コード275「リズムと光の盾」
第275話
前回、白竜が角龍までへと進化して
カナリーを除くソリナメンバーは強化型悪魔との戦闘を継続していた。
現在確認されている強化型悪魔は、
桃谷、月見里が相手している腕部強化悪魔、
ミアリーゼとサイファーが相手している魔術強化悪魔、
カナリーが背中に乗っている飛行強化悪魔。
強化体は3体。
倉庫雲にて
腕部強化悪魔の致命傷になりうる攻撃を
桃谷は自信の持てる全てを使い、何とかいなしていた。
(こ、こいつ!今の私のレベルじゃ…。でも、全く歯が立たないと言う訳ではない。先生の強化でなんとかギリギリ戦えてる状況だ…。)
「そこらの冒険者に比べたら、それなりにやるようだが…まだまだと言った所か。俺の役目は足止め。そろそろ…お役御免になるわけだが…。お前達を殺して吸収し、己の糧にしてやろう。」
腕部強化悪魔はニヤリと笑いながら、
桃谷に歩み寄っていく。
月見里先生は焦り、思案する。
(ど、どうしましょう…。私の強化は今は同じものの重ね掛けが出来ません…。上限が…。)
はは…この場に黒見っちが居たら、何とか出来たのかな。
ううん、自分の困難は自分で切り抜けないと。
くよくよしちゃダメだ。立ち向かわないと。
一方、魔術強化悪魔側。
「クッソ!なんだこのシスター!硬ってぇ!魔術が効かねぇ!はっ!?」
ミアリーゼが光の盾で魔術を弾き、その隙に、
サイファーが魔術強化悪魔に向け、蛇腹剣で斬りつける。
「ぐぅ!クッソが!おい!腕部強化悪魔!こっち手伝え!あのシスター硬すぎて手に負えねぇし、絡まってら!」
魔術強化悪魔は腕部強化悪魔に手助けを求める。
「あぁ~?めんどくせぇ。ちょっと面白くなってきたところだったのによ。俺はな…弱いもの虐めが大好きなんだ。分裂しているからか、記憶が引き継がれている。弱いもの虐めを散々受けて来たんだ。だから、今度は俺が弱いもの虐めをする。こんなに楽しい事とは思わなかったなぁ。」
アームズが桃谷に向け攻撃を仕掛け、
月見里がサポートに入っている。
「いけない!サイファーさん、私はあちらの援護に!」
ミアリーゼが助太刀に向かおうとしたのだが、桃谷がそれを拒んだ。
「こっちはこっちで…なんとかできます!だから、そっちはそっちで抑えててください!」
(桃谷さん…。)
「分かりました。では、そちらの悪魔をお願いします!」
ミアリーゼは桃谷を信じ、背中を預けた。
「すみません…。ありがとうございます。ミアリーゼさん。くっ!」
本来なら、手伝って貰った方が確実に倒せるだろうし、
楽に倒せる事だろう。
でも、それで本当に良いの?
勇者として、私達は召喚された。
私達は助けられる存在じゃなくて、
誰かを助けられる存在になりたい。
強くなりたい。
黒見っちをもっとちゃんと支えられるように。
だから……。
「こんな所で負けてられない。だって、私は副委員長だからね!」
腕部強化悪魔は訳分からない様子で聞いていた。
「フクイインチョー?何言ってるかさっぱり。だが、お前の勝てる見込みはゼロだ。オレ様が勝つ。」
桃谷と腕部強化悪魔の打ち合いが始まる。
(もっと…もっと、リズムに乗らなきゃ…。攻撃全てにはリズムがある…。それらにノって……。)
腕部強化悪魔の全力のパンチが顔面に飛んでくる。
その瞬間、脳内に黒見藍との記憶が蘇る。
―――
「桃谷さん。我がクラスで近接最強はあなたです。だからこそ、桃谷さんには、みんなの"リズム"を覚えて欲しいんです。」
「みんなのリズム?えっと、私のスキル関係の話?私のスキルは…。その、ちょっとクセがあって。<スキル・マーシャルマーチ>、リズムを上げていくとステータスが上昇する感じなんだけど。」
「知っていますよ。桃谷さん、休み時間によく音ゲーしてましたよね。それの応用で、皆さんのリズムも掴んでほしくて。」
「どうして、それを?まあ…良いけど、あ。私にも指揮が出来るように?ふふん、任せて。みんなのリズムを知って、黒見っちの負担を減らせるように頑張るね。」
―――
どうして、今、これを思い出したんだろう。
このパンチを防いで…反撃して、追撃しないと…。
3テンポ…か。反撃までコンボを繋げられるだろうか…。いや、そもそも…。
(反応が…!出来ない…!やられちゃう…!)
