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裸転生~あなた、それは犯罪です!~  作者: ハル
第一章 ~怒濤の始まり~
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5話 月下、裏切りの幕開け

「リアナはどんな魔術が使えるんだ?」


「そうですね、全般は使えますよ。得意なのでいうと、相手の脳に介入して記憶や行動を操るものです」


「それ、強さでいうとどのくらい? 一番強いやつを100としたって考えたら」


「いえ、今のは強さでは表せません。強さでいうなら魔法系統の方です。体への攻撃が魔法、心への攻撃が魔術、って覚えてくれたら分かりやすいと思います」


「ふーん。なら、俺にちょっとだけかけてくれよ」


「分かりました。どんなものがいいですか? なんでも言ってください」


「例えば?」


「えーっと、今カナルさんの目の前にいるのがわたしなんですが、その姿を視覚と記憶に介入して全く別人に見せたりもできます」


「それがお得意なら、それ頼もうかな」


「では、失礼しますね。目を瞑ってください。あ、誰か一人誰でもいいので思い浮かべてくれていたら、その人を映し出します」


「なら……」


「……はい、終わりました。目を開けてくれてもいいですよ」


「……あ、ほんとだ変わってる! へー、すげぇな」


「一体、今カナルさんが思い浮かべてたのは誰なんですか? とても可愛らしい人でしたね」


「まぁ、言ってしまえば親友だよ。いっつも一緒にいてくれた」


「あ、彼女さんでしたか。今はどこにいらっしゃるのですか?」


「いや、彼女じゃないぞ。確かに、いっつも囃し立てられてたけど彼女ではない」


「そうでしたか。……はい、術も解きました。どうでした?」


「いいね、こんなのができるってことだろ? たぶん、今後頼っちゃうな」


「任せて下さい。危ないことがあれば、命がけでも助けてあげますよ」


「いや別に、そこまでは言ってない。適度によろしく」


「はい、任されました」


「…………懐かしかったな」


「はい? なにかおっしゃいましたか?」


「なんでもない。気にすんな」

———————————————————

 その夜、


「しかし、お前の『能力』も凄いものだな」


「まあまあ。褒めたってなんもないてすよ、教官」


 ここはとある一室。二人の女性は、仕事中にも関わらず話をしていた。


「わたしの能力、あんまり仕事外に使いたくない、ってのが本音だなー」


「そう言うな。お前のその力のお陰で、いったいどれ程の民が助かっているのかわかるまい。誰かの役に立てるなんて、光栄だとは思わないか?」


「そう思うのは教官くらいですよ。みんな自分のことで精一杯なんだから」


 ーー先日、とある警官から逮捕の推薦者が出た。


 なんでも、あの『神秘の森』の中で服を着ておらず、あげくの果てに、変態的格好で女の子の手を握っていたらしい。


 逮捕の推薦は基本的に起こらない。なぜなら、推薦するよりも鍛え上げられた肉体で捕まえにいった方が単純に手早く捕まえることができるからだ。


 特に、今回それを伝えてきたのがルイという点に疑問を抱く。

 彼女は、この街の警官の中で三本の指に入るほどの実力者である。体力や力、そして問題解決の結果などを含めた上で、この街の警官の中でトップレベルなのだ。彼女が捕まえられなかった事例など、今まで存在しなかった。


 今回ルイが見つけてくれた問題は、一筋縄ではいかないかもしれない。そんな考えが頭から離れなかった。難攻不落な敵との戦いになるかもしれない。


「警察の威信にかけて、この街に住む悪は全て潰す。例外はない」


「もう、怖いんだから」


 二人は会話を終えると、それぞれの仕事に集中する。


「あ、そうそう。昨日のあの光の件ですけど、まだなにも情報がないですね。よくわからなかったですが、そっちの件はどうされますか?」


 終わったと思った会話が、秘書のその声に再開される。


「今のところ警察見習いの子達が頑張ってくれていますが、このままいけば迷宮入りになります。あの件のことで人がいないなら、私が人数調整をしますよ」


「その件は一旦置いておけ。まだわからないのなら、そのまま調査を続行させておけ」


 しかし、その内容はあまり重大ではないらしく、教官は視線もくれずに仕事に集中していく。


「————」


 二人の間に沈黙が流れるが、これがいつもの風景である。秘書も教官も集中しており、この雰囲気に水をさせる猛者はいないだろう。


 ——絵とは思えないほどの似顔絵が、街の至る所に貼られている。


 秘書の能力の『似顔絵』は、相手が言う人物の少ない情報のみで、その人物と全くそっくりな絵を描き上げてしまうという能力だ。

 あまり使えない能力だが、このような場合においては最高の能力となる。小さい頃から絵だけは得意だったが、そのレベルの高さから能力であるということが判明した。


 彼女の本職はただの秘書であり、誰かを捕まえることはおろか、それを手助けるることもあまりすることはない。警察の秘書とはいえ、ただの一般人であることには変わりはないのだ。


 しかし、この仕事につけたのは、今すぐ近くにいる教官のおかげである。彼女は正義を貫き悪いことは絶対にしないが、秘書を務めさせるために裏まで手を回した。幼馴染を助けるため、というだけに、彼女の名は少し汚れてしまっていた。


 彼女には感謝しかない。仕事につけなくて困っていたところを、汚名を背負ってまで助けてくれたのだ。一生頭が上がらない相手とは、まさに彼女を指し示すのだろう。


「————」


 ——しかし同時に、いつまでもそうしなければならないという悲しさに、いつの間にか対抗心が芽生えていた。


 今回、久しぶりに大きくなりそうな事件が回り込んできた。これを利用しない手はないだろう。


 隣を見る。そこには、真っ直ぐな姿勢と目線で資料を見つめる一人の女性がいた。


「————」


 感謝している。ありがたいと思っている。しかし、そう言い続けることは絶対に御免である。


 目の前には資料がある。統計、個人情報、そういった全てのデータが、ここの部屋には管理されている。今回のために、全て頭に暗記させた。


 ミスはしないし許されない。他の人も巻き込んではならない。そして狙うのは、隣にいる女性ただ一人。


 何度もシュミレーションしては、その全てで成功している。その通りにただ体を動かせば、それだけでミッション成功である。


 スッと立ち上がると、それを見ていた教官と目があった。微笑みを向け、一つの資料の前に足を向ける。


「この資料、不備があったので直しておきますね」


「ああ、頼む」


 ——そんな光景を見ていたのは、大きな大きなお月様だけだった。

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