『XXI :危猿2』
崖を降り終わった俺たちは、洞窟の前の茂みに隠れていた。
洞窟の前には二匹の見張りであろう黒猿が立っている。
「あれどうしようか、正面突破かな?」
「…戦闘の時、中にいる仲間に気づかれないようにしないと」
臨戦状態のまま気配を消し、ひそひそと話し合う。
スパッ!
その時、突然の音と共に二匹の猿の胸に矢が刺さり倒れる。
すぐに天羽に視線を向けると、今日一のドヤ顔でこちらを向く。
「さっさと行こうぜ?」
…アイツの言動がいちいち気に触るのは俺だけなのだろうか。
こうして俺たちは少し狭めの洞窟の中へと歩を進めた。
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黒い石で出来ている洞窟には少し苔や雑草が生えている。
しかし足元は平で松明が設置されているなど、中はそれなりに整備されていた。
俺たちは松明の明かりに従って先に進む。
「最近の猿は火も使えるんですね…」
俺は驚きと関心に満ちた声で言った。
「僕も内心驚いてるよ…これは猿だからと言って見くびらない方が良さそうだね」
思い返せば俺たちからカバンを取ったのも気まぐれではなく作戦通りという感じだった。
燃料が入っていることを知っていたのか…火が使えるということはそのぐらいの知識があってもおかしくはない。
猿型凶獣は頭が回るとは聞いていたが、ここまで知恵があるとまるで人間と戦っているようだ。
冷や汗を掻いた俺は右手の斧を握り直す。
暫く歩くと暗闇の向こうから槍の先端が見えた。
「……!!」
俺たちは一斉に足を止め武器を構える。
前方に現れたのは槍を構えた猿の集団だった。
八メートルほどの横幅の洞窟をびっしりと埋めるように黒猿が横に並んでいる。
その後方からは白猿の集団が俺たちを睨んでいた。
まるでここから先は行かせないと言わんばかりの表情をしている凶獣は陣形を保ったまま、俺たちに槍を構え走り出した。
前を完全に塞いでいる凶獣の陣形に、逃げ道の確保をしようと後ろを確認する。
入り口に追い出されてしまう形になるが、今この状況はそれ以外の選択肢が無い。
「一旦引きましょう…」
俺は慌ててそう言った
「いや、正面突破だ」
西園先輩は巨大な植物軍器と展開すると、大きく左足を踏み込んだ。
「流石にそれは……」
いくらなんでもこの狭い洞窟での正面突破は不可能である。
「ハァァぁ」
しかし先輩はそのまま野球のバットを振るように体を回転させると、その勢いのままハンマーを振った。
力強く振られたハンマーは横向きの旋風を起こし、向かってくる猿を槍共々吹き飛ばす。
「まじか…」
先輩の威力の理不尽さに俺は唖然とする。
同じパワー系の植物軍器を使用する俺からしてもこの威力は考えられない。
キーー!!
なんとか攻撃から身を守った後方の白猿は倒れている黒猿を飛び越え、鳴き声を上げながら俺たちに向かってくる。
両手を上げ爪を立てながら飛び込んできた白猿を俺は屈んで避けると、思いっきり後ろに斧を振った。
白猿の首元に刃が突き刺さり首が跳ねる。
空かさず前を向くと右手を突き出しながら飛び込んできたもう一匹の猿が視界に入った。
「鬱陶しいな」
俺は左手を離し右手で斧を上に振り上げる。
しかし、猿はその攻撃を間一髪で交わし、一度引っ込めた右手をもう一度俺の顔に向かって伸ばす。
しまった…。
思い切り斧を振った俺は直ぐに次の攻撃をすることができない。
すると突然俺の顔に迫る白猿に緑の紐のようなものが巻きつく。
そして次の瞬間、その紐に引っ張られた白猿は横に吹っ飛び壁に激突した。
緑に光る紐が戻った先には三芳野先輩が立っていた。
「三芳野先輩、ありがとうございます。助かりました」
俺は落ちた眼鏡を右手で鼻に掛け直す。
先輩は直ぐに右手からもう一度紐を放つと、今度はそれが別の白猿の足に巻きつく。
直ぐ様紐を引っ張り、足を取られた白猿は転倒した。
「今……」
小さく囁かれたその言葉に合わせて天羽が弓を放つ。
地面を這う白猿は向かってくる矢を交わす事ができるはずもなく、胸に矢が突き刺さり力を失った。
次々と味方を倒され、分が悪いと判断した残りの白猿は慌てて洞窟の奥へと撤退して行った。




