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『XXXIV :帰路2』

「あーもういいや、天國あまくに…あんた帰り置いてくから。役割を果たさない人は一人で残ってもらいます」


痺れを切らした綱元つなもとは呆れたように言い放つ。


「……あ、言い忘れてたけど、ここら辺幽霊が出るらしいわよ?」


その時、天國はビクッと子犬のように体を震わせた。


「あ〜もう…やればいいんでしょ。やります、やりますぅ…」


そして、何故か彼女は溜め息混じりにゆっくりと立ち上がる。


「何…?やらなくても良いのよ」


「え〜と、綱元さん、右足ですよね?5秒で終わらせるので、私に任せてといてください」


天國はそう言い残すと逃げるようにランデルへ走りだす。


「フフッ…もー、そんなに仕事をしたいなら最初からそう言えばいいのに」


不適な笑みを浮かべた綱元を背にした天國は、右手に植物軍器フランザを展開した。


「ヴィクテマって討伐報酬みたいの出ないからやる気が出ないんだよね…」


緑の光粒を纏いながら右手に剣を形成した彼女は、足を高速で回転させ急激に加速しだす。


先程まで全く覇気の無かった彼女の物とは思えないそのスピードは、地面の芝生を勢いよく舞上げる。


「天國殿、私も力を貸しますぜ…!」


その時、高速で移動する彼女の横からツインテールの少女が声を掛けた。


「おっ…雨夜あまや。多分あの足一人じゃ切断し切れないから、反対側からタイミング合わせて斬ってもらえるとありがたい…」


「任された!」


雨夜は右手に持っていた刀を捨てると、代わりに長剣を生成する。

刀ではあの鋼鉄を斬り切れないと判断したのだ。


「じゃあ…行くよ、雨夜」


もう一段階スピードを上げた二人は、その勢いのまま湖の上に佇むランデルに直進する。


「うわっ、あの二人湖の上走ってるんだけど…!」


閃光のように戦場を走り抜ける二人に西園は驚愕の声を漏らした。


本来紅林たちとは別の部隊である、上杉うえすぎ天國あまくに綱元つなもとは、25を超える班の中でたった8班しか在籍しない第二部隊員。


第一部隊を除けば文字通りヴィクテマ最強である部隊の一員である天國は、その捻くれた性格はさて置き、実力だけはヴィクテマ随一である。


それに問題なく息を合わせる事が出来ている雨夜の動きも、何故第三部隊にいるのか疑問を持たせる物だ。


西園にしぞの君と紅林くればやしさんは次に攻撃に備えてポイントBへ…。上杉うえすぎ天羽あもう君は二人の援護…!」


綱元はその透き通った声を辺りに響かせる。


「いやいや、あの二人の援護は無理でしょ…」


遠方から矢を手に掛けている天羽は呆れたように呟く。


それもその筈…。味方に合わせる事が最も重要とされる援護…。しかし、一般人では確実に目ですら追えないスピードで移動する二人でそれをするのはほぼ不可能である。


水飛沫みずしぶきを上げながら二人は弧を描くようにそれぞれ反対側から距離を詰め、瞬きよりも早い一振りをお見舞いした。


「これはいったっぽっすね」


「あ〜疲れた。帰ろう…帰ろう…」


仕事を終えたと言わんばかりの表情を浮かべる二人は植物軍器フランザを解除すると、ゆっくりと背後を確認する。


そして次の瞬間、遅れてきた斬撃をくらったランデルは悲鳴を上げながら大きく倒れ込んだ。


丸太のように太い足は真っ二つに切断され、右足からは大量の血が噴出されている。


「よし、このままトドメ刺すよ!作戦通り西園君と三芳野さんはポイントBへ。天羽君はそのまま、上杉は左上の高台から………」


「ウヒョ〜〜イ!」


突然の奇声に全員が空を見上げると、上空から金髪の男がランデルに向かって落下している。


「え、は?…あ!上杉ぃ!?」


長距離用のスナイパーライフルを握りしめたままランデルに接近する彼に、綱元は悲鳴のような驚声を上げる。


「いや〜…こんなに可愛い女性達が体張ってるのに僕だけ援護とか無理でしょ」


後方の高台から飛び降りたのであろう、上杉はランデルにむかって真っ逆さまに落ちていく。


「もぉ〜なんで私の隊はこう……バカしかいないのよ!」


彼女は溜め息混じりに天國を睨みつけた。


「えっ?…私も!?」


突然八つ当たりされた天國はビクッと体を震わせる。


「ウヒョ〜〜イ!きたきたきた〜…!」

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