#25 ノックをすべきだったかな
麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。
生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。
その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。
この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹のお風呂にはちゃんと入る姉、麗美と、
あんまり入らない妹、蘭子と、
ユニットバスって湯を張らないでシャワーで済ませちゃうのが普通だと思うんだけど皆さんどう思いますな対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。
「ちーっす」
ジローはそう挨拶して、麗美と蘭子の住む部屋に入る。この小説において、これは主人公にスケベ展開が訪れる書き出しである。
部屋に上がったジローが目撃したのは、全裸にバスタオルを巻いてベッドに腰掛ける麗美であった。
「きゃっ!」
恥ずかしそうに両腕で胸部を隠す麗美。一応、壁ではないので。
「ああ、風呂上がりか。悪いな」
そしてジローは冷蔵庫を開け、冷えたトマトジュース1本を持ってパソコンの前に座る。そのまま、ジュースを飲みながらネットを見始める。
「え、それだけ……?」
呆然と、麗美がジローの後ろ姿を見つめる。
「もっと男の子らしく動揺したり、脚がもつれて押し倒しちゃったりする展開とか無いの!?」
「無い」
「それじゃ済まなそうに赤面して後ろ向くとか……」
「向いてるぞ」
「ネット見てるだけで、全然済まなそうにしてないわ」
「ああ、うん」
興味なさげに応え、ゲームプレイ動画を再生しだすジローさん。
「うぅ~~! 後ろから抱きついて無理矢理お色気展開にしてあげるわ!」
そう言ってバスタオル姿のままジローに抱き着く痴女、麗美!
無反応のジロー!
スピーカーから聞こえるネタ!
「くふっ」
ネタに吹き出す、ジロー。
「……」
ゆっくりと離れる、麗美。
その後、泣き出した麗美を慰めるのに小一時間かかったジローであった。




