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『XXV :侵食1』

「俺?え〜、いちよう清白すずしろ理玖りくなんだけどぉ〜」


「そんなわけが無….」


俺は言い返そうとするが驚きと恐怖の余りに言葉が喉に詰まる。


「は〜ぁ、いい顔してるね。あずま君、もっと見せて?」


彼はしゃがみ込み俺の顔をじっと見つめると、にたーと笑みを浮かべた。


キーーー!!


すると、無視するなと言わんばかりに白猿が一斉に鳴き出す。


「チッ!!」


隣の理玖?は舌打ちをすると、ゆったりと立ち上がった。


「ねぇ、さっきからうるさいんだけど。ちょっと黙ってくん無いかなぁ〜」


ボスザルは怒り狂ったように咆哮を上げた。


ウォォーーー!!


白猿ランデルが小石を俺たちに向かって投げる始める。


「ランギルス……」


理玖?が右手を横に突き出す。


すると突如周りに旋風が起こり、白く輝く胞子が風に乗って辺りを飛び交い始める。


飛んで来ていた小石は白銀の旋風で全て軽々と弾き飛んだ。


そして彼の右手に握られた光り輝く一筋の棒はまるで生きた植物のように伸長し、気付くと彼の手には両端に刃が付いている"両剣"が握られていた。


「ふぁぁ〜…」


白銀の吹雪の中心に立つ彼は大きなあくびをした。


直後、彼の姿が霧のように掻き消える。


「……!」


グワァァァァ…


ボスザルの突然のうめき声をあげる。


俺は急いで視線を移動させた。


視線の先には胸から長い両剣が突き抜けたボスザルの姿があった。


真っ赤な鮮血が白銀の剣を染め、剣を伝い血が地面に滴っている。

返り血を浴びている彼は酷くつまらなそうに剣をボスザルの身体から抜くと、剣の血を飛ばした。


胸に大きな穴を開けたボスザルは力を失い地面に倒れる。


彼は倒れた死体を見つめ、暫くすると興味を無くしたように視線を外した。


目の前で起こった一瞬の出来事に俺は息を飲む。


「これでよしっと…!」


彼は手を払うと、周りをキョロキョロと見渡した。


彼と目のあった周りの白猿も恐怖からか一歩も動く事ができない。


皆、微動だにせず、鳴きもせず、ただ化物かれから視線を離す事もできず…。


「あぁ〜。お前らもうざいから、死ねよ…」


彼はその場で両剣を片手で回すと、それを水平の位置で止め、大きく振りかぶる。


『ゼニス・アプタゴン』


彼は長い両剣を地面に突き刺さした。


その瞬間、彼の足元から白銀の苔が湧き出し、その苔は一瞬にして周りの物を言葉通り全て覆った。


そして瞬く間もなく彼以外の辺り一体が白銀の苔に変わったのだった。


…無論猿たちも例外なく。


「いや〜久しぶりで、ついはしゃぎすぎちゃった…」


全てが終わった戦場に優しい風が舞い込むと、生々しい猿の形をした苔は風に乗って夜空へと飛びたっていった。


「やっぱ20年のブランクは痛いな〜。腕が鈍ってる…」


こうしてわずか五秒で約二十匹の凶獣ランデルを跡形もなく消し去り、飛び交う白銀の飛沫の中で一人佇む彼から俺は一瞬たりとも目を離すことが出来なかった。




++++



薄暗い部屋の真ん中の机には赤い液体の入ったフラスコが置いてあり、床には割れた試験管が散らばっている。赤い液体が付着した無数の使用済みガラス棒は、机上を転がると高い音と共に地面に落ちた。


そんな荒れ果てた部屋を気にも止めず、ぼさぼさの髪の毛の男はレントゲン写真が映された画面の前で膠着していた。


「Unbelievable…これは一体、どういう事だ」


画面にはつたの様なものが全身に繁殖している男を映し出している。


完全パーフェクト寄生パラサイト…」


彼の頭をよぎったその言葉が彼を更に混乱させた。


この世界では本人の意思とは関係なく選りすぐりの赤ん坊だけが一歳の時に植物軍器フランザを寄生させられる。選ばれた者だけが植物軍器フランザという人類の希望を使用する権利が与えられるのだ。


不平等な世界。


何者かの気まぐれで選ばれた赤ん坊は、この世界での可能性と価値を無条件で手に入れられるのだから。


誰もが求め…敬う植物軍器フランザ…。

しかし、その希望の裏に隠されたリスクを知っている者は少ない。


植物軍器フランザの代償…それは寿命だ。


人間が時を重ねて成長するように、彼らの体に寄生された植物ももちろん時間をかけて成長してしまう。そして問題なのは成長のスピードが人間よりも早い事…。


つまり歳を重ねれば重ねる程、体の中の植物の割合が増えていくということだ。


そして、”完全パーフェクト寄生パラサイト”、それは完全に全身を寄生しきった状態……つまり使用者の死を指す言葉。


「Why…では何故、何故彼は生きている。…一体私はあの日、私は誰と話していたんだ…」


『清白理玖』


レントゲン写真の右上にはそうつづられていた。


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