#32 ミソシール・ヴァレンシュタイン
麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。
生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。
その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。
この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹のトマト味大好きな姉、麗美と、
「わぁい、らんこチョコ大好き」な妹、蘭子と、
1人焼肉に最近行った対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。
「味噌汁を作ってみました」
麗美がテーブルの上に液体の入ったお椀を置く。赤茶色の怪しいスープであった。
「……これを、飲めと?」
目の前のテーブルに置かれた麗美の奇妙な料理に、たじろいでいる様子のジロー。
「どうぞ♪」
「…………味見は?」
「今からジローがするのよ」
「ふざけんな」
「女の子が作った料理から逃げるような男じゃないでしょ?」
それを聞いたジローは黙って味噌汁のようなものを見つめ、お椀を持ち上げる。
口にお椀の縁を付け、一口、飲む。
口からお椀を離す。
「うん」
お椀を置いて、彼は一言言った。
「なんでトマト味なんだよ!?」
「煮込んだトマトジュースにだし入り味噌を溶いてみました」
「お湯で良いだろ!? ダメなの!?」
「本当は輸血パックの血液を使ってミソブラッドスープっていう……」
「作る気だったの!? 俺を殺す気だったの!?」
「で、味はどうかしら」
「こんなもの、旨いわけ無いだろ……」
そう言って、ジローは再びミソトマトスープを飲む。
「うーん」
飲む。
飲む。
「ふぅ」
飲み干す。
「おかわり」
意外にイケたそうです。




