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『XXX :偽実1』

光り輝く建物が所狭しと立ち昇り、泳ぐようにが吹き抜ける涼しい風。


足元から放たれる白い光は、ガラス越しとは思えないほど光り輝いていた。


「もうちょっと……」


少し眩しい光に照らされながら、僕はコツコツと音を立て松葉杖を地面につく。


通行人はヨタヨタと頼りなく歩く僕を気にも止めず追い抜いて行く。


「もう無理だ…」


左手に抱える大きな袋の重さに耐えられなかった僕は道端のベンチに腰を下ろした。


「流石に買いすぎたかな…。でも、スーパーを往復するのはしんどいしなぁ…」


手に持ったビニール袋はずっしりと重く、人参やねぎが中から覗いている。


病院の先生いわく、あと二週間ほどでこの右足も歩けるほどには回復すると言われた。

しかし何度かリハビリをサボったせいか、とてもこの不便な生活からもうすぐ抜け出せるとは思えない。


「少し踏ん張ってみようかな…」


足に力を入れてみるものの、上手く立ち上がれずバランスを崩してベンチに座り込む。


「まぁ、ダメだよね…」


一度アキレス腱が切れた僕の右足は、全くと言っていいほど力が入らないのだ。


そう分かっていながらも、治っているのではないかと淡い期待を抱いていた自分に思わず呆れる。


なんでこんな事に……


理由が分からぬまま松葉杖になった事もだが、僕が落ち込んでいる理由はそれだけでは無かった。


いや、むしろ足の事はおまけみたいなものなのだ。


…僕の全てはあの日に崩れ落ちた。


そう、あれは一ヶ月前の事…ヴィクテマの団員に囲まれながら僕がベッドの上で目を覚ました日。



+++++



「……?」


何故か右足には包帯が巻かれ、アキレス腱が微かに痛む。


何がなんだか分からない状況に戸惑いながらも周りに視線を向けると、ヴィクテマの制服に身を包んだ彼らはニコリと微笑んだ。


「起きましたか…あなた、自分がなんでここに居るか覚えてる?」


女性にしては少し背の高い茶髪の彼女は僕に問いかけた。


「すみません、全く分からないんです…。確か任務の途中で凶獣サルに遭遇して、取られたカバンを追ってあずま君たちと二手に分かれて…」


頭に残る記憶を必死に探るが、そこから不思議と途切れていた。


…何か忘れているような、そんな感じがする。


「それ以降の事は…?」


「ちょっと思い出せそうにないです…」


何か忘れてはいけないような事があった気もしたけれど、まあいいか…と僕は思考を放棄し、問いかけに返事をする。


その瞬間どこか張り詰めていた部屋の空気が、そっと落ち着いたような気がした。


「そうですか。右足以外で違和感は…?」


そう優しく微笑んだ彼女の胸元に、青緑の勲章が着いている事に気付く。


慌てて周りの団員に視線を向けると、彼らの胸元にも同じく青緑の勲章が光を放っていた。


「……!」


それの意味を認識した瞬間、血の気が一瞬で引いて行くのを感じた。


青緑の勲章…それは第一部隊の証にして、ヴィクテマ最強の称号。


そんな普通は声を掛ける事も許されないような方達が、1人どころか5人も…今僕を囲っているのだ。


何か…何か凄いことを僕はやらかしてしまったのだろうか。


嬉しさと同時に、深淵しんえんな不安が込み上げ、冷たい汗が背中を伝う。


「痛いところは特にありません。それより、一つ質問してもよろしいでしょうか…?」


「いいですよ」


「今日はどのようなご用件でしょうか……?」


恐る恐る聞かれたその質問を待っていたかのように彼女は背筋を伸ばすと、真剣な表情を浮かべた。


清白すずしろ理玖りく団員…」


彼女は一息着くと、僕の目を見て続ける。


「…あなたは今日をもって、ヴィクテマから追放になりました」


「……!?」


予想もしなかった突然の宣告に、僕は言葉を失った。

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