小さな助っ人。
不意打ちを喰らう羽目になった主人公達。『爆裂』を受けて生還する事が出来るのか!?
ヤツらが発動させた『爆裂』が今まさに破裂せんが勢いで輝きを増す。少しでも離れて被害を最小限に抑えようと、三人共に同じ考えの様で、急旋回の後、『瞬足』でそれぞれ距離を取りだす。
中心部の熱を巻き込むつむじ風の収束音が甲高くなり、最高潮に達した事を知らしめる。
《くっ、もっと早く気付けていれば!》
今更悔やんでも仕方のない事だ。十分な距離では無い事が分かりつつも、身体を丸める様にして備える。
ズドォォォォォォォォォォォン!!!!
《うわぁぁぁぁぁ!!……、ぁ、あれ?痛くも熱くも…、ない!?》
声にこそ出ていなかった様だが、気持ちが折れて情けない程心の中で叫んでしまう。が、肝心の熱風や引き裂かれる様な痛みが伴わない事に違和感を覚える。
「りょ、稜くん!!!あれ!!」
洋子さんの驚いた感じの声に反応し、その方向へと視線をやると、洋子さんも無傷だと分かった。そして、斜め上を指差して口をパクパクさせていた。その様子が気になったボクは、更に洋子さんの視線の先へと顔を向けた。
なんとそこには、五メートル四方の炎の塊が浮かんでいる様に見えた。正方形、真四角に燃える炎の塊を見るのは初めての事だ。
「か、和美!!あなた何故ここに来たの!」
洋子さんの次に、驚いた様子の口調で言葉を発したのは和枝さんだ。そして彼女が口にした名前で、この不思議な光景の理由が明らかになった。
そうだ、これはカズちゃんが得意とする『音壁•改』だ。見事に破壊力が桁違いであるはずの『爆裂』を封じ込めている。発動したヤツらもこれには驚いた様子だ。口をポカンと開けてそれを見ていた。
「だって…、お母さんと離れるのはもう嫌だもん!一緒にいたかったんだもん!」
そう叫んだカズちゃんだったのだが、そのお陰で彼女がどこから『音壁•改』を発動させているのか確認出来た。当然ヤツらも気付いたはずだ。空に向かって両手を掲げているカズちゃんの元へと急ぐ。他の二人も同じ様にカズちゃん目掛けて駆け寄って行く。
ボクと洋子さんが到着した時には、既に和枝さんが戦闘の構えを取り、ヤツらを警戒していた。カズちゃんを囲む様にしてボク達も同様に構えた。迎撃準備完了だ。
がしかし、あいにくとボク達の位置からはヤツらの姿を捉える事が出来ないのだが、カズちゃんはどうやって『爆裂』の発動寸前を押さえ込めたのだろうか?不思議に思い聞いてみたところ、集中して答えられないカズちゃんの代わりに、和枝さんが説明してくれた。
どうやらカズちゃんの視線の高さに、ちょうどヤツらの姿を見る事の出来る、瓦礫の隙間があるらしい。確認の為にボクも覗いてみると、ヤツらは未だに空をポカンと見上げていた。これは逆にチャンスなのではないか?と感じたボクは、洋子さんと和枝さんに奇襲攻撃を持ちかけた。
「稜くん、それはさっきと同じ目に合う可能性が高いと思うけど…。」
「そうですね…、私も洋子さんと同じ意見です。ですが…、まともにやり合ってもまた勝算は薄いかと…。」
二人が警戒するのも無理は無い。未だにカズちゃんの『音壁•改』によって封じ込められても尚燃え尽きる様子が無い『爆裂』の炎が、ボク達の警戒心を煽っている。あんな桁違いのチカラで不意打ちされたらと思うと、無防備に見えるヤツらの懐に飛び込む事が躊躇われてならない。
「稜くん、いい事思いついたんだけど、聞きたい?」
「洋子さん、こんな時に勿体ぶらなくてもいいじゃないか…、意地悪しないで聞かせてよ。」
「ぶー…。そこは…、可愛い可愛い洋子さんお願いだから聞かせて欲しい。でしょう…、ぶー」
いた…、ここに緊張感が無い人発見。先程の言葉とは裏腹に、そう愚痴をこぼす洋子さんは、日常生活の中で見る彼女と差は無い様に感じられる。お陰でこちらの気持ちまで和んでしまう。
「ぶー、もぅ…。んと、作戦なんだけど、カズちゃんが今封じ込めている炎の塊を、ヤツらにぶつけちゃおう作戦!です!成功の秘訣は、罠かもしれないヤツらの元へ飛び込んでいき、ヤツらの注意を炎の塊からなるべく離す事。」
「な、なるほど…。さすがにボク達二人でも、あれ程の『爆裂』は打てないしね。この際ヤツらには自分達のチカラを味わってもらうしかないか…。うん、それ試してみよう!」
集中しているカズちゃんにも同意の答えを貰い、三人で慎重に作戦を練る。問題は誰がヤツらの元へ飛び込んで行くかだが、洋子さんが、自分が言い出しっぺだから行く!と即決してしまった。残るボク達は、『爆裂』が効かなかった時に備えて待機という事になる。
その際、即座にカズちゃんが『音壁•改』をこの場に張り直す事が出来るらしい。しかし…。
「よし、決まりだね。洋子さん頼んだよ!と、取り掛かる前に、ちょっと用を足してきても良いかな?テヘヘ…。」
「ぶー、稜くんってば、緊張感薄い〜!早くしてきなよ〜。」
《うっわ、洋子さんに言われるのは心外だわ!でも、洋子さん、後の事は任せるからね…。今までありがとう…洋子さん…。》
そう、ボクは覚悟を決めていた。幾ら何でも洋子さんをみすみす死なせる訳にはいかない。必ずこの強い女性達が突破口を見出してくれるはずだ。そう信じて一か八かの賭けの立役者は、ボクが買って出る事に決めていた。勿論ボクの中でだけの事だ。
洋子さん達から死角になっている瓦礫の陰に入るボクは、すかさず『空間転移』を発動させた。勿論、ヤツらの目前にだ。
突然現れたボクに驚く『最善』『最悪』。奇襲成功といったところだ。ボクはヤツらを力の限り締め上げる様に両腕にありったけの力を込めた。気持ち悪いが抱きしめていると言った方が分かり易いだろう。
「作戦を実行してくれーー!!!!」
そのボクの叫び声は、彼女達にちゃんと届いた様子だ。カズちゃんが封じている『音壁•改』の箱が一気にボク達目掛けて下降を始めた。逃げようと必死にあがくヤツらだが、身体強化のチカラを駆使して何とかこの場に留めている。
そして、ボク達の目前まで迫った炎の塊が解放された。凄まじい熱風と轟音が襲いかかってきた。ボクもろともヤツらを焼き尽くす勢いだ。さすがにボクの治癒も、業火で焼かれる速度に追いつけない様子だ。
「グァァアアア!!ゴガァァァァァ!!!」
「稜くんーーー!!!!」
ヤツらの断末魔が耳元で聞こえ、洋子さんがボクの名を叫ぶ声も。ボクの意識はそれを聞いた後、ゆっくりと薄れ消えて行く。
《楽しかったなぁ…、洋子さん、皆んな…、ありがとう……》
絶体絶命かと思われた主人公達を救ったのは、小さな小さな助っ人、カズちゃんだった。まともに戦っても勝算が薄いと判断した主人公達は、ある賭けに出る事に。そして、犠牲を買って出る洋子だったが、主人公がそれをさせる訳も無く、自らの犠牲を持って希望を彼女達に!そして…、主人公死す!!




