コード101「ミナリー・ティアハート」
第101話
前回、ココロと戦い終わってから
「この世界は不思議な事で溢れている。」
夢の中誰かがそう言った。
カナリーは眠りの中、夢を見る。
魔術大戦時
「早く逃げないと…!あっ!」
私はひたすらに走った。
逃げないと、死んじゃう。
どこか安全なところへ。
魔物が!魔獣も!人同士でどうして戦うの…?
黒くてうねうねして、青い星屑の光を纏った
モンスターのようで見たことのない生き物が空から降ってくる。
「あっち行って…!来ないで…。」
もうダメだと思ったその時、
ガラスが割れるかのように空が裂けた。
星空のような宇宙空間が見える。
その星空から煌めく星が超高速で落ちて来る。
それはどんどんと大きくなり眩しさを覚える。
星のように見えたその人は、真っ白で綺麗な女の人で、
ゆっくりと降りて来る。
発光していて、良く見えないけど、
魔女帽を被っているような気がする。
「うぅ…。あなたは…?」
□□□□□
「え…?」
私はその人の話が全く分かりませんでした。
まるでピアノを聴いているような心地のよさを覚えます。
言葉と言っていいのかも分かりません。
その真っ白な人は星の杖を掲げる。
□□□□□!
青くて、綺麗な魔法陣が展開され、
世界中が光に包まれた。
あれは…魔術じゃない…。
だが、爆心地に居た女の子はその光に吹き飛ばされる。
「きゃぁぁ!」
その時、私の中に前世の記憶が流れ込んできました。
白星 華那。
前世の名前だ。
全部、思い出した…。私は転生したんだ。
光の中で 華那は全てを思い出す。
前世で飛行機が墜落して死んでしまったこと。
最後、お母さんの腕の中で死んだこと。
涙があふれる。
真っ白な人が放った、魔法の余波により、
私の中から、たくさんの欠片がどこかへ飛んで行った気がする。
記憶じゃない。でも、何が飛んで行ったのか分からない。
その欠片達は様々な大陸へ飛んで行く。
また、銀色の欠片が星脈道にも入っていくのが見えた。
今度は、真っ黒なショートボブの女の人がやって来て、
落ちる私を抱きかかえるように救ってくれました。
■■■■■■?
名前を聞かれたような気がした。
私は…アステライト家の人に…。それとも、前世の名前を…?
「わ、わた…しは…カナ…うっ!あの…助けてくれて…ありがとう…ございます。あ、ぅ…」
(あなた達は一体…?)と聞きたかったが、上手く喋れなかった。
2人組が話しており、私は気が付くと、
森の中で眠っていました。
空を見上げると、青い星と赤い星が空に煌めいていました。
それから、私は穏やかな気持ちで眠りについた。
もう一度ちゃんと会ってお礼がしたいな…。
また会えるかな。
また会いたいな。
銀色の欠片視点
私は星脈道の中を進んでいく。
どこまでも、どこまでも
気が付くと、私は精魔界に居た。
星立体ではなく、精魔体になっている。
体が透けている。精魔界に来た時から、変な粒子が体の中にある。
上手く、歩けない。歩き方は…。
思考を巡らせる。
確か…さっき…光を見たような気が…。
それから、精魔界を彷徨い続けた。
当てもなく、ただひたすらに。
精魔界では、歩くというより、浮くに近い。
しかし、現世界を行き来する者も多い為、
歩く素振りをしながら浮いている者も居た。
私も、歩こう。
精魔界はとにかく綺麗なところだった。
というのも、この女の子が来たのは精魔界の中でも
精霊が集まり、精霊達の住まう国だったからだ。
足元を見ると、水面のようであり、その水面の奥には、
現世界の光景が見えた。
「あれは……私…?」
現世界に居る、私、カナリー・アステライトが眠っているのが見えた。
カナリーを、本体を見た時全てを理解した。
そうか…あの光で…私の…カナリーの心魂が欠けたんだ…。
大丈夫かな…。大丈夫そう…?いつか会いに行こう。
