6話 行動開始
「そういえば、なんでカナルさんは裸で登場したんですか? もし変態さんなら、ちょっと自粛してもらいたいんですが」
「や、やめてくれよ変態さん呼ばわりは。……話すと長くなるがあれにも理由があってだなぁ」
……説明中、少々お待ちください……
「……って訳だ」
「なるほど。要約すると、気を失ったときにはもう既に森のなかにいて、ちょうど風呂に入ってたから服を着ていなかった、と。……怪しいですねえ」
「しょうがないだろ、それが全部なんだから。だから、俺は変態じゃないと誓う」
「いいですよ、別に変態でも。ただ、あまり露出は控えてくださいね」
「いや、だから俺は変態じゃないって」
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野宿二日目。今度も同じように硬いアスファルトの上で寝たが、それなりに慣れ始めたのだろうか。昨日よりも、少しだけ寝付きが良かった気がする。
「おはようございます、カナルくん。よく眠れましたか?」
そう言ってくるのは、外見14歳だがほんとは1200歳超えのリアナという少女。昨日の朝と同じように、そんな言葉をかけてきた。
「おはよう、リアナ。んー、やっぱ下が硬いとキツイもんがあるな」
そう言って起き上がったのは、もうそろそろ17歳を迎える俺こと八尋運河。高校には訳ありで行かなくなっており、いつものように暇な1日を送っていると、何故か風呂場で裸のまんま転生させられた過去を持つ。そのせいあって、今もピチピチの女の子の洋服を着て過ごしている。
「……すんすん。やっぱ、二日も風呂に入んなかったらくるもんがあるな」
「気にしない方がいいと思いますよ。そういうのって、だいたい自分が気にしてるだけのことが多いですから」
「いやでも、さすがにこの洋服もきついっていうかなんていうか。借りてる身でなんだけど、ちょっと早く着替えたいんだよな」
「でも、困りましたよね。黒点がこんなに増えると分かっていたなら、初日にカナルくんの格好関係なしに、早く宿を借りておくべきでした」
なぜこんなことをしているのか、説明しようとしてもわからないことが多い。
今、二人の頭の中にはここ周辺の地図が描かれているが、俺たちの敵と称される黒点がうじゃうじゃ動いているのだ。
先日、この黒点が増えていく発生源の一つに足を向けた。いろいろあって逃げ出したものの、収穫がゼロだった訳ではない。地図と現実を照らし合わせると、黒点が表すのは人間だということが分かった。それでも謎は残る。この数の人間が俺たちのことを目の敵にするなんて、何かあったとしか考えられない。
第一、まだ俺はこの世界に来て三日しか経っていない。付け加えると、この街には二日ほどしか滞在しておらず、黒点が出始めたのは何故かこの世界に来て一夜明けてすぐだった。
俺がしたことなんて、裸で警官に追いかけられたのと門番眠らせて目眩しさせて不法侵入したことくらいだ。
「…………」
……俺がしたことなんて、裸で警官に追いかけられたのと門番眠らせて目眩しさせて不法侵入したことくらいだ。
「…………」
「どうしました? 怖い夢でも思い出しましたか?」
もう一度、言おう。
俺がしたことなんて、裸で警官に追いかけられたのと門番眠らせて目眩しさせて不法侵入したことくらいだ。
「やって、しまっていた……だと⁉︎」
ついにその考えに思い至り、右目と心臓を思い切り握りしめてしまう。
「どうしたんですか⁉︎ いきなり右手で右目塞いで左手で心臓掴むなんて、そんな中二病になってしまうなんて!」
「や、やめてくれよ中二病は……。はっ! でも、あのポーズが無意識に出てしまうなんて、俺は……!」
「大丈夫です。わたしがカナルくんのその病気を治してあげます。だから……死なないで……!」
……なんだこの茶番劇は。
「違う、そんなことどうでもいいんだ。この一連は、俺が悪いかもしれないと気付いてしまった」
「茶番劇がですか?」
「違う! この街の黒点についてだ」
ふぉぉおおお! と、リアナの表情が活性化していくのがわかる。まだお遊びを続けたいようだが、ここからは真面目な話なのでデコピン食らわせて「あうっ!」静かにさせる。
「この黒点があるだろ? これは多分、俺のせいだ」
「うぅ……どういうことですか」
「ほら、あん時話したろ。俺がなんで裸だったのか」
「ああ、あの時の。でもあれは、しょうがないって話じゃなかったんですか?」
ちなみに、警官に追われていたというのは話していない。警察に追われたなんていうと、変態がグレーとアップしたように聞こえてしまうからだ。
「確かにしょうがなかった。でも、それを端から見たらどう思う? リアナだって変な反応をしたんだ。なんとなくわかるだろ」
「……なるほど。で、それをちょうど見てしまった人がいる、ということですね」
「話が早くて助かる。そういうことだ。で、ここからは推測なんだが……それを見た人が警察に連絡して、俺が今指名手配されている、と思ってる」
「指名手配ですか……。厄介なことになりましたね」
考える人のようなポーズで手を組ながら、リアナが心配そうにこちらを見てくる。
「それで、また俺に考えがあるんだが……」
まだ朝は早い。
俺は考えをまとめ、行動を起こした。




