1話 裸で逃げる男、それを追う警官
何故こうなった。
「止……さい」
何が原因だ。
「止まっ……下さい」
俺が、何をしたというのだ……!
「あなた、止まりなさい!」
女警官から逃げながら、俺はこう思う。
「そこのあなた、裸で駆け回るのは犯罪です!」
「俺は悪くないんだぁぁぁぁああああああ!」
俺は、転生するのに服すらもらえないのか!
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顔をあげると、まず目を疑った。
「……は?」
見たこともない景色。先程までの狭い空間はなんだったというのか、目の前にはたくさんの木々が覆い茂り、明らかに時間帯も夜から朝へと変わっていた。
「お、俺は……」
この感覚、何度も何度も見たことがある。テレビしかり本しかり、このお決まりはよく目にしていた。暇な時間は、この時のことを想像したことすらある。
そう、まさに、これはーー
「異世界てんせ」
「あなた、なにやってるんですか!」
突如現れた声に、お決まりの台詞も中断する。
「こんな森の中とはいへ、やっていいこととやっちゃダメなことも分からないんですか! 明らかにそれは犯罪です!」
振り返ると、そこには日本でも見たことあるような女警官の服を着て、いかにも異世界な杖をもっているお姉さんがいた。
「やめてくださいよ、今大事な儀式中なんですから。いくら可愛いからといって、大事なしょっぱなくじかないで下さい」
「か、可愛いだなんてそんな……ち、違います! そんなことより、あなたの方がなんなんですか!」
「なにがです?」
「その格好です!」
格好とはなんだろうか。いま、テンションのスイッチが入りきりそうで変なポーズでもとっていたのだろうか。
「俺、なんか恥ずかしい感じなことやってました? いやすいません、こんなこと起こると思ってなくて」
「そうじゃなくて!」
警官は、ビッと俺の方に指を突き刺す。
そして、言った。
「あなた、なんで裸なんですか!」
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そうして、冒頭部分に戻ってくる。
「待ちなさーい!」
「嫌だぁぁぁあああ!」
転生を舐めていた。まさか、風呂に入って真っ裸の奴を狙うなんて、そんなこと微塵も考えていなかった。
「俺は悪くないんです! なんか勝手にこんなところにいて、服をちょうど着てなかっただけなんです!」
「それがアウトだって言ってるんですよ! ほら、なにも悪くないというのなら、早く止まってください!」
「絶対に捕まるか!」
転生初日、捕まってみた。テヘッ
そんな奴見たことないし、そんなカッコ悪いことできる訳もない……!
「あー! あそこにゴブリンが! ほら、倒してこなくていいんですか」
「いいんですよ。あなたの方が危険ですから」
初めての異世界定番ゴブリンも、一瞬のうちに俺より格下になったらしい。
「ほら、あそこにヤバそうな熊いるじゃん!」
「あなたの方が危険です!」
「あそこに盗賊団のアジトみたいなのあるじゃん!」
「あなたの方が危険です!」
「後ろ見ろ! なんかヤバそうな龍いるぞ!」
「あなたの方が危険です!」
「まじか?! あんた頭どうかしてるぜ!」
どうやら俺は、彼女にとってこの世界の何よりもヤバいらしい。
「早く止まりなさい!」
「俺が何をしたって言うんだぁぁぁあああ!」




