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『XLIII :死神を募る2』

「ごめん柊音しおんちゃん!咄嗟に植物軍器フランザ使っちゃたわ…」


息を上げた実紀みきさんは、ヒョイと僕と柊音さんの隣に現れた。


「いやむしろ助かったよ。実紀ありがとう」


「えへへっ。でもコイツちょっとヤバいかも」


実紀さんの右手に握られた短剣からは紫の血が地面に滴り、彼女の瞳には次の突進の体勢に入ろうとしている凶獣ヘビの姿が映っていた。


「取り敢えず清白すずしろっち連れて逃げて」


「いや、実紀も一緒に逃げよう。この感じだと何体この凶獣ランデルがいるか分かんないだろ」


そう言いながら見覚えのある光の瓶を腰に付けると、柊音さんは両手から短銃を生成した。


「ごめんな清白くん、後で色々説明するから」


「………。」


何も言わなかった。

別に説明も要らなかった。


何がどうなっているのか、彼女たちが誰なのか。

そんな疑問が、確信へと、今変わったのだから。


シャァァーーーッ!!


大きな雄叫びを上げた凶獣ヘビが、再び僕たちに向かって猛スピードで襲いかかる。


自身の血を頭にかぶり、鬼の形相を浮かべる凶獣ヘビは先程よりも遥かに鋭い殺気を帯びていた。


「清白っち、クリストルタワーの方に向かうよ!」


実紀さんが僕の手を掴む。


「あ、ちょっと…」


目の前の凶獣から逃げるように後方を振り向いた時、


シャァァーーーッ!!


「……!?」


恐怖の鳴き声と共に、つい先程空いたビルの穴からもう一匹凶獣ヘビが現れたのだ。


走り出したその方向から突如現れた化け物は獲物を見るかのような眼光で僕たちに向かってくる。


咄嗟に止まろうと足に力を入れるが、後ろからも凶獣ヘビが迫っている事を思い出す。


「挟まれた…」


僕の手を引く白髪の少女は小さく舌打ちをした。


「伏せて!!」


すると、力強い声が聞こえ、僕の顔の直ぐ横を銃弾が通った。


僕を通り過ぎたその銃弾は一直線で飛んでいき、目の前の凶獣の左目に直撃した。


「柊音さん…」


振り返ると紺髪の少女の手に握られた短銃から煙が立っていた。


「そのまま止まらず進んで!」


左目を失った凶獣は苦しそうに勢いを失う。


「よし!いくよ!」


「は、い……」


「もっとシャキッとして!これじゃあ、追いつかれるよ!」


鮮やかな笑顔を僕に向けた実紀さんは、僕の手を一層強く握りしめた。


恐怖に包まれたこの状況下で僕に向けられたその笑顔に、罪悪感を抱えた僕の良心が軋む音を聞いた。


…いや違う。騙されちゃいけない。


この笑顔も化物(ぼく)に向けられた偽物だ。


彼女達は清白理玖という大罪人を、怪童を…欺いて、近づいて、一緒にいて、一番近くで僕を、…見張ってたんだ。


「言っとくけど、一回手繋いだら実紀、離さないよ!」


…騙されちゃいけない。


僕は全てを思い出したんだ。これ以上彼女たちの、ヴィクテマの思い通りにはさせない。


そう心に決め、彼女の手を振り払おうとしたその時、


突然冷え切った足元のアスファルトが大きく隆起した。


「……!?」


バランスを崩し、恐る恐る足元を確認すると、ガラスの様に粉々に破壊されたアスファルトから蒼い瞳が覗いていた。


……凶獣ランデル



そう叫ぶ暇も無く、気付くと僕は天へと打ち上げられていた。


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