感情爆発。
いよいよ『最悪』『最善』との再戦か!?ところでノイジーの姿が見えないが…?
ようやくボク達は、今回の騒動の元凶である『最善』『最悪』と対峙する事が叶った。見る限りでは、ヤツらが若いのか、そうではないのかなんて分からない。が、若き善さんの話では、少なくとも百年前の時代から来たのは間違いないと思う。善さんが嘘をつくはずが無い。
「おや、これはこれは。我々を歓迎に来た…、という訳ではなさそうですが、邪魔をするのであれば皆殺しですよ?」
「ん?最善よ…、邪魔をしようがしまいが、この地球は滅ぼすのだろう?約束を破ったのはこの星の住人なのだから。」
久々に顔半分同士が話す様子を見たが、相変わらず気持ち悪い顔と声だ。
「とりあえず、滅ぼすと言われて、黙ってそれを見ている訳にはいかないから、思いっきり邪魔はさせてもらうからな!」
ボクの言葉で、この場の全員が戦闘体制の構えをとる。先程シャクシさんも転移で駆けつけてくれている。ボク、洋子さん、ゆうこさん、寺ッチ、若き善さん、現代のシャクシさん、ノイジーだ。
「フハハハハ!面白い冗談だ!まさかとは思うが、全員で戦えば、我らに勝てるとでも?この時代で貴様らが我らが弟を倒した事は知っているが、アレは戦闘には向いていないのだ。まぁ、我らが弟の敵討ちはするつもりだから、貴様らがその気であろうと無かろうと、我らが貴様らを直々に抹殺する事に変わりはない。」
「何訳の分からない事を言っている!自分達がこの未来で殺されたのを知ったから、お前らは過去より来たんだろうが!」
「分かってないのは貴様らではないのか?我らは亡き弟に代わり、約束を違えた貴様ら地球人を制裁に来た。それだけの事だ。弟の復讐などついでの事だ。ひ弱な貴様ら地球人に負ける弟の気持ちなぞ我らには理解不能だが、我らが種族の誇りを汚した貴様らを見逃すつもりは無い。」
倒されたのは、あくまでも自分達では無く、弟だと言い張るヤツらだが、どのみち倒さなければならない相手に変わりは無い。これ以上話しても意味は無い。
「皆んな、全力でヤツらを倒すよ!」
洋子さんが皆んなに掛け声を発したのとほぼ同時に、ヤツらの姿が目の前から一瞬にして消えてしまった。洋子さんと二人で、ヤツらが立っていた場所へと移動したが、辺りに姿は見えない。
「くっ!みんな!近くにいるはずだ!気をつけ……、ゆ、ゆうこさん!!」
後方の仲間に注意を促しながら振り返ると、ゆうこさんの身体が浮いているのが視界に入った。いや、正確には、ヤツらの手刀がゆうこさんを刺し貫き、高々と持ち上げていたのだ。
そしてヤツらはゆうこさんをゴミでも払うかの様に振り捨てると、脇で呆然とその様子を見ていた寺ッチの頭を掴み上げる。頭蓋がミシミシと軋む音がこちらまで聞こえ、寺ッチの絶叫が辺りに響き渡った。
「貴様ら!!止めろー!!」
そう叫びながらヤツらに『瞬足』で飛びかかったが、そこへ到達する前に、寺ッチの頭蓋が砕け散った。一瞬で二人もの命を奪ったヤツらが酷く憎らしく思え、感情が一気に爆発したその時、ボクの身体に異変が起きた。全身が熱く焼ける様な感覚に襲われる。
ヤツらを目前にして、全身の激しい痛みで転げ回る。そこをヤツらが踏みつけようと構えているのが視界に入るが、一瞬にしてその姿を見失ってしまった。いや、見失ったのはヤツらの方だった。踏みつけられる寸前で、洋子さんがボクを抱えて転移した事が分かった。痛みに耐えるボクの身体を、洋子さんが必死に抑えてくれていた。
「稜くん!ダメだよ、感情を抑えて!腕が変異してきてる!感情に任せて戦っちゃダメなの!」
洋子さんの言葉を受け、感情を抑えようと努力はしてみたが、痛みが激しすぎてそれどころでは無かった。苦しみながらも現状の様子が視界に飛び込んで来る。次々と仲間がヤツらに倒されて行く様子が。
最後まで抵抗していたシャクシさんも、とうとうチカラ尽き倒れてしまった。このままではボクを抑えてくれている洋子さんが危ない。頭でそう分かっているのだが、まだ激痛が治りそうに無く、腕を動かす事すら敵わない。
「ふふ〜ん…、本当にこんなカスみたいなコイツらに倒されたのか、少し疑問だな、最善よ。」
「ああ、我も同じ事を考えていた。あと二人だ、最悪よ、早く始末して本来の目的を果たそうぞ。」
ヤツらのそう話す声が聞こえ、激痛に堪えながら、片方だけ瞼を開けると、ヤツらが洋子さんの背後で手刀を振り下ろそうとする瞬間だった。
《あぁ、洋子さん!ボクは良いから逃げてくれぇ!!洋子さん!》
口を開いて伝える事が敵わないのならばと、必死に念を送ってみたのだが、洋子さんは一層抱きしめる腕に力を込めて、頑として動こうとしない。既にヤツらは手刀を振り下ろし始めていた。
《ごめん!洋子さん!!》
ズドォォォォォン!!!!