そう言えば、私、服着てない。
体の中に粒子が輝いており、その体は透明だったが、服を着ていなかった。
まるで、水の精霊みたいだ。
これから、どうしよう。でも、まずは身なりを整えないと。
身なり…。カナリーから分かれた私、ミナリーで良いかな。安直すぎるかな。
どうしてか、私の中の小さな心魂が輝いた気がした。
それから、ミナリーは精魔界の人たちと過ごした。
ミナリーは精霊種なのだと教えてもらった。
人だったけど…精霊に…
これからは1人で生きていかないといけない。
強くならなくては。
それから、ミナリーは訓練を始めた。
魔力を練ったり、他の精霊から色々教えてもらったり。
しばらくが経ち、ミナリーは現世界に行くことにした。
戻る際、どうしようと考えた。
本体であるカナリーの元に戻るべきか、
混乱させてしまうだろうか。
そんな事を考えながらミナリーは現世界へと戻ることが出来た。
現世界では、魔術大戦が終結している。
ミナリーは星脈道を抜け、空から落ちる。
あ、やばい。
中央衛星都市サテリッズのど真ん中に落ちる。
痛くはない。精魔体の顔部分がへこんだ。
なんてこった。のっぺらぼうみたいになってしまった。
だが、しばらくしたら戻るだろう。
ミナリーは仮面を生成し、顔を覆った。
あたふたしていると、目の前に、メガネをかけた人がこちらを覗いている。
「大変!あなた…大丈夫!?さっき見えたけど…か、顔が!というか…精霊…?とにかく家へ!」
暫くすれば動けるから大丈夫なんだけど、そのメガネをかけた人が私を担いで、
ティアハート家へと私は連れていかれた。
全ては話さず、名前と精魔界から来たということ、精霊だという事
これから、どうするか悩んでいる事をその家の人たちに話した。
顔はというと、目だけ戻った。言葉は精霊の持つ特殊な能力、
意思疎通で話した。
「じゃあ、しばらく家に居る?その方がこの都市で生きていくにあたって便利だと思うの。」
メガネをかけた女の子にそう言われる。
「あ、名乗りが遅れてすみません。私の名前は、ティアハート家長女、レイラ・ティアハートと申します。」
すごく丁寧に礼儀正しく、教えてくれた。由緒正しい家系なのだろう。
”私の名前は、ミナリー。よろしくね。”
ミナリーはそれからティアハート家で過ごした。
オービット魔術学園付属魔小学校にも通った。
仮面は取らないように、外れないようにしたが、
レイラの前でのみ、仮面を外した事がある。
ミナリーはティアハート家の養子となり、
ミナリー・ティアハートとなった。
輝鳥歴224年 サマーデュエル決勝の後
カナリーはゆっくりと目を覚ました。
「そうだったんだ…あの時の…あなたが…私の事をお姉ちゃんって言ったのはそういう理由から…。」
カナリーは心魂の底から嬉しい気持ちになった。
しかし、ミナリー以外にも、多くの欠片が散っていった気がする。
もしかしたら、ミナリー以外にもたくさん…。
カナリーは様々な事を考えていた。
情報量が多いですね。
まずはじめの場面では、前世の記憶を取り戻す前のカナリーが
皆からは伝説の大魔術師と呼ばれる者に助けてもらい、
前世の記憶を思い出しましたね。
白星 華那。
前世のカナリーの名前となります。
しかしその大魔術師が放った光により、カナリーの心魂が欠けて、
その欠片達は世界に散らばりました。
散らばった欠片の一つがミナリー=ココロ。
ココロというのは、大会に出る際の偽名ですね。
レイラというのは、七魔席の次席で大会の解説役に呼ばれていた人です。
皆さん薄々を気付きかと思いますが、カナリーとミナリーでは性格が違います。
カナリー、元気いっぱいで他人を思いやる性格
ミナリー、感情の起伏が少なく他人を思いやる性格
この他にも世界中にカナリーに似た人達は居ます。
第101話、読んでいただきありがとうございます。




