コード279「飛渦龍《ヴィルベル》」
第279話
前回、モニカがリュカと向き合い
「久しぶり。龍眼ノ魔女さん。と言っても、実際に話すのは初めてね。」
まさか、こんなところでカナリー様の仲間に会うなんて思ってもなかった。
彼女は覚えていると言ったが、あの時はカナリー様を救うために動いていた為、
私が龍眼ノ魔女だという話をした記憶はない。
「……何故、私の事を知っているのか、大方予想はつくけど…、一応聞くわね。何故、私の名を知っているの?」
モニカは髪を耳にかけ、リュカを見つめるだけだった。
(話すつもりはない…ですか。少し…厄介ですね。モニカ・アルニラク。この人の魔術は…いわゆる、即死系。でも、条件があるはずだし、今気を付けないといけない事、それは、マナさんがこの国に居るのかどうか。もし、居るのなら、もう既に逃げられない…。)
リュカは想定しうる最悪のパターンを計算する。
(いや…、本気で捕まえるつもりなら…、会話する必要なんて無いし、奇襲で私を捕まえれば良い。つまり…)
「ふん…、マナさんは今、この国には居ないという事が分かりましたよ。」
前回、リュカが捕まった事、そして逃げられた事はほぼ奇跡に近い事だった。
「そうね。マナちゃんとはまだ会えてないけど、あなたの事は通信機を通して聞いていたの。だから、知ってる。龍眼ノ魔女 リュカさん?」
リュカは思わぬ敵の出現により、
角龍がどうなるのかを見届ける事は出来ないかもと思い、
今できる事は全力で逃げる事だと思考を切り替えた。
「通信機…ですか。なるほど。それなら確かに辻褄は合いますね。」
(さて…、どうやって逃げるか。今、街はパニックに包まれているし…、この混乱に乗じて…。)
「逃がすわけないでしょう。あなたの本当の目的を聞くまでは絶対に逃がさないから。」
モニカは魔力を高め、いつでも魔術を使用できるよう、
リュカを拘束するべく思考を巡らせていた。
「ところで…、モニカさん、今この国に誰が来てるか気が付いてる?」
そう問うが、モニカは何も気が付いておらず何も答えない。
(誰が来てる…?何の話?敵?味方?誰が…?これはただの揺さぶり。この地は私には有利なはず。)
だが、リュカは魔力を溜めながらニヤリと笑う。
「カナリー・アステライト様。彼女がこの地に来ているのよ。」
思考が一瞬乱れた。
まさか、いや、そんなわけ…。
胸を貫かれ…、ううん、死んでない。
生きてるはず。
今…、この地に来てる…?
「嘘ね。そんな嘘で私を惑わせると思わないで。」
表面上は平常を取り繕っているのだが、内心かなり乱されてしまう。
「嘘じゃないわ。見ても無い癖に嘘だと決めつける方が早計ね。あなた…、記憶が良いだけなの?」
私の事をどれだけ貶してもそれは問題ない。
だけど、内容が内容だった。
(カナリーちゃんが…ここに居る…?ダメだ…引っ張られてる。切り替えなきゃ。今は、この魔女を捕まえる。その後、考えよう。)
「もう遅いよ。今のは時間稼ぎ。
竜寄雲生成魔術<スペル・竜乱雲>×10!」
リュカは両手を掲げ、大量の雲が星空を隠し、
ハイブヘイヴンを暗闇に閉じ込めてしまう。
「あはっ!別にハイブヘイヴンに興味は無かったんだけど…、この国、本当に終わっちゃうかもね?来るよ。竜の群れ…、竜災嵐が!」
リュカの魔術により、ハイブヘイヴンに大きな雲が生成され、
それにより、ハイブヘイヴン近隣に居た竜達がその魔術に引き寄せられる。
また、その竜に引き寄せられるかのように、連鎖して竜がどんどんとハイブヘイヴンに集まってくる。
「国を一つ滅ぼすとされる竜災嵐。久しぶりに使ったわね。さあ、嵐になるよ…。ふふ。」
(まあ、本当は別に国なんて滅ぼすつもりなんて無いし、こんな嵐、カナリー様が何とかするでしょう。私はこの混乱に乗じて、逃げるだけ。)
してやられてしまった。
カナリーちゃんがいると嘘を突かれた隙に
狡猾な魔術を使ってくるなんて。
あの雲は魔女を気絶させるか、強引にでも解除させれば何とかなるだろうか。
正直に言って、かなり難しそうではある。
(これは……エルナちゃんの助けが絶対に必要…、てか、今どこにいるのかも知らないんだけどね。)
そんな魔術の雲を、吸収し始める者が居た。
空高くに居り覚醒の時を待っていた者。
者というよりかは、一体…、いや一匹の方が正しいだろうか。
僕の力が…、増していく。
この雲のおかげで…。
繭状になっていた角龍はどんどんとリュカの出した雲を取り込んでいく。
(あら…?私の魔術が吸収されていく…。なるほど。光龍や天龍には届かないかもしれないけど…別系統で進化するかもね。)
リュカはその様子を冷静に分析し、空を見上げる。
美味しい…。
この雲、すごく美味しい…。
力が溢れて来る…!
リュカの出した雲が渦のように
角龍を中心にその雲がどんどんと吸収され、繭が脈動する。
繭の中に居る角龍のシルエットがどんどん変わっていき、
繭そのものの大きさも変わっていく。
最初に比べ、角龍の大きさは3倍になっており、
巨大な繭が空に浮かんでいるのを住民含め、
多数の者がそれを目撃する事となった。
「あー…、私の魔術が肥料になっちゃった。でも、いいか、別に。新種の龍が見れそうだし。」
(それにこの混乱に乗じて逃げられそう)
空が暗く、暗雲に包まれる。
そうして、遂に、角龍が覚醒し、解き放たれた。
「あはっ!あれが新種!へぇ~!そうなるんだ!翼を使わずして飛べるのは特殊能力?それとも軽いのかしら。そうねぇ…、名前あげる。あなたの名前は…」
飛渦龍
リュカは新種の龍に興奮し、念話を使い、龍に名を与える。
「その名で存分に暴れなさい。光龍には劣るかもしれないけど、名持ちだし、頑張ればギリギリ嵐龍には届くかもね。」
名を与えられた飛渦龍は咆哮した。
それは綺麗と言う訳ではないが、へイヴベル全土に響き渡るほどの声量だった。
「僕の名は…、飛渦龍。ハイブヘイヴンに災禍をもたらす龍だ。」
その姿は体が黒く、腕が伸び、胸に十字傷が入り、
二本の角部分が、合わせて円形になるように変形していた。
その姿はまるで堕天した天使のようであった。
リュカの真の目的が一体なんなのかを問い詰めるモニカ。
だが、リュカはこの場からの逃走を考えており、
カナリーがこの場に居ると言い、モニカはそれを信じず、
リュカの話術と受け取ってしまう。気を取られた隙に魔術の行使を許してしまい、
ハイブヘイヴンに竜災嵐をもたらしてしまう結果となった。
竜災嵐とは簡潔に言えば、竜の群れであり、その数は100はゆうに超えるほど。
一種の災害と認定されており、非常に危険な災害とされている。
角龍はリュカの発動した魔術を糧にし、新たに独自進化をする事となった。
そして、その龍に対して、リュカが名付けをする。
その名は、「飛渦龍」
果たしてどうなるのでしょうか。
第279話、読んでいただきありがとうございます。