「取った!終わりだ!」
その時、桃谷、月見里の脳内に声が響いた。
黒見藍の心魂値ステージ突破を確認。
[おめでとうございます。]
レベルアップ、12→18。
アルファ組、パーティメンバーを一律レベルアップしました。
全ステータスの上昇を確認。
腕部強化悪魔のパンチが、遅く感じる。
これなら、躱す事は容易だろう。
それよりも、さっきの…黒見っちの心魂値ステージ突破って…
ふふ…黒見っちもそっちで頑張ってるんだね。
いつもありがとう。おすそ分け貰っちゃった。
そして…リズムだ…このリズム感なら!
「岩井さん!あなたの技借りるね!」
パンチを躱し、両手でその腕を掴み、
体を入れ替え、腕部強化悪魔と同じ方向を向く。
「やぁぁぁぁぁ!!ふんぬ~!!!!」
パンチの勢いを利用した桃谷による、一本背負いが炸裂する。
「桃谷さん!<スキル・テクニカブックス>!強化の書!ストレングス!×3!」
桃谷が腕部強化悪魔を地面に叩きつけるその瞬間、
三重の強化が桃谷にかけられ、腕部強化悪魔の腕をもぎ取った。
月見里先生も同時にレベルアップしており、
バフのレベルも上がっていた。
今までなら、一度のバフで一回。切れたらまた付け直すと言った効果だったが、
同じバフを同時に三重かけられるようになった。
「はぁ…!はぁ…!その腕、取ってやったわ。」
一方、魔術強化悪魔は蛇腹剣で絡まれており、
今は一刻を争う状況となっている。
「クソが!単細胞がやられちまった!」
サイファーは拘束された魔術強化悪魔から情報を抜こうとする。
「お前達の目的は?どこから来た?何を目的に動いている?答えろ。」
魔術強化悪魔は口を開かない。
「…へへ、答えるわけがねぇだろ。バカがよ。おい!いつまで寝てる!アレをやるぞ。」
拘束された魔術強化悪魔に向け、腕のない腕部強化悪魔が走り出す。
「あ!そいつを止めて!ミアリーゼさん!」
ミアリーゼは一瞬気を取られてしまい、反応に遅れる。
腕部強化悪魔と魔術強化悪魔の体が触れると、
二つの体が混ざり合い、姿を変える。
筋肉質のある腕、漏れ出る魔力。
近接、魔術の複合された悪魔。
近接魔術悪魔が出来上がった。
「あ~、本来なら翼の野郎も取り込めれば、もっと強くなれたんだが…仕方ねぇ。お前らはこれで終わり…。!?」
近接魔術悪魔が何かに吹き飛ばされた。
「私が…反応に遅れてしまって…。申し訳ございません。」
そこに立っていたのは、両手を前に礼儀正しく立つ少女ミアリーゼだった。
「さっきの戦い、しかと見ておりました。今度は私の番ですね。」
ミアリーゼは優雅に立ちながら近接魔術悪魔を見据える。
「今、何に飛ばされたんだ…?」
「だ、ダメだ!全員でやる!ミアリーゼの盾はすごいが、それは盾だ!攻撃手段なんてない!その悪魔は狡猾で危険な存在だ!」
サイファーも加勢しようとするのだが、ミアリーゼは透明な膜のようなもので分断されてしまった。
「皆さん、ここは私に任せてください。すぐに…救済致しますので。」
疲れた様子の桃谷、不安そうな月見里、心配するサイファー。
「おいおい、お前ひとりで何が出来…。」
近接魔術悪魔が壁にめり込む。
「な、何が起こって…。」
「すぐに終わりますから。」
不敵な笑みを浮かべながら微動だにせず、メキメキと音が鳴る。
私の使える天術は、光の盾。現在は二枚までしか出せません。
でも、二枚あれば十分。
「ぐぅ…!あが…!や、やめ!お前、シスターじゃ…!こんな非人道的な!」
近接魔術悪魔は何やら叫んでいる。
「あなたは人ではありませんし、これが私の現在の攻撃手段ですので。」
ミアリーゼは両手を合わせるように祈ろうとする。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「神よ。」
音を立て、近接魔術悪魔の体が二枚の盾により押し潰された。
「救済完了です。」
悪魔達はソリナメンバー、主にミアリーゼにより討伐された。
ミアリーゼ、以前よりもかなり強くなっていました。
天術が発現する以前は至って普通の強さでしたが、
光の盾を使えるようになってからは彼女は見違えるようになりましたね。
余談ですが、セリンの糸でもこの盾を切断する事は不可能なものとなっています。
ミアリーゼは桃谷が更に成長する事が出来るかもしれないと分かっており、
腕部強化悪魔の相手をあえて任せていました。
近接魔術悪魔の相手はミアリーゼが受け持つ事になり、
一刻も早く姉の元へ向かう為に、即座に挟み潰していましたね。
なかなかにえげつない攻撃方法を持つミアリーゼ。
まあ元々肉弾戦をするような子でしたし、片鱗はありました。
ミアリーゼの今後も楽しみですね。
第275話、読んでいただきありがとうございます。




