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裸転生~あなた、それは犯罪です!~  作者: ハル
エピローグ
5/15

4話 警官の心得

 警官になってから、私ルイは、ありとあらゆる問題を見てきたと自負している。今回の森の巡回も、そんな任務の一つであった。


「やっぱり、何も無いですね」


 週一の巡回だが、これまで一度も何かあったことはない。平和の中の平和、ここはそういう場所だった。


 数時間経ったくらいだろうか。西の方向に、何やら気配が生まれた。振り向くと、眩い光が何やら発生していた。


「なんでしょうか、あれは……」


 すぐに光は収まり、いつも通りの森へと戻っていく。


「事件の予感がします」


 火のないところに煙は立たない、という言葉がある。同じように、何もないところに明かりはない。


 私はいつのまにか駆け出していた。

———————————————————

 想像以上だった。


「俺、変なポーズでもとってました? すいませんね」


 タオル一丁姿でこんなところにいるのにも関わらず、気にするところはそこなのだろうか。


「なにが?」


 私がそうじゃないと言っても、まだその男は気づかない。恥ずかしさを堪え、あれの部分を指差す。


 ……逃げられた。


「待ちなさーい!」


 刑法第5条、意味もなく性的な行為は固く禁ずる。


 紛れもなく、あの男は違反していた。警察の誇り、女の誇りとして、絶対にあの男を逮捕しなければならない。本能がそう訴えていた。


 それから、ずっと逃走劇が続いていた。


「そこのあなた、止まりなさい!」


「嫌だぁぁぁあああああ!」


 最初のあの澄ました態度はどこえやら、男はなりふり構わず逃げ続けていた。


 ……どれだけ走っているというのか。


 恐らく、もう1時間は経っているだろう。私は警察オリジナル体力作りのメニューをさせられているから大丈夫だが、男はほんとに異常だった。

 私がいくら女とはいえ、そこそここの国でも名のある実力者である。そんな私よりも同等、もしくはそれ以上の実力であることは、この1時間で分かっていた。


 ……少々意地悪をしてやろうか。


 不意に、そんな考えが思い浮かんだ。ずっと走らされることへの仕返しとしても、これくらいはしたいという欲求が出てきたのだろう。


 ——訓練で教えられた、鬼ごっこ理論というものがある。


 鬼が右からくれば、逃げる人は自然と左へ逃げる。逆であっても然り。逃走者は、自然と鬼と反対方向へ逃げると同時に、逆に考えれば、いつも鬼によって逃走経路を決められているのである。これを利用する。


 あえて少し遠回りをして左から近寄り、男を東へ走らせる。すると、自然と視界に入ってくるものがある。


 塔だ。そこには、国でも危険地帯と称される、巨大な曰く付きの塔が建っている。


 男は知ってか知らずか、一目散にその塔へと入っていく。私も追うように塔へ入る。これは2回目のため、最初よりもこの塔への恐怖はだいぶ薄らいでいた。


 男は階段を駆け上っていく。私も同じように追いかける。


 蝙蝠こうもりが視界を邪魔するが、攻撃はしてこないため無害である。出てくるモンスターも、結局戦わなければなんてことはない。ずっと男を追い続ける。


 数分後、塔の中で初めて人を見かけたが、男を優先して階段を駆け上っていた、その時だ。


「……消えた⁈」


 突如、男の姿が掻き消えた。あまりにも唐突だったため頭の整理が追いつかず、その場に立ち止まってしまう。


 ——それが、命取りだったのだろう。


「ぶふ——」


 横からの一撃に、意識が持っていかれる。男に夢中で気づけなかったのだろう。周りには、たくさんのモンスターで埋め尽くされていた。


 どれも凶悪と称されるモンスターたち。恐らく、私もここでおしまいなのだろう。できることなら安らかにと、切れる意識に抗わない。


「————」


 目が、見えなくなった。音が、聞こえなくなった。そしてすぐ、命もなくなってしまう。


 ——その時だ。


「眩し……!」


 本日二度目の光により、失いかけた意識が覚醒する。


 次に気がついたのは、不思議なことに、モンスターはおろか、何もかもがなくなった塔の中で立ちすくしているところだった。


「……は」


 不思議な夢でも見たのだろうか。あまりにも現実味がないため、そう思うしかなかった。


 窓際に移動する。そこには、この塔であまり見ることのない窓が施されていた。


 外を見る。どうやら、もうそろそろ夕方らしい。よくわからないが、夢ではないとわかった。


 ふと、遠目にあの男が誰かといるのを見つけた。


「あれは……女の子?」


 服は着ているようだった。しかし、あまりにも肌を露出した格好で、女の子と手を繋いでいるのをちょうど見てしまった。


 ……事件は速やかに解決しなければならない。


「……もしもし、教官ですか」


 罪を犯したものには罰を与えなければならない。


 私も現行犯を見た者として、絶対に捕まえると決意した。そして、街ではすぐに指名手配されることだろう。


 私は下を確認すると、その窓から飛び降りていた。

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