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#33 無敵の男

 麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。

 生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。

 その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。


 この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹の人間を圧倒するパワーの姉、麗美と、

 人間を圧倒するスピードの妹、蘭子と、

 ごく普通の対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。


 吸血鬼姉妹を「最近お前らは運動不足すぎる!」の一言で無理矢理とある道場まで連れてきたジロー。

 道着に着替えさせた怪物少女2人を畳に正座させ、彼はその正面に立つ。

「事件は何時何時起こるかわからない」

「なんじなんじ?」

「『いつなんどき』だ! 声を出してる俺を通り越して回りくどいメタボケをするのは止めてくれ!」

「で、つまりいつでも戦えるように訓練しろ、ってことね」

「ああ。ひきこもりすぎだお前ら」

「私はコンビニとかよく行くけど」

「歩いて5分じゃねぇか!」

「でもね、ジロー。吸血鬼である私たちは老化しないのと同じように、筋肉が衰えることもあんまり無いわよ」

「技術は鈍る」

 あー、と麗美は頷く。蘭子は目をつむって船を漕いでいる。

「そこ、眠るな!」

「はっ!? 寝てません、主将!」

「誰が柔道部主将だっ!!」

「あはは、それっぽいわ」

「笑うな!」

「それで、何の練習をするのかしら。寝技? やらしいけど、いいわよ♪」

「……なんか教えるのは面倒だから、適当にかかってこい」

 麗美と蘭子は顔を見合わせる。

「ジローって吸血鬼より自分が強いって思ってる中二病?」

「違う」

「ちょっと調子乗ってると思う……」

「そう思うわよね、蘭子。自信過剰すぎるわー」

「…………いいから1人ずつかかってこい」

 ジローは立てた右中指をくいっ、くいっ、と動かして2人を挑発する。

「分かったわ。倒せたら何でも言うことを聞いてくれるってことなら、やるしかないもの」

「本当!? 新しいパソコン、欲しい!」

 俄然やる気を出す蘭子。

「って、そんなこと言ってねぇ!?」

「私は子作りで! 場合によってはこの場で寝技からッ!!」

「パーソーコーン!」

 一気に加速し、襲いかかる2人。

「2人同時って、ちょ、ちょっと待っ……」


 ――20分後。そこには畳の上に死屍累々とも言える様でへばり、倒れ込んでいる麗美と蘭子の姿があった。

「……ジロー」

 麗美が疲れた声で呼びかける。

「強すぎでしょ……常識的に考えて」

「こっちは技が鈍ってねぇんだよ……」

 既に人間を辞めてる3人が、そこにいた。


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