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裸転生~あなた、それは犯罪です!~  作者: ハル
エピローグ
3/15

2話 出会い

「敵が来たぞ! 隠れろ!」


「待って! もうあと『フラッシュ』2個しかない! ここで使うと帰れなくなるよ!」


「なんだって⁈ くそ、こんなところで死んでたまるか。戦うぞ!」


『神秘の森』とも呼ばれるこの場所において、ここにある塔は謎に包まれていた。


 曰く付きの塔であり、その内容は四つ。


 曰く、この塔は1200年前から存在し、まだ誰一人として頂上を見ていない。

 曰く、20階ほどしかない高さなのにも関わらず、その階段は無限に続いている。

 曰く、塔の中では尽きることなく敵が襲ってくる。


 そして、最後の一つのために、この塔には沢山の冒険者がやってくる。


「頂上で、俺たちは夢を叶えるんだ! 財宝を、持って帰るんだ!」


「おう!」


 ——曰く、塔の頂上では、一人の少女と共に、たくさんの金銀財宝が置いてある。


「ガウロ、右!」


「ん? うわっ!」


 常に大量の蝙蝠こうもりが視界を遮るうえに、壁からは強力なモンスターが次々と湧いてくる。

 ガウロと呼ばれたその男も、蝙蝠に注意を逸らされたのち、右からの巨大蜘蛛くもに吹き飛ばされていた。


「ガウロ! きゃ!」


 ガウロと共に来ていた女性も、ガウロを助けようと体を動かしたと同時に、背後からの一撃に倒れてしまう。


「くそっ! 大丈夫か、レイル!」


「私は大丈夫だから! ガウロ、左! 避けて!」


「チッ! あぁ、キリがねえ!」


 この塔では、何百何千というパーティーが攻略を決意し、その全ては死んでいるらしい。

 恐らくこのパーティーも時間の問題であるのは、誰の目にも明らかだった。


「まだだ! まだ終わるわけにはいかない! 俺たちは「どいてくれぇぇえええ!」に帰るんだ!」


「そうよ! まだ私たちは「待ちなさーい」訳にはいかないの……よ」


 突如聞こえた声と共に、二人の目の前を二人の人間が通り過ぎる。


 互いに目を合わせ、ロボットのような動きで今の二人を目で追いながら、やはりこう言うしかなかった。


「「はぁぁぁぁあああああ⁈」」

———————————————————

「ここだぁ!」


 バンッという激しい音と共に、古びた扉が乱雑に開かれる。


 ここはとある場所の最長の地であり、ここに来れた人間は今までで一人もいない。

 長い長い月日の中、その時間と共にやってくる勇者達のレベルは上がってくるものの、未だにこの塔の仕組みには気づくことなく、無限に続く階段ののちに命が尽き果てている。

 果てしない量の人間が、今もこの塔の中で足掻き続けている。


「やっと、きてくれたんですね」


 ここに、一人の少女がいた。

 壁に沿うように後ろを向いている彼女は、こちらからその顔を見ることはできない。

 長い淡黄蘗の髪をそのまままっすぐ下ろし、14歳ほどの見た目にも関わらず、その後ろ姿からは何かしらのオーラを感じさせる。


「この塔を作ってもう1200年。たくさんの猛者達が訪れては死んでいく、そんな退屈な日々を暮らしていました」


 独り言のように話しだし、そしてゆっくりとこちらに体を向ける。


「あなたがわたしの……きゃぁ!」


「待て、違う! これは、その……仕方なく、だ!」


 そして、振り向いた先には俺(全裸)がいる。


「な、な、な、何ですかあなたハレンチな! それがわたしを救う騎士様のあるべき姿なんですか⁈」


「違うんだよ、頼む聞いてくれ! ってか先になんか服くれ! タオルだけで隠し続けるのも辛いんだよ」


「そ、そんなこと言われましても……。わ、わたしのサイズのものでいいのならありますけど」


「それでいい、頼む! ……じゃなくてお願いします」


 そういうと同時に、彼女は近くの扉へ消えていった。


 ——なんか走ってたら着いちゃった。


 それが俺の全てであり、それ以上のことは何もしていない。あそこまでしつこく追ってくる警官から逃れるように、近くにあった塔の中へ入り、そして階段を登ってきた。

 もともと体力には自信があったし、筋トレは適度に行なってきた身だ。結構疲れたものの、これで追手を退けたなら万々歳だ。


「あ、あの、これでいいでしょうか」


 すると彼女の声がし、そちらに顔を向けると、先ほどのお願い通り服を持ってきてくれたようだった。


「ありがとう、恩にきます……」


 その服を受け取ると、まず最初にその小ささに心配になる。

 いくら小さいのでも大丈夫とは言ったが、流石に170越えの人間が150ほどの服を着ると、少しばかり入りきらないものが出てくるのではないだろうか。


「わたしは隣の部屋にいますので……」


 彼女は、どうやら適度なリテラシーはあるらしい。ありがたいことこの上ない。


 女の子の前で着替えたい! という変態願望のある輩はいるだろうか。先に言っておく。いざそうなると、無理だ。恥ずかしさで死ぬ。


 ——数分後。


「……ヤベェ。いざ鏡見ると、こっちの方が変態だ」


 高校二年生にもなって、女装露出趣味になることはないようだ。友達に女装趣味はいたが、やはりその気持ちは分からないようだった。


「大丈夫、そうですね」


 それを見計らったように、彼女が部屋から出てくる。


 先ほどのごたごたでわからなかったものの、いざその顔を見ると、やはり流石異世界というものがあった。髪色、顔立ち、服装、すべてをとって『最高』と言い表そう。


「ビューティフル」


「意味はわかりませんが、言われてちょっと腹が立ちましたよ」


 どうやら俺の好意は悪意とみなされたらしい。異世界あるあるの言葉の違いもあるようだった。


「とりあえず、あなたが最初の到達者です。おめでとうございます」


「いや、別にそんな大袈裟な」


「では、ここにサインしていただいて——」


 最初で最後の異世界転生。ゆっくり楽しく暮らすのが、俺の夢だった。現代知識無双、そんな言葉が思い出せる。


 しかし、俺の方はそうはいかないらしい。


「——では、今後ともよろしくお願いします。ご主人様!」


 そう言って微笑む彼女の横で、呆けた顔になって見つめている俺がそこにはいた。

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