コード285「ー白きドラゴンと少女」
第285話
前回、エルナ達の後日談があり
ルクスはゆっくりとかつてあった記録を語り始める。
龍空歴
かつて、龍が空を覆い尽くしていた時代
魔術も天術も無かった時代に戦争が多くあった
一人の少女が居た。
その子は、飲み物も食べ物も無く、
ただひたすらに彷徨っていた。
「腹……減った」
そこに白くて綺麗な体と光輪を持つ、一体のドラゴンが居た。
「若き者よ。お前は何を望む」
「飯」
それは即答だった。
ドラゴンはその願いを叶えてやった。
「ふむ……わかった。魔物の肉だ」
少女は生肉にかぶりつこうとしており、
白きドラゴンがそれを止めた。
「生肉だと体を壊す。せめて焼いて食え」
「だったら、最初っから焼いた肉出せよ。白トカゲ」
なんて傲慢な少女か。我の事を白トカゲと呼ぶか。
だが、面白い。我の力に溺れた者達が戦争を起こし、
多くの者が死んでいった。
皆、我の事を崇め称えて、悪くは無かった。
最初の方は確かに気持ちのいいものだったが、
それも慣れて来ると、刺激が足りなかった。
なにより人間の私利私欲に飽き飽きしていた。
「焼き方を教える。廃材を持ってこい」
ドラゴンは少女に肉の焼き方を教えた。
口の悪い少女は最初の方は文句を言っていたが、
教えられた事に関しては、すぐに覚えていった。
少女は黙々と肉にありついていたが、
どこか周りを気にしながら、早食いをしていた。
「ゆっくり食べよ。ここは安全だ。我が居るからな。人間も魔物も誰も手を出しては来ないだろう」
少女が喉を詰まらせていた為、水を生成すると、
少女はその水の塊の中に顔を突っ込み、そのまま飲んでいた。
「んぐ……ぷはー、生き返った」
食べ物を出す事くらいなら別にそれほどの力が必要なわけでは無かった。
少女は毎日のように白いドラゴンの元へやってきていた。そんなある日の事
「飯、もっとよこしてくれないか。足りなくてよ。なあ、白トカゲ。もっと出せるんだろ?」
出せなくもないが、何かが変だと感じた。
「いや、1人につき1日1食分しか出せない。そう我が決めているのだ」
少女は仕方なさそうに俯く。
その日も少女の分のご飯を出したが、その日は別のところで食べに行ったようだ。
また次の日。別の場所で食べ始めている。
変だと思い、分裂し小さなドラゴンとなって、
その少女を追いかけ、ひっそり見ていると、
その少女は鳥系の獣人種の少年にご飯をあげていた。
鳥の少年は翼を怪我しており、衰弱している様子であった。
「なるほど。そうであったか。」
白いドラゴンにバレてしまった。
「こいつは絶対に食うな!あたしの願いだ!」
話を聞くと、龍は鳥を食べるものだと認識していたらしい。
「はっはっは!食わんさ。我は悠久を生きる存在。必要ないのだ」
白きドラゴンはその少年の傷を治してみせた
「……ありがとよ。白トカゲ……」
少女と少年は仲良くなり、幼なじみとなっていた。
2人はこの近くの廃墟に住んでいる。
それから数年後、2人は成長し十代中盤にまで成長していた。
「1日、3……いや、2食は欲しいんだけど」
少女達は棒切れを使い、なにやらチャンバラをしているように見えた。
彼女達が言うには、自分たちの身を守る術を自分たちで考え、鍛えているようだった。
白きドラゴンは彼女達を見守るようになり、
彼女達の願いは無償で叶えていた。
そんなある日、少女達は野党集団に襲われてしまったが、
少女が棒切れたった一つで全員ぶちのめすという事件が起こった。
野党集団はその少女を頭領と崇め称えてしまい、
「うるせぇ!どっか行け!あたしは別にお前らの事なんか興味ねぇんだってば!」
鳥の少年は少女ほど強くは無かったが、彼の言葉には渋々従っていた。
「まあまあ…、もう襲ってこないらしいし、いいんじゃないかな。」
そんなこんなで野党集団が廃墟街に加わる事となり、
彼らから狩りのやり方を教わった。
白きドラゴンから食事を貰うことは無くなっていった。
少女が初めて狩りをした日の食事は、
「まっじぃ…味気ねぇ…まだ、アイツの出すパンの方がうめぇよ」
なんて言ったりしてみんなで笑い合った。
だが、そんな平和も長くは続かなかった。
少女が16歳になった頃。
戦火が広がり、廃墟街が戦場となってしまう。
「くそが…なんであたし達の居場所をまた奪うんだよ…また家族をあたしから奪おうっていうのか…?なんで……あいつらは」
白きドラゴンはそんな少女にある言葉をかけた
「なぜ、戦わない。どうして、以前の野党騒ぎの時のように戦わないのだ」
「それは……単純に怖いからだよ」
「武装しているから勝てないとでもいうのか?お前はそんなに軟弱者であったのか?」
白きドラゴンは少女へ向け無慈悲にも強い言い方をする。
「違う。あたし一人だけなら誰の手を借りる事も無く逃げれる。昔、そうして生きて来たから。だけど、今は違う。守るものが増えたから。それを失うのが怖いんだ」
少女にとって、大切なものが増えてしまった。
彼女にとってそれは弱点であると感じてしまうが、
手放す事なんて絶対に出来ない。
だけどそれを白きドラゴンは弱点だとは思わなかった。
「それは、お前にとっての宝物なんだな。宝物であると同時にお前にとっての長所でもあるんだ。」
少女は良く分からなかった。自分の弱点が長所だなんて。
「我が言っているのは、逃げるだけじゃなくて、立ち向かえと言っているのだ。守る為の戦いをしろ。なにも相手を殺さなくたって良い。お前にはそれが出来るはずだ。」
少女は自分の長所は良く分からなかったが、
守る為に戦うと言う事を、改めて知った。
「そっか…あたし、やるよ。剣ならそこらに落ちてた。そうだな…この灰色の剣でも良い。あたしは、この灰色の世界からみんなを守るために戦う!見てろよ。白トカゲ!」
あぁ……我はずっと見ているさ。お前の生き様を見せてくれ。
これはまだハイブヘイヴンという国が無かった頃のお話。
ミアリーゼが少し語った、昔話ですね。
そこまで長くはありませんがどうかお付き合いください。
少女と白きドラゴンのお話です。
第285話、読んでいただきありがとうございます。




