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『XXIX :コールドスタート』

「Mr.桐王(きりおう)…あなたが私に頼ってくるのはNo Problemなのですが、それなら私にもう少し情報を提供してくれないと。これはUnfairじゃないですか…!」


白衣の男は少し困ったように視線を投げた。


「ですが、サムさん、あなたの立場と秘密は私によって守られていることをお忘れじゃないですよね」


「Oh god. Why did the god give the talent to this guy..。(そうやってすぐ過去視を脅しに使うんだから) 」


「サムさん、何か言いました?」


「なんでもないですよ」


「そうですか。しかしもう少し詳しい説明はいつか必ずしますよ」


「約束ですよ…?」


「安心してください…私は約束は守る人間なので。それより、現状は先ほど説明した通りです。準備の方は…?」


そう言った彼の視線の先には手錠で繋がれた少年が眠っている。


「薬の準備は出来ているよ…Mr.桐王。でも、本当にこれでいいのかい?一番確実なのは…」


サムは黒いケースから注射器を取り出した。


「彼を殺す事…ですね。それは分かっています。しかし、恐らくそれは根本的な解決にはなりません。…そんな一時しのぎのために私は団員を殺す事は出来ない」


「私もそれにはAgreeだよ…」


二人は深妙な面持ちで顔を見合わせる。


「Mr.桐王…最後にもう一度忠告しておきます、この薬を使うという事は自らDangerousな道を行く、という事ですよ」


サムの右手に握られた注射器…。これは彼が10年の研究を経て作り出した、植物軍器フランザの機能を一時的に停止させる薬。


植物軍器フランザというを人類の最終兵器の存在意義をおびやかしかねないこの薬の存在はまだ世間には明かされていない。


「承知の上です。これは私の不始末ですから。私がけりを付けなければいけません」


「All right…では打ちますよ」


サムは安らかに眠っている様に見える黒髪の少年に薬を打ち込んだ。


注射器の中の薬が減っていくにつれ、部屋の緊張感が増していっているように感じる。


そして薬が無くなると彼は針を少年の腕から抜いた。


少年から何の反応も見られない事にサムは安堵の息を吐く。


「Okay…!これで大丈夫な筈ですけど、保証出来ませんよ…私のInventionなので」


サムは空になった注射器をゴミ箱に捨てた。


「万が一…By any chance、この薬から望んだ結果が生まれなかったとしたら。あなたはどうするつもりですか?」


何時もの様な陽気な態度の彼の言葉の端々からは緊張が感じられ、その瞳はあまりにも真剣な色を帯びていた。


「それは起こりえません…私が、起こさせない。そのための手は既に打っています」


桐王は少年の手錠を外し始める。


「Mr.桐王…上への報告は…?」


「必要ないと判断しました。これは機密事項ということでお願いします」


「Youが上に報告しないなんて珍しいね…」


桐王は少年を担ぎ上げた。


「……!」


ふと何かを思い出したように桐王はサムに視線を投げる。


「…薬の効果はいつ切れるのでしょうか」


「Three days…」


サムは指を三本立ててみせた。


「そうですか、では三日毎に使いにそれを取りに来させます」


桐王は入り口のドアを開く。


「では、失礼しました」


「Wait…!最後に一つ言わせてください」


彼はドアを閉めようとする手を一瞬止める。


「……?」


圧すら感じさせるその瞳に気圧けおされそうになりながらも、サムは覚悟を決めたように息を吸った。


「Mr.桐王、私はあなたを信じています。しかし、もし彼が…その少年が大きな一歩を踏み出そうとしたならば…私は彼の意志を尊重しますよ!」


「………」


「たとえそれがあなたの望んだ結果でなくとも…」


その試すような視線がふいと外され、ガチャリという音と共に瑠璃色はドアの隙間に消えていったのだった。




--------------




真っ暗な暗闇…冷たいコンクリート壁に囲まれたその部屋では朝か夜かも分からない。

唯一はっきりと認識できるのは、体に巻き付く植物と足元に転がる死体。


ミシミシと音を立てながら、水も光も…何も無いこの部屋で足元に迫る緑のつた


「助けて…誰か、助けて…」


水色の髪の少女は部屋の隅でポツリと丸まり、シクシクと嗚咽を漏らす。


「ヤダ…これ以上は…。自分が自分じゃ無くなちゃう…」


…頬から溢れた涙は小さな音を立てて体中に張り巡らされた蔦に落ちたのだった。


次回から第二章が始まります。


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よろしくお願いします。

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