凄まじい砂煙が舞い上がり、目を開けている事が出来なくなる。ボクが不甲斐ないせいで洋子さんをも犠牲にしてしまったと、後悔してもしたり無い程に自分を責め立て、情けなく思った。
自分の命も顧みず、必死にボクを抑えてくれていた洋子さん。お陰で少し激痛が和らいできている。洋子さんの犠牲でボクはまだ生きている。だが感情的になって戦ってはダメだ。洋子さんが最後にボクに残してくれた言葉だ。精神を乱さない様に、ボクは静かに呼吸を整える。
かなり痛みが引いてきた事を確認し、未だにボクを支えてくれていた洋子さんの腕を優しく掴む。洋子さんの腕も掴み返してくれる…?
「あ、あれ?え!?よ、洋子さん大丈夫なの!?」
「うん、私は大丈夫だけど、稜くんは大丈夫?早くしないと、和枝さんが危ないよ…。和枝さんが助けてくれたんだよ…。」
呼吸を整える事で集中していたせいか、ボクには周りが全く見えていなかった。だが考えてみると、ボクが集中している時間があったという事は、ヤツらの注意がボクに無かったという事だ。つまりその注意は他の誰かに向けられていたという事が考えられたはずだ。
「よし、もう痛みはないよ。洋子さん、こっから反撃だよ。和枝さんと三人でヤツらを倒すよ!」
「はい!稜くん!最後まで一緒に!」
気合いの入った洋子さんと『瞬足』で、ヤツらの左右から蹴りを叩き込む。一気に数センチにまですぼむヤツらの腹部。たまらずといったころだろう、掴んでいた和枝さんを放り出して、後方に跳ねて逃げた後、その場でうずくまり腹部を押さえて苦しんでいる。
「和枝さん、洋子さんを救ってくれてありがとうございます!ここから先は、ボク達も一緒に戦います!和枝さんの力を貸して下さい。」
「勿論です、お二人共、ご無事で何よりです。遅くなり申し訳ありませんでした。」
申し訳なさそうにそう言ってきた和枝さんだが、来てくれなければ今頃全滅していた事だろう。改めてボク達は和枝さんにお礼の言葉を述べた。そしてボク達三人で、未だにしゃがみ込み苦しむヤツら目掛けて追い討ち攻撃を仕掛ける。
三人同時の攻撃を喰らえば、さすがのヤツらも倒れるだろう。そう思った矢先の事だった、ボク達の攻撃がヤツらに届くまであと少しのところで、何事も無かった様にヤツらが立ち上がったのだ。
「ばぁーーっ!!な〜んちゃって〜!痛くないのだよ!『爆裂』っ!」
ヤツらがケロっとした顔をして、冗談事の様にそう言い放つと同時に、『爆裂』のチカラを発動させてしまった。以前にもヤツらのこのチカラは見た事がある。ボク達の使う『爆裂』とは桁違いの破壊力を持ったチカラだ。
《し、しまった!!!これは避け切る事が出来ない!!!洋子さん!和枝さん!!》
ヤツらを中心に風と炎が渦巻き、今にも弾け飛ぶ寸前である事が理解出来た。あわよくば、治癒と再生で復活出来るかもしれない。そう考え、ボクは覚悟を決めた。
あろう事か、ことごとくヤツらの餌食になった仲間達。以前のヤツらとは桁違いに強い事を知る結果に!そこへ遅れての心強い助っ人が!?だが、反撃を試みるも束の間、ヤツらの最悪な反撃が待っていた!




