3話 始まりの追跡
今後、本文の前にある二人が話すだけの部分は、森から出るときに話してた雑談の内容を書いていきます。
リアナのカナルの呼び方が変わっているのも、いつか書くと思います。二人の会話と共に、この世界について少しだけ詳しくなれますよ。
「カナルさんはどこに住んでたんですか?」
「俺は……そうだな、東の果ての国とでも言っておこうかな」
「東の果てですか……。東の果てというと、かの有名な『地獄の門』の近くにあるラバーンという街でしょうか。よくここまで来れましたね」
「ふーん、『地獄の門』ね」
「あら、ご存知ないのですか?」
「いや、東の果てと言ってもそんな怖いところじゃなかったぞ。何ていうか……発展してるけど結構平和で、他の国から大量の借金背負ってるのにずっと増え続けてる、そんな街だ」
「そんな街があるんですか。初めて知りました」
「リアナはどこで生まれたんだ? 住んでたのは塔なんだろうけど、あそこで生まれた感じ?」
「うーん、そうですね。……言いづらいんですが、雲の上、とでも言っておきます」
「すげーな。俺もそんなこと言ってみたいよ。『俺、空の上で生まれたんだ』みたいな?」
「ふふ、元気ですね」
「逆にリアナは大人しいな。久しぶりの外じゃないのか?」
「いえ、ほんとにきつくなった時は、こそこそ外で遊んでましたから」
「あら、悪い子ですね」
「ええ、わたしは悪い子です」
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次の日。
「……て……さい」
誰かの声が耳に届く。しかし、綺麗な鈴のような声に、逆に意識が落ちていく。
「起きて……い、カ……くん」
体を揺すられると共に、床の硬さに違和感を感じる。
ああ、これは夢だろう。柔らかい掌に鈴音の声、いつもベッドで寝ているのに、布団すらないというのはありえない。
「起きて下さい、カナルくん。起きないようなら——」
声の音量が少しだけ上がった。徐々に意識が覚醒していく感覚に抗い、そのまま二度寝を——、
「——目潰しの呪文、かけてあげますよ」
「おっはようございます!」
恐怖の言葉による急激な覚醒に足が反応し、直立しながらおかしなテンションで朝の挨拶をしてしまった。
「おはようございます、カナルくん。よく眠れましたか?」
その声に隣を見ると、座った体勢で微笑むリアナがいた。
風呂も寝床もないまま一夜を越したものの、リアナに目立った汚れもない。俺自身の方はわからないが、早急に泊まれる家を探したいところだ。
特にこちらから話す内容もなかったため、無言の時間が流れる。
……ふと、昨日の寝る直前の視界とズレていることに気付いた。
二人の間の線は昨日俺が取っ払ってしまったため、なんとなくの記憶を頼りに、線を超えてしまってないか確認する。
……俺が大幅に超えていた。
「すんませんでした!」
「やめてください、気にしてませんから」
日本式土下座が通用するのか分からなかったものの、誠心誠意の謝りだったことは伝わったらしい。もともと気にしてない節はあったものの、謝るに越したことはない。
「それより、カナルくんがあれだけ言っていたあの線が消えています。線がないからそんな決まりもなかった、これで良いですか?」
「十分です。いや、恥ずかしい」
あれだけ言ったのに、それをあっさり自分が破ってしまった。この借りは、いつか返してあげようと決意した。
「ところで、急に起こしてどうしたんだ? まだ太陽も登ってないから結構暗いし、なにもないなら寝たいんだけど」
「いえ、ちょっと気になる情報がありまして……」
そういうと、リアナは手を合わせて目を瞑った。手が淡く光り始めているのを見ると、なにかしらの術式を始めているのだろう。
「……あ」
「今、カナルくんにも見えるようにしました。わかりますか?」
「わかるわかる。え、何これスゴッ! これってこの周辺の地図?」
契約内容が頭に送られてきたように、なにが地図のようなものが頭の中へと送られてきた。昨日の雑談の時に術式の仕組みを教えてもらったが、人のニューロン・ファイアリングがどうのこうのと、まったくもって分からなかった。
「今わたしたちがいるのが、赤く光っている部分です」
「あーあーあー、わかった、理解できてる」
「次に、黒い点が出ます」
「あ、結構真っ黒になったし動いてる。これは?」
「それなんですけど……」
声のトーンが少し落ちたためリアナを見るも、目を瞑っているためよく分からない。
黒い点に集中すると、忙しなく動くものもあれば止まっているものもあり、なにを指し示しているのかが分からない。
結構早く起こしたのだ。なにかしらのことが起こっているのだろう。
「わたしもよく分からないんですが」
地図が広くなり、おそらくこの街すべての部分が一度に見えるようになる。
まばらに散らばる黒点と、中心にある黒の集団を発見すると同時、リアナの口が動いていた。
「——これ、わたしたちのことを悪く思っている人達です」




