワイバーンが恐れていたものは何だったのか。
明確に、これだというものは何一つ分かっていない。
ただ、もしかしたら、これかもしれないと言うものはいくつか上がっていた。
悪魔の魔術説。
悪魔の広範囲魔術に反応していた。
そして、これはエルナしか知らない情報として、
天龍の気配に恐れていた説。
エルナや天龍の漏れ出る気配を回りのワイバーンが薄々感じ取っており、
それに対して恐れていた。
正直な話、下の方が有り得る話だが、
実際、両方な話だってある。
世の中の分からない事は多くある。よくある事が、
色々重なって、事件が複雑化してしまっていたこと。
ちなみに、天泡祭は延期される事となったそうだ。
無理もないだろう。天泡が全て、無くなっていたのだから。
それでも、住民達は皆で協力し、乗り越えるだろう。
かくして、ハイブヘイヴンの事件は幕を閉じる。
悪魔騒動から少ししてから飛空艇乗り場の前にて
「もう、帰るんだね。もう少し居れば良いのに。」
姉、レオノーラはミアリーゼを優しく抱きしめていた。
「……すみません、お姉様。天泡祭、一緒に回りたかったですけど、来年は一緒に見ましょう。必ず……帰ってきますから」
ミアリーゼも姉の背中に手を回していた。
「皆さん、本当にありがとうございました。妹の事、どうかよろしくお願いします」
深々と礼儀正しく頭を下げるレオノーラ。
彼女の目には慈愛が溢れていた。
ソリナメンバーは飛空艇に乗り込み、手を振る。
「必ず、また近いうちに帰りますからー!お姉様もお元気でー!」
レオノーラは飛空艇が見えなくなるまで、その場を離れなかった。
モニカはセレスティア天術学園の廊下を歩きながら、思案する。
(龍眼ノ魔女……逃げ足の速い事。にしても、カナリーちゃんが居たって本当?噓……だと思ったけど、話し方、目線……思い返してもあれは嘘のようには思えなかった。)
「……一度、ロードベルトに戻らないといけないかもしれないわね」
モニカはボソリと口にするのだが、
「ダーメです!アルニラク先生はまだ療養していないとダメですからね!」
「あ……、いや、でも本当に大丈夫なので!お気になさらず!」
とにもかくにも、モニカは近いうちにロードベルトに一度帰る事を決めたのだった。
天泡祭は無事に数週間後に無事に執り行われたようだ。
参加者は皆、泡を天に飛ばす。
亡くなってしまった人達の魂が無事に浄化されますようにと。
身内に亡くなった者が居なければ、願いを込めて天に飛ばす事もあるようだ。
ネガティブなものばかりじゃない。皆の願いが叶いますようにと。
泡がふわふわと不安定だけど、割れずに空へと昇って行くのだった。
場面は少し遡って現時刻へ、ターミナルベースに移る。
ターミナルベースの廊下。
何やら、廊下の先で慌ただしい靴音が響き始めた。
「あ!みんな!おかえり~……ん?ど、どうしたの!?」
「ベッドを!早く!容体が!大変なの!ナカちゃんが!!」
アイトリナカの容態が芳しくないらしく、高熱が出ていた。
黒見藍も目を覚ましていなかったが、今はアイトリナカの方が重症のようだった。
「ずっと……苦しそうで、熱が引かないの。どうすればいい!?」
保科が今、ナカの状態を見ているのだが、風邪でも無いらしい。
「どうする事も出来なくて……」
「今は、回復する事を願うしかないかもね。保科ちゃん、継続回復スキルをかけてあげて。今はそれしかないと思う」
天音ユウリはナカの額に濡れタオルをかけていた。
保科真衣と生田志保の2人は保健委員であり、ナカの看病に徹している。
「もし目が覚めたら、私に言ってね~。お粥作るからね。」
見波凪実は割烹を着て、心配そうにしていた。
ハイブヘイヴン編、無事に終わりです。
どうなるか分かりませんでしたが、エルナが解決してくれましたね。
モニカはというと、カナリーを追いかける気満々のようです。
天泡の泡の場面から、繋がり、ナカの視点へ。
割れそうで割れない。まるで泡のように。
ハイブヘイヴン編、長々とありがとうございました。
物語は次へと進みます。
第287話、読んでいただきありがとうございます。




